日本有数の観光地・京都にも新型コロナウイルスの影
新型コロナウイルスの感染拡大が、日に日に増えている。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で新型コロナウイルスの感染が相次ぐ中、沖縄県でも1人から陽性反応が出たことが、14日に分かった。
このように全国各地で感染が確認され、外出や旅行を控える人が多く、国内の観光面にも影を落とし始めた。政府が、外国人の入国拒否の対象を、中国・湖北省に加えて、浙江省にも拡大したこともあり、施設などでは中国人団体客のキャンセルも相次いでいるという。
日本政府観光局によると、2019年の訪日外客数は約3188万人で、このうち中国からが約959万人。日本に訪れる外国人の約3分の1が中国人ということになるため、影響は大きそうだ。
こうした状況で心配されるのが、国内有数の観光地である京都。
日本文化を感じられる名所の多さなどで、外国人観光客からも高い人気を誇っている。その人気から、観光客が一極集中する「オーバーツーリズム」に陥ってしまい、編集部でも分散化の取り組みを取り上げたほどだ。
(関連記事:外国人観光客増加で陥る「オーバーツーリズム」...地元住民を守る京都市の対策を聞いた)
そんな京都市でも2月5日、20代の男性が新型コロナウイルスに感染したことが確認されている。(この男性はその後回復、検査結果も陰性となり、8日に退院した)
現在も感染拡大が続く新型コロナウイルス。果たして、京都市の観光業には具体的にはどのような影響が出ているのだろうか。市の担当者に伺った。
外国人観光客のキャンセルが相次いでいる
――新型コロナウイルスでどんな影響が出ている?
1月下旬頃から、宿泊施設や観光施設を予約した外国人観光客のキャンセルが続いています。個別の理由までは確認できませんが、新型コロナウイルスの影響と推測されます。中国人観光客だけではなく、他国の観光客がキャンセルするケースも目立ちますね。
申し訳ございませんが、状況をお示しできる数字などはありません。
――観光名所などでは、どんな反応がある?
混乱などは広がっていませんが、観光地では既に影響が出始めていると感じています。2019年までは春節の時期になると、中国からたくさんの人が来ていましたが、今年(2020年)はかなり減ってしまった印象です。観光関連の事業者からも「少ない」という声を聞きました。
――対策として取り組んでいることはある?
感染症の予防対策、啓発活動を続けています。手洗いなどの対策を呼びかけるとともに、京都駅にある京都総合観光案内所では、注意喚起のデジタルサイネージを多言語で提示しています。観光関連の事業者には、アルコール消毒設備の設置などを徹底するようにも呼びかけています。
また、京都府と連携して独自の融資制度「新型コロナウイルス対応緊急資金」を立ち上げました。感染拡大で業況の悪化が想定される、中小企業などの支援が目的で、売上高の減少率などの条件を満たせば、年1.2%の利率で融資を受けられます。
このほか、市民の電話相談窓口(075-222-3421)に「新型コロナウイルス感染症専用電話相談窓口」としての役割も持たせました。土日祝日を含む24時間対応で、感染が疑われるとき、適切な医療機関を受診するための相談などに応じます。
――観光面での対策はしている?
実は観光面では、お話しできるような対策はしていません。誘客活動そのものが感染拡大を招きかねないので、感染の終息が見えなければ施策なども打ち出しにくい状況にあります。
しばらくは影響の把握、正しい情報の発信などを続けることになるでしょう。
――今後はどうする?
新型コロナウイルスがどうなるかも含めて、影響が想像できないところがあります。市としては情報収集を進めて、いざというときに動けるよう準備をします。終息宣言があるか分かりませんが、安全に来ていただける環境になれば、誘客活動はしたいところです。
市が感染対策は進めるも観光面においての施策を打ち出せていない状況が分かった。続いて、京都市観光協会にも伺ってみた。
京都市観光協会「人が集まる場所での影響が大きい」
――新型コロナウイルスでどんな影響が出ている?
もちろん影響は出ていて、外国人観光客は減っていると思います。ただ、現段階では数字での影響はお話しすることができません。観光協会では毎月、宿泊客数などの情報を協会のウェブサイトで公開していますが、2020年1月分の統計は3月上旬でなければまとまりません。
――体感的にはどう? 観光地はどうなっている?
京都市の1~2月は観光の閑散期なのですが、それを踏まえても観光客が少ないですね。嵐山や伏見稲荷など、例年であれば人が大勢集まるような場所での影響が大きいようです。現地からは心配の声もあるので、事態の収拾を願うばかりです。
――対策として取り組んでいることはある?
外国人観光客向けには、体調が悪化したときに速やかに医療機関を受診できるよう、外国語対応可能な医療機関の場所などを、ウェイボーやFacebookで発信しています。
事業者には、京都市が立ち上げた融資制度があることなどを周知しています。
――観光面では、何かしていることはある?
現段階では特になく、状況を注視していきたいと考えています。観光対策をするにしても、まずは事態が回復してから。日本全体がそのようなマインドなのではないでしょうか。
京都市では観光客数の減少といった影響は出ているものの、感染拡大につながる恐れがあるため、誘客活動などには動きにくい現状があるようだ。
新型コロナウイルスは人々の健康だけではなく、日本の観光や経済までむしばんでいく。この状況を打開するには、感染防止策の確立やワクチン開発が今一刻も早く求められている。