特定の相手に、つきまとうなどの迷惑行為を繰り返すストーカー。痛ましい事件が相次いでいます。
そんな中で今週、議論が始まった加害者へのGPS装着やカウンセリングの義務化。「newsランナー」では、元加害者を取材しました。
【元ストーカー加害者】「本当にとんでもない事件に巻き込んじまって、今から思うと申し訳ない」
超高齢社会で増加するストーカー事案の背景を徹底取材しました。
■飲食店客に自宅特定され「俺が置いた袋、見た?」
【男に自宅を特定された あむさん】「多分、ついて来てたのかなって思います。私が退勤するときの時間めがけて」
4年前、飲食店の店員だったあむさん。住所を知らないはずの、店の常連客が突然、自宅マンションにやってきました。
【男に自宅を特定された あむさん】「私が体調不良でお休みした時に、自分の家の玄関のドアノブにコンビニで買ってきた差し入れの袋がかかってあって」
直後に、エレベーターを待つ男の姿を見た、あむさんは警察に相談。そして…。
【男に自宅を特定された あむさん】「後日(店に)出勤した時に、(男が)普通に客として来て、『そういえば、俺が置いた袋、見た?』みたいな」
その後、あむさんはすぐ店を辞め、家も引っ越したことから、男に二度と会うことはなかったということです。
■ストーカーへの禁止命令などの実施件数は過去最多3000件超
去年、2万2000件あまりだった、ストーカーの相談件数。
加害者に出されたつきまといなどを禁止する命令は、過去最多の3000件を超えています。
被害者が亡くなる、最悪のケースも。
ことし3月には東京・池袋の「ポケモンセンター」で、店員の女性を元交際相手が刺殺。容疑者死亡のまま書類送検された広川容疑者には、被害女性への接近禁止命令が出ていた中での凶行でした。
■GPS機器の装着などの対策の議論はじまる
こうした中、今週始まったのが警察庁の有識者会議です。
【警察庁 山田好孝生安局長】「GPS機器等の装着により、加害者が被害者などに接近した場合に、被害者などに通知される仕組みなどの被害者保護措置」
位置情報をもとに加害者が接近すると、被害者に通知するGPS機器の装着などの対策が議論されています。
■韓国ではGPSつき「足輪」 性犯罪の再犯率は20分の1
日本で議論が始まる中、韓国では、3年前にGPSつきの「足輪」による監視制度が始まっています。
それまで性犯罪者を監視するため使っていたものをストーカーにまで範囲を広げました。
最長で20年間の装着を命じられ、ことし5月で足輪を付けている加害者はおよそ350人。被害者や接近禁止エリアに近づくと警告があり、従わない場合は法務省の職員が警察と一緒に出動します。
この取り組みにより性犯罪の再犯率は、20分の1に激減していて、ストーカー犯罪にも効果が期待されています。
さらにことし5月からは、ストーカ―の接近を知らせるアプリも登場。ストーカーが2キロ以内に近づくと、被害者は、アプリで確認できます。
■GPS装着は「即効性ある」が「更生にはつながらない」
日本でもGPSは、ストーカー犯罪の抑止につながるのでしょうか?
今回、ランナーは10年ほど前に、ストーカー規正法違反で逮捕された人物に話を聞くことができました。
Aさんは50代後半の頃、職場の同僚だった20代の女性にストーカー行為を繰り返し、逮捕されました。
【過去にストーカー行為で逮捕 Aさん(70)】「拒絶されても、プロポーズを繰り返したり、彼女の家に電話を入れたりした。夜8時ごろに5分おきに4回。1日おいて3日間ぐらい電話した。(警察に警告された)連続電話を3回もしたと逮捕された」
その後、Aさんは執行猶予つきの有罪判決を受けました。
■加害者の更生に重要な「カウンセリング」を義務化へ
加害者へのGPSの装着についてAさんに聞くと、「ものすごく危険な加害者、凶悪な加害者にはつけた方がいい」と話す一方、加害者の更生に与える影響については疑問を投げかけます。
【Aさん(70代)】「即効性はあるけれど、果たしてGPSはその人(加害者)の心を救うだろうか。ストーカーをやっている人は、自分がストーカーとはひとつも思ってない」
年間およそ100人のストーカ―加害者をカウンセリングする精神科の医師も、GPSの装着は必要としつつ、Aさんと同様の懸念を口にします。
【性障害専門医療センター 福井裕輝代表理事】「GPSをつけることは、あくまで一時の接近とか暴力を防ぐというだけであって、そもそも更生にはつながらないので、いつまでたっても良くならない」
この点については、有識者会議でも議論されていて、更生のカギとされるのが、カウンセリングの受診です。
警察が付きまとい行為などをやめさせる「禁止命令」を出した加害者の、カウンセリング受診率が低いことから、治療やカウンセリングを義務付ける仕組みなどを検討します。
■治療引き受ける医師不足という課題も
自身もカウンセリングに救われたというAさん。「ストーカーの再犯を防ぐには、早い段階で加害者にカウンセラーをつけるべきだ」と話します。
【Aさん(70代)】「ストーカーは孤独のどん底にある。特に有罪判決を受けたあとなどは。孤独のどん底で、もがき苦しんでいるからこそ、ゆがんだ思いが強くなる。
被害者を救うためには、加害者を救わないといけない。そのためには早い段階でカウンセラーをつける」
ただ現場からは、課題も見えています。
【性障害専門医療センター 福井裕輝代表理事】「(加害者を)受け入れる精神科医といっても、指で数えるぐらいしか多分いなくて、どこに治療の引き受け手がいるのか」
■ストーカー加害者の高齢化「古い考えに基づいてごう慢になっていた」
まだまだ手探りの部分が多いという、ストーカー治療やカウンセリング。さらに今、新たな課題として浮かび上がっているのがストーカーの高年齢化です。
今から20年ほど前は、60代以上の加害者が起こした事件は473件でしたが、去年は2685件と5倍以上に増えています。
【性障害専門医療センター 福井裕輝代表理事】「高齢者で言うと、配偶者が亡くなるとか、子どもが独立するとか、仕事を辞めた後に(心に)ぽっかり穴が開いたようになって、そのあとにストーカー化することが多々見られています」
50代後半でストーカー加害をしてしまったAさんも自身の経験をこう振り返ります。
【Aさん(70代)】「僕も古い人間なんで、『男は押しの一手だ』というぐらいの感じがあった。古い考えに基づいて、自分がごう慢になっていた。ある程度、仕事もできるようになり、気持ちがごう慢になっている時期だった」
今までのストーカー対策では難しい重大事件の抑止。被害をなくすために加害者支援の在り方が問われています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月22日放送)
