11月7日投開票の大阪維新の会の代表選挙に、吉村洋文代表は3選を目指して立候補すると表明した。
結党から16年、大阪府・市はもちろん府内の多くの自治体の長を輩出し、議会でも過半数を占めてきた大阪維新の会。
一方、結党から掲げてきた都構想の3回目の住民投票を巡って、党内からも「強引」「吉村劇場」などと、その進め方を疑問視する声も聞こえてくる。
こうした中で「大阪都構想」の公文書などで「大阪市廃止」という表現を避けるよう求める陳情書に維新の国会議員秘書などが署名していた問題が起きている。
「維新は転換点を迎えている」と話す地方政治の専門家、拓殖大学・河村和徳教授に「求められる資質」について聞いた。
■大阪維新代表選に吉村代表が立候補へ 横山代表代行は『推薦人』
大阪維新の会は任期満了に伴う代表選を10月28日告示、11月7日投開票の日程で実施することを決めた。
10月21日午後2時から行われた立候補予定者説明会には、吉村代表の陣営のみが参加した。
吉村代表は20日、「”都構想”の実現を来年春の統一選と同日で目指したい。責任をもって進めたいので大阪維新の会の代表選挙に立候補します」と述べ、3選を目指し、唯一出馬表明している。
なお、大阪市長でもある横山英幸代表代行は「代表選には出ない。推薦人に名を連ね吉村代表を支える」と明かしている。
■結党16年維新の功績と「不寛容」再来への懸念
「大阪都構想」の公文書などで「大阪市廃止」という表現を使用しないよう求める陳情書に維新の国会議員秘書などが署名していたことが発覚した。
この問題について、議会改革の専門家として大阪府議会に参考人招致されたこともある拓殖大学の河村和徳教授に話を聞くと、話は「維新の代表に求められる資質」へと話が及んだ。
河村教授はまず、「維新の功績」を挙げ、次のように評価した。
「かつての大阪は各党相乗り・”総与党化”で、自民党のベテランなどが職員の労働組合と手を組んで腐敗政治を続けてきた歴史がある。維新は『そこから距離をとるのが改革だ』と、『決まらない政治』から脱却させた。それはある種、『時代の要請』だった」
■維新は「不寛容な状態」に?
その上で河村教授は、維新が「身を切る改革」として定数削減をしたことにより、1人区や2人区の選挙区が増え、限られた政党のみが議席を取るようになった議会が誕生した結果、維新以外の声が届きにくくなっている状況を危惧しているという。
「議会が拾えていない声を拾い上げる」はずの「陳情」で、維新の国会議員秘書も署名した陳情問題への党の対応については「政治学的にテストではD評価(=不可)」と厳しい評価を下した。
「届かなくなった民意として上がってきた陳情をどうフォローするか。『声なき声』が届かない『不寛容な状態』という意味では、かつて自分たちが批判した『自民党と労組が手を握っていた大阪』と同じところへ戻ってきている」(河村教授)
この「陳情問題」について、採択した市議会の維新のメンバーに採択の経緯について説明を求め、取材を申し込んだところ、「陳情を提出したのは34人で、秘書が3人いたとしても31人は市民。陳情の主旨とも異なるし、しょうもない」と一蹴された。
■「横綱」の維新に求められるのは「寛容な精神で丁寧に話を進めていく姿勢」
意図しない形で注目されている「大阪都構想」と大阪維新の会。
結党から16年、「一強」と呼ばれる盤石な地盤を築いた今の維新を、河村教授はあえて「横綱」と呼び、その振る舞いに注文をつけた。
「異なる意見を許容して、寛容な精神で丁寧に話を進めていく姿勢が求められる。効率だけを突き詰めればゴールは『独裁』になってしまう」(河村教授)
■吉村代表「『全員が合意でないとやりません』は『何もできない政治』に」
では、大阪維新の会のトップはどうかじ取りを担うべきか。出馬表明した吉村洋文代表とそれを支えるという横山英幸代表代行に質問をぶつけた。
【大阪維新の会・吉村洋文代表】「主義・主張が違ってもこれは必要だと思うことはどんどん取り入れていきたい。
ただ大きな改革をするときに賛否があるのは事実で、『全員が合意でないとやりません』は『何もできない政治』『何もやらない政治』になる。
社会も他国もどんどん成長していく中、何もしないのはリスク。そのときに一番不利益を被る、厳しい状況にある人を支えるのがあるべき政治の姿。
理想論を語るのは簡単だが、僕は成長して果実を生み出し、本当に支援を必要とする人にしっかりまわしていくことが重要だと思う」
【大阪維新の会・横山英幸代表代行(大阪市長)】「政策を進めていく上では方向を示すことも大きな役割。その代わり、選挙で審判を受けます。有権者の信託にしっかり思いを馳せるべき」
■有権者の下す判断は
大阪で圧倒的に支持されてきた大阪維新の会。
「少数派の声が届きにくくなっていて、それに耳を傾けるべき」という河村教授の指摘はもっともだ。
一方、吉村代表が言うように政治家は「決めて進め、成果をもたらすこと」も求められている。
吉村代表続投「濃厚」との声も聞こえてくるが、維新の新たな代表が進める大阪都構想の住民投票や統一地方選で、大阪の有権者たちはどのような判断を下すのだろうか。
悲願の都構想を成し遂げるためにも、「横綱」の戦い方に注目が集まっている。
