「餃子の王将」運営会社の社長だった大東隆行さん(当時72)が銃で撃たれ殺害された事件の裁判で、京都地方裁判所はきょう=16日、殺人などの罪に問われている特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄被告(59)に対し、「無罪判決」を言い渡しました。
弁護士の西脇亨輔氏は無罪判決に至った裁判ついて、「証拠が不十分だった」と指摘。
検察側が示した「3つの間接証拠」がなぜ不十分だったのかを解説しました。
■検察側が重視していた「3つの間接証拠」
主文を言い渡された瞬間、田中被告は落ち着いた様子で2、3度うなずき、弁護側の方に頭を下げたということです。
今回の裁判で、田中被告の関与を示す直接的な証拠はありませんでした。
検察側が重視したのは、主に3つの間接証拠でした。
現場に落ちていた田中被告のDNA型が付着したたばこの吸い殻、硝煙反応が出たスクーター、そして事件前日に被害者の自宅付近を人物が歩いている防犯カメラの映像です。
しかし京都地裁は検察側の主張を退けました。
防犯カメラの映像については「特徴がありふれたもので被告人とは言えず、被告人が実行犯と推認させる力は乏しい」と判断。
たばこの吸い殻については「他の日に捨てられたり、第三者によって持ち込まれたりした可能性が排斥できない」とし、硝煙反応が出たスクーターについては「証拠上認定できない部分があり、実行犯と推認させるものでない」としました。
■無罪判決「非常に簡潔な判決だった」と西脇氏
【西脇亨輔氏】「この被害者の方の命が奪われてしまった、これはもう厳然たる事実です。一方でこの裁判、検察側の証拠について、結局『証拠が不十分、証明ができていない』こういった強い判断が下された、非常に簡潔な判決だったと思います」
西脇氏によると、大きな事件の無罪判決では、分厚い本のような判決文になることも珍しくないそうです。
【西脇亨輔氏】「今回は非常に端的に、たぶん判決文ができあがっても、薄いものになると思います。それだけ証拠が足りていない、だから『これでは立証できていない、以上』という、強い結論が出ているという、そういった判決だと思います」
■田中被告のDNA検出のたばこの吸い殻は「証拠として不十分」
また、西脇氏は、田中被告のDNA型が付着したたばこの吸い殻がなぜ「証拠として不十分」なのかを説明しました。
【西脇亨輔氏】「組織が関わっているかもしれない事件です。田中被告が犯人ということにして、『真犯人は逃げちゃおう、そっちに捜査の目を向けて逃げちゃおう』ということで、田中被告のたばこをどこからか集めてきて、こっそり現場に置いたという可能性も否定できない」
さらに、現場でたばこを実際に吸っていたとしたら、灰や火種が落ちているはずだと指摘されていました。
現場の写真には「黒っぽい点」があったものの、それ以上の情報が無く、それが灰だと断定できるほどの証拠にはならなかったということです。
【西脇亨輔氏】「そうじゃない可能性もあるという、そういったストーリーが残ってしまったらそれは無罪になるわけです」
■田中被告がコメント「真犯人を追っていただきたい」
無罪判決を受けた田中被告は、裁判後にコメントを出しました。
「裁判官の判決の言葉に溜飲が下がるとともに、この4年の垢が洗い流された気持ちになりました。それでも、犯人と思われた時点で人生が変わるし、失ったものも戻ってきません。
検察も人間ですから、間違うこともあります。過ちは過ちとして、勇気を持って振り出しに戻って過ちを正され、真犯人を追っていただきたい」
一方、亡くなった大東さんの遺族は強い落胆の思いを表明しました。
「予期せぬ判決で非常に落胆しています。極めて不当な判決であり、検察庁には控訴をしていただくよう強く申し入れました。大阪高等裁判所で適切に審議され、納得できる判決が出ることを切に願います」
■控訴するなら「新証拠」が出てくるかどうかがカギに 西脇氏分析
間接証拠で逮捕・起訴に踏み切った判断について西脇氏は「逮捕までの9年間、警察や検察が証拠の判断に悩んでいた」と分析します。
【西脇亨輔氏】「事件発生から逮捕までに9年がかかっています。スパッと行ける証拠がなくて悩んだ末に、『でもこれでいけるかな』と思って検察側や警察は考えたのかもしれない」
また、今後控訴された場合、これ以上新たな証拠が出てくるかどうかがカギを握ると西脇氏は指摘しました。
【西脇亨輔氏】「もし無罪が確定すれば、真犯人は他にいるかもしれないという話になる。ご遺族にとっては、やりきれないことになる」
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月16日放送)
