沖縄県うるま市栄野比(えのび)で、独特の掛け声と強烈な存在感を放つ「島民ダンス」が8年ぶりに披露された。
太平洋戦争中、南洋群島(現在のミクロネシア周辺)に渡った栄野比の人々が現地の踊りに魅せられ、戦後地元へと持ち帰ったことが始まりだ。以来「栄野比少年団島民ダンス」として70年以上にわたり受け継がれてきた。

しかし、近年のコロナ禍や踊りの拠点であった「あしびなー(遊戯場)」の整備遅延などが重なり、長らく披露の機会が途絶えていた。途切れかけた地域の熱量を再び呼び覚まそうと立ち上がったのは、さまざまな世代の地元住民たちだった。
復活の舞台に向けて高まる熱意
踊りの復活に向けた練習場には、久しぶりの動きに戸惑いつつも笑顔を見せるベテランと、新たに加わった3人の若い踊り手の姿があった。

かつて観客だった若者が、今度は踊り手として舞台に立つ。世代交代の足音が聞こえる中、先輩世代も若い力の参画を頼もしく見守る。
ベテランの仲本英則さんは「久しぶりにやりましたね」と、久しぶりのダンスの感覚と記憶を手探りしながら練習に臨んでいる。

「忘れていますねやっぱり、思い出さないといけない。練習に励んでいますが、楽しみですね。栄野比の伝統的な行事が復活するということなので、若いころやっていたように血が騒ぐというか」
一方で、“初舞台”を迎える初々しい若い世代からも、意欲的な言葉が聞こえてきた。

「大人になって見る側からやる側に変わって、地元を盛り上げるっていうのを今実感しているので、これを機にみんなに地元の良さを知ってもらいたいです」(島田悠雅さん)
「簡単そうに見えるけど、やってみると全然違うしリズム感とかも不慣れでまだ全然できないですけど。自分が見ていたようなかっこいい島民ダンスにしたいですね」(仲松嘉晴さん)
舞台直前、緊張感と高揚感漂う楽屋では…

復活の舞台に選ばれたのは、地域のお年寄りの長寿を祝う敬老会の会場だった。
本番直前の楽屋では、演者たちが全身に黒いドーランを塗り、藁とマーニ(クロツグ)の葉で作られた腰みのを巻きつける独特の準備が進められる。
高揚感と緊張感が交錯する楽屋裏で、出演者たちは笑みをこぼしながら気持ちを高めていた。

「緊張より楽しみが勝ってますね」(仲本晃気さん)
「そりゃ緊張しますよ。黒く塗ってますけど頭は真っ白ですね」(仲本英則さん)
黒塗りの装束に身を包んだ演者たちが舞台へ上がると、酋長役を務める大嶺自保さんが「ワン・トゥー・スリー・フォー!」の掛け声で口火を切り、ハーモニカの音色とともに演者たちが入場。スタンドマイクに向かった仲本さんがあいさつする。

「はるばる南洋から来ましたよ。この宴をするのが8年ぶりと聞きました。僕たちが踊るところを準備してくれてどうもありがとうございます!」
「200点満点」の盛り上がり、受け継がれる地域の絆
躍動感あふれるリズムと南洋の熱気を帯びた踊りは、集まった観客の心を一瞬で掴んだ。客席からは拍手と歓声が湧き起こり、踊りに合わせて一緒に掛け声を放つ子どもたちの姿も。

熱気に満ちたあしびなーの会場に居合わせた人たちから、好評の声が届く。
「すごい最高でした。私たちも踊りたいと思いました。ぜひ残してほしいと思います」
「懐かしかったですし、また復活して嬉しいです。自分の息子が出てまして、頑張っている姿を見られて嬉しく思います」
大盛況のうちに幕を閉じた舞台を終え、演者たちの顔には確かな手応えと安堵が浮かんでいた。
仲本英則さんは「皆さん楽しみに待っていたんでしょうね。色んなお客さん、先輩方から小さい子どもたちまで楽しんでもらえたのかなと。盛り上がったから200点満点ですかね」と満面の笑みを浮かべていた。

戦後、南洋から海を越えて栄野比に根付いた異国のリズム。8年の空白を経て再び上演された踊りは、旧来の伝統を守るだけでなく、新たな世代の力によって未来へと確実に紡がれていくはずだ。

