アニメのキャラクターにもヒジャブを義務付け

イランの最高指導者ハメネイ師が、アニメに登場する女性キャラクターもヒジャブ(頭髪と首元を隠すために着用するスカーフや布)を着用しなければならないというファトワー(法的見解)を発行した、とイランの通信社が伝えた。

イランの最高指導者ハメネイ師
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ファトワーというのは、イスラム法の専門家であるイスラム法学者が、特定の質問に対してイスラム法的見地から与える回答である。当該ファトワーは、「アニメのキャラクターにとってもヒジャブ着用は義務なのか」という質問に対する、ハメネイの回答だ。

イランでは女性に対し、公共の場でヒジャブを着用することが義務づけられている。これは「女性はヒジャブを着用することにより保護される」「尊厳ある女性はヒジャブを着用しなければならない」という、イラン体制が採用しているイスラム法に基づく論理、規範に由来する。

ハメネイのファトワーは、この規範がアニメの中にまで及ぶことを示唆している。

ファトワーの中でハメネイは、「想像の世界においてヒジャブ着用自体は必ずしも必要ではないが、ヒジャブを着用しない場合の結果を勘案すると、アニメにおいてもヒジャブ着用は必要なのである」と述べている。これは要するに、個々人がヒジャブを着用しない女性を想像するのは自由ではあるが、それをアニメというかたちで視聴者に提示することは禁じられる、という意味だ。

(画像はイメージ)

日本のアニメはイランでも人気

イランは日本のアニメが人気を博してきた国のひとつである。国営放送においても1980年代から日本のアニメは繰り返し放送されてきた。

それらのなかには「ジャングル大帝」や「アルプスの少女ハイジ」「みつばちマーヤの冒険」「フランダースの犬」といった「古典もの」から、「一休さん」「キャプテン翼」「みなしごハッチ」などに加え、「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」「借りぐらしのアリエッティ」など「ジブリもの」も含まれる。

日本のアニメキャラクターにもヒジャブ着用が義務付けされるのか・・・

これらのアニメにヒジャブを着用していない女性キャラクターが登場することについては、これまでも一部のイスラム法学者が一貫して「反イスラムである」と批判してきた。イランのイスラム法学者の最高位に立つハメネイのファトワーが、今後放送・上映されるアニメにどのような影響を与えるか、あるいは与えないかについては、現状ではまだ不明である。

ヒジャブを着用しない女性に実刑判決も

イランではヒジャブ着用強制に反対し、公共の場でヒジャブを取り外したり、着用しなかったりした女性たちが、当局に逮捕され実刑判決を受ける事例が続いている。スカーフなしの写真や動画をSNSに投稿し、逮捕された女性も多い。

イラン人女優ヤサマン・アリヤニは、2019年3月8日の国際女性デーにヒジャブを脱いで地下鉄の女性専用車両に乗り込み、「いつの日かすべての女性が好きなものを着ることができるように」などとメッセージを言いながら母親とともに乗客に花を配ったことにより母親とともに逮捕され、3つの罪で禁錮16年の実刑判決を受けた。

2021年2月の控訴審では禁錮9年7カ月に減刑されたとはいえ、その罰はあくまで不当であると国際人権団体アムネスティ・インターナショナルなどが抗議している。

権威主義的支配崩壊への危機感

ヒジャブ着用強制に反対する女性たちは、イランの体制は女性から自由を奪い、女性の体を政治イデオロギー推進のために利用していると批判する。

イラン当局がヒジャブ着用義務に違反した女性を重く罰するのは、女性の自由を認めてしまったら独裁政権による権威主義的支配が崩壊しかねないと恐れているからだとも言える。

アニメのキャラにまでヒジャブを義務づけるハメネイのファトワーは、体制側のそうした危機感、焦燥感の象徴でもあろう。

(関連記事:スカーフ着用強制に抗議するイランの女性たち

【執筆:イスラム思想研究者 飯山陽】
【表紙デザイン:さいとうひさし】