「焼肉店」の倒産が過去10年で最少

新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が続き、特に飲食店の経営が苦しい現在。そのような中で、焼肉店が健闘している。

東京商工リサーチによると、2020年の「焼肉店」の倒産件数は全国で14件。前年比で33.3%減で、過去10年間でみると最少となった。

「焼肉店」の倒産件数(提供:東京商工リサーチ)
この記事の画像(6枚)

また、一般社団法人日本フードサービス協会によると、「焼肉店」の2020年11月の売上高は前年同月比で9.4%増と、10月に続いて2カ月連続でプラスとなった。対照的に「居酒屋」の2020年11月の売上高は、前年同月比41.2%減と大幅なマイナスとなっている。

コロナ禍にもかかわらず、倒産件数が過去10年で最少。しかも、売上高がプラスとなっている焼肉店。危機的な状況の飲食店も多い中で、なぜ好調なのだろうか? 

東京商工リサーチの担当者に話を聞いた。

「換気が良いかどうかを注目している利用客は多い」

――他の飲食店と比べても、焼肉店の倒産件数はやはり少ない?

2020年の飲食業の倒産は842件で、年間最多だった2011年の800件を上回り、過去最多を記録しています。

「酒場、ビヤホール(居酒屋)」は174件(前年137件)と急増し、これまで最多だった2012年(141件)を大きく上回りました。

このほか、インバウンド需要の消失や外出自粛、在宅勤務の影響が広がり、「すし店」(前年20件から32件に増加)、「そば・うどん店」(前年13件から19件に増加)なども、増加が際立っています。


――焼肉店の倒産件数が少ないのは、どのような理由が考えられる?

無煙ロースターなどの排煙装置による“換気”や、自分自身で目の前で焼くことなどが、コロナ禍で注目されたためとみています。換気が良いかどうかを注目している利用客は多いと思います。


――焼肉店も、昨年は緊急事態宣言の影響は受けた?

もちろん受けております。店舗の休業や時短営業でダメージを受けたのは間違いありません。


――そして今回の緊急事態宣言。他の飲食店と比べると、焼肉店の影響は少ない?

居酒屋などお酒を飲むことがメインのところはかなり厳しいですが、一人焼肉などの焼肉人気も背景に、影響は居酒屋などと比べると少ないとみられています。

焼肉店(イメージ)

“郊外”に外食需要がシフト

コロナ禍で「焼肉店」が健闘している理由。“換気”以外ではどのような理由が考えられるのか? 日本フードサービス協会の担当者にも話を聞いてみた。


――昨年1月~10月の焼肉店の売上高の推移は?

以下は昨年1月~10月の前年同月比の売上高の増減です。

1月:5.0%増
2月:24.4%増

3月:6.7%減
4月:69.1%減
5月:49.1%減
6月:11.3%減
7月:4.7%減
8月:14.4%減
9月:8.3%減
10月:8.7%増


――他の飲食店が苦境に立たされる中、焼肉店が好調のようだ。この理由は?


そもそも「焼き肉」などの業態は、新型コロナウイルスの感染拡大前から好調であったことに加え、感染拡大した後は、テレワークの浸透や、3密を避ける消費者の行動などによって、“郊外”に外食需要がシフトしたことで、郊外店などが主力の一部の焼肉チェーンでは、売上が好調な状態で推移しています。

また、排煙装置など、他の飲食店にはない設備が“換気”につながるイメージとして、消費者に受け取られている可能性もあります。


――なぜ“郊外”にシフトした?

確かな理由は分かりませんが、郊外に住んでいる方が、自宅の近くの飲食店に行く傾向が見られます。


――今回の緊急事態宣言の発令後、焼肉店に影響は出ている?

現時点では把握できておりません。1月調査の公表は、2月25日を予定しております。

焼肉店(イメージ)

約3分半で客席全体の空気を入れ替え

東京商工リサーチと日本フードサービス協会。両方が理由としてあげていたのが“換気の良さ”だ。 実際のところ、換気は良いのだろうか?

無煙ロースターの最大手、シンポ株式会社の担当者にも話を聞いた。


――コロナ禍で無煙ロースターの注文は増えている?

新型コロナウイルスの影響で、8月は前年比でかなり注文が減りましたが、9月から12月にかけては徐々に注文台数は増えてきております。


――9月以降、注文台数が増えている。その理由は?

焼肉店の好調さではないでしょうか。また、“換気”の良さも、消費者に浸透してきていると思われます。


――“換気”の良さを裏付ける調査結果はある?

一定の条件下の焼肉店を想定し、客席全体の容積と「無煙ロースター」の空気の吸い込み量から換気の量を計算したところ、焼肉店は「無煙ロースター」で焼肉の煙と一緒に店内の空気を店外に排気していて、約3分半で客席全体の空気を入れ替えることができることが分かっています。

無煙ロースター(シンポHP)

また、「上引きフード」も同様の条件で計算をしたところ、焼肉店は「上引きフード」で焼肉の煙と一緒に店内の空気を店外に排気していて、約3分半で客席全体の空気を入れ替えることができることも分かっています。

なお、計算に用いた「一定の条件下」とは以下となります。

客席床面積:77平方メートル(23.3坪) 
天井の高さ:2.6m 
客席全体の容積:約200立方メートル
テーブル数:11 卓

上引きフード(シンポHP)


昨年の緊急事態宣言の発令後には、一時は売上が大きく減少していた「焼肉店」。再発令後の影響は読めないが、東京商工リサーチは焼肉店においても「デリバリー開拓も必要かもしれない」と分析している。

ただ、コロナによる飛沫感染が心配される中、「約3分半で客席全体の空気を入れ替えることができる」のは、今後も飲食店の利用客におけるニーズは大きいはずだ。

【関連記事】
新型コロナが中小企業を逼迫…知っておきたい“目先の資金繰り”と“経営再生”
「街のケーキ屋さん」の倒産急増…“スイーツブーム”のはずが一体なぜ? 老舗洋菓子店に聞いた