観光スポットは地元の人に聞くべし?

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、なかなか旅行に行けないという人も多い現在。

そんな中、京都市が「新型コロナウイルス感染症が落ち着き、安心して京都へお越しいただけるようになった時」を見据え、PR動画『京都観光行動基準動画~今日から始める京の観光スタイル~』を発表した。
 

動画に登場するのは、「標準也(ひょうじゅんや)」「無茶苦茶子(むちゃくちゃこ)」「行動基準(こうどうきじゅん)」という3人のキャラクター。

3人がそれぞれ、京都の観光を楽しむためにどうしたらいいのかを8つのシチュエーションごとに考え行動していく、という動画なのだが、まずは「観光リサーチ篇」を見ていきたい。

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最初の「標準也」さんは、京都に向かう前に「ガイドブックで下調べ」という行動に。「無茶苦茶子」さんは「前泊して、一旦すべてのスポットを巡る」こととした。

そんな中「行動基準」さんは「泊まった旅館のスタッフに聞く」ことを選択。旅館の女将らしき人に「めちゃくちゃイイトコありますえ」と、何やら耳よりらしい情報を教えてもらい、「ほー、地元ならではの情報を知れたぞ」とニッコリしている。

名前の通り、無茶苦茶子さんの「むちゃくちゃ」な行動にクスりとさせられつつ、正解は「泊まった旅館のスタッフに聞く」ことだ。

「標準也」さんの「ガイドブックで下調べ」は誰もがするであろう、決して間違った行動ではないのだが、実は「行動基準」さんの行動は京都市が2020年11月に策定した「京都観光行動基準(京都観光モラル)」をベースとしている。

この「京都観光行動基準」は「京都が京都であり続けるために、観光事業者・従事者等、観光客、市民の皆様とともに大切にしていきたいこと」をまとめたもので、たとえば

・地域文化・コミュニティへの貢献
・市民生活と観光の調和
・環境、景観の保全
・相互理解、交流
・災害や感染症等の危機に強い観光の実現


などが挙げられている。

これに則って観光客が積極的にするべき行動が、ガイドブックを読むよりも「地元の人と話して、地域に息づく魅力に触れる」ことなのだろう。

ガイドブックには載っていないけれど地元の人なら知っているグルメや穴場スポット…そういったものに触れて楽しみ、より京都の魅力を深く知ることが、京都を魅力的なまちとして守っていくことに繋がるという。

なお『今日からはじめる京の観光スタイル』の動画は「観光リサーチ」の他、「観光準備」「水分補給」「散策」「社寺拝観」「移動方法」「文化財散策」「お土産手渡し」の全8篇で構成されている。

ぜひ実際に、いくつかの問題に挑戦してみていただきたい。

『観光準備』
(1)出発日にしっかりと検温
(2)両脇と口で一気に検温
(3)出発2週間前から検温と行動管理

『社寺拝観』
(1)賑わいある人混みの日中で社寺拝観
(2)人混みを避け、遠くから望遠鏡で観光
(3)人が少ない早朝に社寺拝観

『移動方法』
(1)たくさん巡る為、自動車で観光
(2)自宅からパラグライダーで向かう
(3)徒歩と公共交通で観光

「京都観光行動基準」に基づいた正解の選択肢はすべて(3)。(1)を選びたくなる場面もあるかもしれないがが、(1)はすべて「これまでの観光の仕方」だ。

なかなか旅行に行けない状況の続く中、"アフターコロナ""ウィズコロナ"を見据えた動画。一般的な観光の仕方とは異なる点もあり、とても勉強になる。

この動画に込めた思いと合わせて、コロナ禍の観光への影響について、京都市の広報担当者に話をお聞きした。

観光客のマナー違反などがきっかけ

――動画を作ったきっかけは?

昨年11月に「京都観光行動基準(京都観光モラル)~京都が京都であり続けるために観光客の皆様とともに大切にしていきたいこと~」を策定し、多くの人に行動基準を理解していただき、実践していただくために本動画の製作を企画しました。

近年の京都観光において、一部の観光地の混雑や、文化・習慣の違いによるマナー違反等の観光課題が発生し、市民生活にも影響を及ぼす事態が生じておりました。

今後は、これまで通り観光客の皆様に京都の魅力を味わっていただきながら、市民生活や地域文化をより重視し地域に貢献する観光を目指していくとともに、かけがえのない京都を未来へと引き継いでいくため、観光事業者・従事者等、観光客、市民の皆様に大切にしていただきたいこととして,この行動基準を策定しました。


――これまでに、どんなトラブルが発生していたの?

