暑い夏がようやく落ち着き、徐々に秋らしさを感じるようになる10月。気温が下がるにつれ、湿度も急激に低下し肌の乾燥が進む季節が到来する。
肌トラブルや風邪への注意は広く知られているが、実はこの時期に見落とされがちなリスクがある。
それが、乾燥した皮膚を入り口とした”食物アレルギー”の発症。
「皮膚からアレルギーが始まる」という事実は、アレルギー研究の世界ではすでに常識となりつつあるものの、一般にはまだほとんど知られていない。
アレルギー疾患に詳しい、島根大学医学部 千貫祐子准教授が、実際の症例をもとにそのメカニズムと対策を詳しく解説した。
■ 「60代女性が突然アナフィラキシーショック」これまで魚アレルギーではなかったのに…
最初に取り上げられた事例は、千貫准教授が実際に診察した60代の女性だ。
自宅で食事を終えた後、急に全身にかゆみが生じ、救急へ連絡しようとしたが、声も出にくく、住所さえ伝えられない状態に陥った。
そうこうするうちに意識が朦朧となり、玄関で倒れてしまい、緊急入院という事態となった。
診断結果は「魚アレルギーによるアナフィラキシーショック」だった。
それまで魚アレルギーとは無縁だった女性が、なぜ突然重篤な症状を起こしたのか。
その原因はなんと、“傷ついた皮膚”だったという。

乾燥して傷ついた皮膚 異物が皮膚の内側へ侵入しやすくなる
千貫祐子准教授:乾燥してカサカサになった皮膚を、“傷ついた皮膚”と言います。ひび割れて血が出るほどでなくても、バリアが破壊されていれば、その時点で“傷ついた皮膚”となります。
潤いのある肌はバリアー機能が保たれており、外部からの刺激や異物が侵入しにくい状態を保っている。
しかし、乾燥して傷ついた皮膚では、異物が皮膚の内側へ侵入しやすくなる。
千貫准教授によると、その状態から食物アレルギーが始まるケースが確認されていて、これはアレルギー研究の現場ではすでに広く認識されている事実だということだ。

■ 魚由来成分の化粧品が引き金に
この女性は、9月から魚由来成分を含む化粧品を1日2回、3カ月間にわたって使い続けていた。
千貫祐子准教授:顔の肌が傷ついていたかもしれませんし、もしかするとお化粧品を塗る手のほうが傷ついていたかもしれません。この方は9月に化粧品を使い始めて、12月にアナフィラキシーショックで運ばれていますので、まさにこの季節が危険だと思います。
乾燥した顔や、化粧品を塗る際の手から、魚由来のタンパク分解物が皮膚へ侵入し続けた結果、体の免疫が魚を“異物・敵”とみなすようになったと考えられている。
注目すべきは、化粧品を使用している際は女性はかゆみなどの自覚症状をまったく感じていなかったという点だ。
塗布の段階では何の反応も起きていなかったにもかかわらず、ある日魚を食べた瞬間に重篤なショックが発症した。
皮膚を通じて体が一度“敵”と認識した物質は、その後に口から摂取した際にも同様の免疫反応を引き起こすということだ。
魚由来のタンパク分解物は様々な化粧品に広く使用されており、決して珍しい成分ではない。
千貫准教授は、紹介した症例は約10年前のものであり、近年はアレルゲン性の高いタンパク分解物の特定が進んでいるため、最近の化粧品は安全性が高まっていると説明した。それでも、日常的に使用する化粧品の成分には注意が必要だと強調している。

■ 20代女性の事例 飲食店での“素手の皿洗い”が発症の引き金に
次に紹介されたのは、千貫准教授が診察した20代の女性の事例だ。
この女性は以前から、魚を食べると口や喉に軽いかゆみを感じることがあったが、さほど気に留めていなかった。
しかしある日、全身に蕁麻疹が広がり、呼吸困難に陥って緊急搬送され、魚アレルギーと診断された。
原因として浮かび上がったのは、飲食店での1年間のアルバイト経験。女性はもともと手荒れがある状態で、手袋をせずに素手でお皿を洗い続け、魚が残った食器に繰り返し触れていた。
千貫祐子准教授:この方はもうすでに手荒れがあったんです。その状況でアルバイトを始めて、1年後に魚アレルギーとなりました。
1回触れただけではアレルギーは成立しにくく、繰り返し接触するうちに皮膚の免疫が異物と認識し、攻撃を始めるようになる。
その結果、ある日突然、これまで問題なく食べていた魚に対してもアレルギー反応が出るようになるということだ。

■ 特に注意が必要な人とは 疲労・体調不良・子どものスキンケア
千貫准教授は、アレルギーが発症しやすい状況についても言及した。
疲労や睡眠不足、免疫力の低下がある状態は、アレルギー反応が表面化しやすいタイミングとなる。大人の食物アレルギーでは、運動や解熱鎮痛薬の使用、体調不良といった二次的な要因が加わることで、初めて症状がどんと出ることがあるとのことだ。
千貫祐子准教授:基本的には、元々その方にアレルギー体質が成立していることが前提で、二次的要因が加わって、例えば体調不良などで初めて明らかになった、という考え方です。
子どもに関しては、また別の注意点がある。
口の周りの湿疹や手荒れ、食べこぼしや手で食べる行為などにより、皮膚を通じてすでにアレルギーが成立してしまっているケースが少なくないと千貫氏は指摘する。
初めて食べた際にすでにアレルギー症状が出ることもあるため、幼い頃からのスキンケアと保湿によるバリアー保護が特に重要だ。

■「しっかりと保湿をして、肌のバリアを保つことが大事」
なお千貫准教授によると、アレルギー検査については、何も症状がない状態でやみくもに受けることは推奨されないと言う。
何か異変を感じた際に事前に検査を行い、大きな発症を防ぐ対策をとることがベストだということだ。
千貫祐子准教授:しっかりと保湿をして、肌のバリアーを保っていくことが、特にこれからの季節、大事です。
乾燥が進むこれからの時期、日常のスキンケアが食物アレルギー予防の第一歩となることを、専門家は改めて強調している。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年10月15日放送)


