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女川町で始まるトリガイの養殖 「水産業を変える」「画期的な新しい資源」 環境が変わる海での新たな挑戦

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近年、海の環境が目まぐるしく変わる中、宮城県女川町で、町の地域おこし協力隊の男性が、トリガイの養殖を進めています。
なぜ、「女川」で「トリガイ」なのか。そこには、この貝に注目した理由がありました。

女川町の指ケ浜漁港。ここで今、宮城の水産業を変えるかもしれない新たな養殖が進んでいます。

それが…

梅島三環子アナウンサー
「立派!大きいですね。殻長8センチで、100グラムは優に越えている貝」

トリガイです。
寿司では高級なネタとして知られるトリガイですが、天然資源への依存度が高く、”希少な貝”と言われています。

そんなトリガイの養殖が女川町で始まったのは、おととし。町内にある水産加工場の一角でそれは始まります。

取り組んでいるのは町の地域おこし協力隊の長谷川翔亮さん(32)。
千葉県出身の長谷川さんは、東京大学やアメリカの大学で、環境問題を学んできました。環境問題を学んできた長谷川さんが、なぜ、トリガイの養殖なのでしょうか。

長谷川翔亮さん
Q.環境問題とトリガイ養殖って、どういう関係?
「一般的な肉類の生産では、たくさんの餌を与えてやっと一キロの肉が得られる。例えば牛肉なら8キロ以上の餌を与えて、1キロの肉が得られる。そのため、8キロの餌となる大豆やトウモロコシを生産するための土地や水、それに伴う温室効果ガスの排出が必要。一方、トリガイを始めとした二枚貝の養殖では、漁師は餌を与えずに育てる。温室効果ガスの排出量は少なく、陸上の土地も淡水資源も使わない。環境に優しいたんぱく源になっている」

加えて、二枚貝の中でも成長スピードが早いのが特徴です。カキやホタテよりも3倍ほど早く、環境への負荷を抑えながら、短い時間で多くのたんぱく源を生み出します。

長谷川翔亮さん
Q.この水槽は?
「これらの水槽の中でトリガイの幼生を飼育しています」

長谷川さんは、全国をまわり養殖生産地を探したところ、プランクトンが多く栄養豊富であることに加え、山々に囲まれ風の影響を受けにくいことなどから、三陸の海が適地であると考えたそうです。そのなかでも女川町を選んだのには理由がありました。

長谷川翔亮さん
「女川町は、外から来た人や若い人を応援する文化がすごくある。自分が来た初日には町の関係者に集まってもらい、女川でトリガイをどうしていくか話し合いができた。女川だったらやりたいことをやっていける確信があったので女川に来た」

女川の地で新たな挑戦を始めた一方、トリガイは稚貝を育てることが、非常に難しいと言われています。事業化するには、4%の生存率を確保することが必要ですが、長谷川さんも生産当初は1%にも満たなかったそうです。

長谷川翔亮さん
「卵を産ませられない最初のハードルがあったので、試行回数をたくさん稼ぐことで突破していった。0.001%かもしれないが、まずはできるところまで至ったのが昨年の夏」
Q.今は何パーセント?
「2%弱くらいまで来ているイメージです。」

養殖と言っても、海で、勝手にやっていいわけではありません。養殖をやるには、地元漁協の理解が必要不可欠ですが、すでに、町内8カ所の浜、およそ30人の漁師が、長谷川さんの挑戦を支えています。

長谷川さんが育てた貴重な稚貝を、地元の漁師たちが受け取り、海で育てる。出荷できるサイズになるまでにおよそ1年かかり、今シーズン、ようやく初めての水揚げにこぎつけました。

長谷川翔亮さん
Q.水揚げしてみてどう?
「本当に手ごたえがあります。一般的に出回っているトリガイのサイズより大きい、いわゆるブランドトリガイサイズのものが、女川でつくれることがわかった」

地元の漁師も、新たな養殖品目が増えることは、大きなメリットにつながると期待します。

阿部圭尋さん
「ずっと高水温が続いてたいので、さすがに既存の養殖はきついんじゃないかと思っていました」
Q.トリガイ養殖の可能性についてどう考える?
「宮城の水産業を変えるんじゃないかというレベルだと思っている」

近年、海を取り巻く環境が激変する中、専門家も、女川での新たな養殖、「トリガイ」に注目しています。

宮城大学食産業学群 西川正純教授
「女川港自体は、サンマの水揚げで有名な地域でしたが、サンマが今取れない状況。ホタテも去年、(収穫量が)良くなかった。カキも今年それほどよくないと言う中で、新しい一つの資源と言う意味では、画期的なことになるのではないかと思う」

さらに、トリガイの持続的な生産は、地域産業の発展にもつながると指摘します。

宮城大学食産業学群 西川正純教授
「水産加工業の方々も、原料が無くなってくる中で苦しんでいるから、生産量が増えれば、水産業だけでなく加工業も潤ってくるのではないか。水産業はこれまで取る漁業が中心だったが温暖化の影響でどこでも水揚げが減っている。これから養殖業が中心になる時代なので、種苗生産からトライして湾内で養殖していくことができるのであれば日本水産業にとっても本当に画期的なこと」

女川町で進むトリガイの養殖…。今後、貝毒検査を行い、早ければ年内にも出荷が始まります。

長谷川翔亮さん
「女川だからこそのサイズ感でもあるし、トリガイに合った海と思っています。今年の知見を生かして、来年はどんどん量産していければと思う」

安定した種苗生産ができるよう、現在は間借りしている生産拠点を、自分で作るべく、クラウドファンディングを11月から始める予定です。

長谷川さんは、この技術を他の三陸沿岸にも広げ、宮城の水産業を盛り上げたいと話していました。

仙台放送
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