新型コロナウイルス感染症拡大以前は、観光客の急増等に伴う一部の観光地における混雑や大型荷物の持ち込みによるバス車内の混雑、文化や生活習慣の違いによる外国人観光客のマナー問題等です。

今後、ウィズコロナ社会においては、市民及び観光客の皆様の安心・安全の確保を図りながら、このような以前の観光課題を再び発生させない形で、市民生活や地域文化を最重視し、京都観光を回復させていくことを目指していきます。
 

――新しい観光スタイル、特に意識して変えていってほしい、というものはどれ?

京都観光行動基準は、市民生活や地域文化を重視し、地域に貢献する観光を目指しており、観光客の皆様には地域文化への貢献、市民生活との調和や環境保全等、主に4つの大切にしていただきたいことを掲げていますが、これらは同時に京都の魅力をより深くしっかりと味わっていただくことにもつながります。

例えば「観光リサーチ」篇と「文化財散策」篇においては、京都の人や地域に詳しい人と接し、会話が生まれることで、地域住民と観光客の調和につながるだけではなく、地元ならではの観光情報が得られたり、見るだけでは知ることができない奥深い魅力を感じることができ、より味わい深い京都観光を体験いただくことができると考えています。


――その他にも、意識を変えていってほしいものはある?

「社寺拝観」篇の早朝拝観については、コロナ禍における感染予防の観点での密回避になるだけではなく、時間の分散化による混雑解消にもつながります。時間の集中による混雑の課題に対して、観光客の皆様にもじっくりと京都の魅力をご堪能いただける朝観光等をPRすることにより、分散化の取組を進めていきます。

さらに「散策」篇のように空港や駅からの手荷物配送サービスを利用いただくことで、大型荷物による交通機関での混雑解消につながるだけではなく、観光客の皆様にも時間を有効に、そして快適な観光をお楽しみいただくことができます。

このように、少しの行動変容が地域に貢献する持続可能な観光の実現につながるだけではなく、観光客の皆様にもさらに京都の魅力を深く味わっていただける体験につながります。ぜひ、行動基準の全編をご確認いただき、8つの行動を実践いただくとともに、地域に貢献する様々な京都観光の楽しみ方を発見いただきたいと思います。

――ちなみに新型コロナの影響で、京都観光へのダメージは?

昨年7月から開始された国によるGoToトラベルキャンペーンによる需要喚起の取組により、京都市の日本人延べ宿泊客数は改善傾向にありましたが、再度の緊急事態宣言等により、宿泊客数は減少し、京都観光は依然として厳しい状況にあります。

令和3年(2021年)1月の日本人延べ宿泊数は、前年同月比63.6%減、GoToトラベルが開始される以前の昨年7月よりも少ない宿泊数となっています。 

また、令和3年3月26日時点の京都市における宿泊施設の届け出状況については、廃業届の受理完了件数は、令和2年度(令和3年2月末時点)が前年度比約84%増の149件となっていることから、コロナの影響を大きく受けているものと推察されます。

――今後、京都旅をしたい!という人へのアドバイスを教えて。

これからも京都が京都であり続けるために、そして引き続き魅力的なまちであり続けるために、京都市民の皆様の生活を尊重いただきますようお願いします。(地域のルールや習慣、環境にやさしい行動など)観光客の皆様、そして事業者や市民の皆様と互いにリスペクトし合いながら、持続可能な京都観光を創り上げたいと考えております。
 

政府は1日、京都に隣接する大阪、兵庫を含む3府県への全国初の「まん延防止等重点措置」の適用を正式決定した。期間は4月5日から1カ月間で、まだまだ予断を許さない状況が続いている。

京都市ではこれまでにも、祇園の私道や民家での無許可の写真撮影などをはじめ、観光客のマナー違反が問題となっていた。そのような状況に戻さないため、そして感染症対策なども盛り込んだ「新しい観光のかたち」を提案する動画。気兼ねなく旅行を楽しめる日が一刻も早く来ることを願いつつ、今はそんな「京の観光スタイル」を予習する時間、と捉えてみるのもいいかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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