大切な会合や連休のレジャーのため、レストランやホテルを予約した事がある人は多いだろう。予定通りに楽しめれば何の問題もないが、急な予定変更で取りやめざるを得なくなったときには、キャンセル料がいかほどになるかは気になるもの。
ましてや、時に数百万円という高額になる結婚式場の予約であれば尚更だ。
東京地裁で争われたのは、結婚式の約1年前に式場をキャンセルした場合に、キャンセル料はどれほどになるのかというもの。
結婚式場側はカップルにキャンセル料約128万円の支払いを求めたが、裁判所はその請求を棄却した。
344日前のキャンセルで128万円の請求
関東地方在住のカップルは2023年秋、東京近郊にある宿泊施設で自分たちの結婚式と結婚披露宴をあげるため、ブライダル事業者と契約を結んだ。
その内容は、契約の1年1カ月後に2泊3日の宿泊付き結婚式・披露宴を行うというもの。見積金額は約428万円で、2人は申込金10万円を支払った。
しかし、契約から約2か月後、挙式予定日の344日前に、カップルは電話とメールで契約キャンセルの意思を伝えた。
これに対し式場側は、契約にあるキャンセル条項に基づき、見積金額の30%にあたる約128万円のキャンセル料を請求した。
カップル側はキャンセル料を支払わず異議を申し立てたため、東京地裁で裁判が開かれることとなった。
カップル側「早期解約で損害なし」
被告となったカップル側の主張のポイントは以下の通り。
早期キャンセルによる損害の不在:
挙式日の344日前という十分な余裕をもった時期の解約であり、式場側は他の顧客へ再販売することが可能だった。
実費の未発生:
解約までの約2カ月間、具体的な打ち合わせは行っておらず、料理・花・装飾・人数などといった具体的な内容が確定していないので、準備は一切行われていない。式場側に実費損害は発生していない。
式場側「平日プランで再販売困難」
一方、原告である式場側は、キャンセル料約128万円の妥当性と正当性を主張した。
式場側の主張のポイントは以下の通り。
特殊なプランによる再販売の難しさ:
本プランは平日開催かつ2泊3日の宿泊付きという特殊な内容であり、需要が極めて低い。そのため、344日前であっても他の顧客に再販売することは困難であるとして、非再販売率(※その日にそのプランが売れない確率)は、75%と主張した。
発生した損害の範囲:
得られるはずだった利益(逸失利益)に加え、再販売のために投じた広告宣伝費や内覧会開催費用も損害として加算されるべきである。この業者では、1組の契約を獲得するために要する広告費と内覧会開催費は約47万円。
キャンセル条項は有効:
消費者契約法9条1項1号では、解約の時期などに応じて定められたキャンセル料について、同種の契約の解除によって事業者に生じる「平均的な損害」の額を超える部分を無効としている。今回のキャンセル料条項に基づいて算出した式場側の「平均的な損害」は約273万円にのぼり、請求している約128万円はこれを下回る。キャンセル料条項は全体として有効である。
争点1:広告費は損害に含まれるか
裁判では、「式場側に生じた『平均的な損害』の額がいくらになるか」が争点となった。
まず、式場側が損害として主張した「広告宣伝費や内覧会費用(約47万円)」について、裁判所は「損害に加算することはできない」と判断した。
これらの費用は、式場側が事業を継続する上で日常的・恒常的に支出している販売管理費(固定費)であり、今回のキャンセルによって新たに発生した損害とは認められないとしたためだ。

