恫喝的な取り調べをしたなどとして、検事が罪に問われている異例の裁判。
きょう=16日、被告人質問が行われ、検事は「脅す気持ちはなく一喝したという認識だ」と主張しました。
「被疑者と検察という立場の違いはありますが、できるだけ同じ人間として向き合う事、対象者の言い分をよく聞くこと気を遣って臨んでいました」
「厳しい追及を行ったとは思っていません」
法廷でこう語ったのは…大阪地検特捜部が手がけた事件で、恫喝的な取り調べをしたなどとして罪に問われている、現役の検事、田渕大輔被告(54)。
■裁判で“元部下の供述”の信用性否定 取り調べの”実態”が明らかに
発端は7年前。
特捜部は不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんが土地取引をめぐり部下らと共謀して21億円を横領したとして逮捕・起訴しました。
特捜部が山岸さんの逮捕に踏み切った大きな要因が、取り調べで部下のKさんが山岸さんの関与を認める供述をしたことでした。
しかし刑事裁判の判決でこれらの供述は「信用できない」と否定され、山岸さんは無罪に。
そして、田渕検事の恫喝的な取り調べの実態が明らかとなったのです。
■映像に記録された取り調べでの言動 異例の裁判へ
Kさんの取り調べ映像には、田渕検事が机をたたきながら大声を出す状況が記録されていました。
Kさん:「ちょっと今、勘違いしました」
田渕検事:「なめんじゃねえよ。いい加減なこと言っちゃダメだろ!なんでそんないい加減な説明するんですか!」
このような取り調べは、およそ50分間にわたって続くこともありました。
そして大阪高裁はおととし、田渕検事が取り調べで罵倒や脅迫を行った特別公務員暴行陵虐の罪で刑事裁判を開くことを決定。
現役の検事が被告人となる異例の裁判が開かれることになったのです。
■無罪主張の田渕検事 弁護人「被告1人を有罪にしても“トカゲのしっぽ切り”に過ぎない」
これまでの裁判で田渕検事は「陵辱か加虐にあたる行為ではなかった」と無罪を主張。
また、問題となった取り調べの前日に田渕検事らが主任検事からメールを受け取っていたことも明らかになりました。
【蜂須賀主任検事からのメール】「上級庁(最高検察庁)からは、色々御指導いただいており、本当に悪いやつの処分をどうするのかということを含め、早めの中間報告を求められており(来週11日頃!)メリハリを付ける必要があります」
メールは田渕検事の取り調べに影響を及ぼしたのでしょうか。
取り調べの映像は検察内部でもチェックを受けたというとですが、幹部らは「度を越えるものではない」などとして問題視することはありませんでした。
裁判の中で弁護側は「検察組織などを根本的に見直さなければ、被告一人を有罪にしてもトカゲの尻尾切りに過ぎない」と主張しています。
■被告人質問で語ったこと 「私の考えている厳しい追及は行ったとは思っていません」
取り調べの背景には一体、何があったのか。田渕検事本人が語る注目の被告人質問が始まりました。
田渕検事の弁護人はまず、検事として日ごろから取り調べにどう臨んでいるのかを質問しました。
【弁護人】「取り調べを行うことの心情は?」
【田渕検事】「被疑者と検察という立場の違いはありますが、できるだけ同じ人間として向き合う事、対象者の言い分をよく聞くこと相手の人となりをよく知る、そういうところに気を遣って臨んでいました」
こう、答えた田渕検事。
次に、今回の取り調べについて具体的に聞かれると。
【弁護人】「今回のどのように取り調べをしようと思っていた?」
【田渕検事】「相手の弁解内容を丁寧にまず聞く。供述に矛盾があると思ったら、場合によっては厳しく追及することも考えていた」
【弁護人】「厳しい追及をした覚えは?」
【田渕検事】「私の考えている厳しい追及は行ったとは思っていません」
厳しい追及はしていないと主張。そして、田渕検事は、取り調べをしたKさんについて「軽率に取り繕うような弁解をした覚えがある」と話し、こう続けました。
■元部下に対する「検察なめんなよ」発言は「一喝したということだったと思います」
【田渕検事】「一喝したということだったと思います。『いい加減なことを言っちゃダメだ!』と強い口調で言ったと思います」
【弁護人】「脅そうなどという気持ちはありましたか?」
【田渕検事】「ありませんでした」
【弁護人】『検察なめんなよ』これはどういう思いから発言した?」
【田渕検事】「検察の1人である私もしっかり覚悟をしてこの取り調べに臨んでいる。その私の問いかけを軽々に扱わないでほしい、そういう思いです」
【弁護人】「検察をなめてたらひどい目に遭わせるぞ、という意味ではない?」
【田渕検事】「違います」
あくまで一喝で、「脅すつもりはなかった」と主張する田渕検事。
検察の取り調べのあり方の根底を問われる裁判は、次回19日も引き続き被告人質問が行われます。
