新規進出の減少と既存拠点の整理
帝国データバンクの調査によると、2024年から2026年までに中国で現地法人や工場、駐在事務所などを新設した日本企業は1221社だった。
一方、拠点閉鎖などの「撤退・所在不明」は4137社に達した。ただし、「撤退・所在不明」には所在を確認できない企業も含まれ、4137社すべてが中国から完全撤退したわけではない。
それでも、新規進出を上回る規模で既存拠点の整理などが確認されていることは、中国における日本企業の事業展開を考えるうえで重要だ。既存事業を継続する企業の間でも、採算性の低い拠点の閉鎖や統合、生産機能の一部移転などを進める可能性もある。
JETROが実施した調査でも、今後1~2年の事業展開について「拡大」と回答した在中国日系企業は21.3%にとどまり、比較可能な2007年以降で最低水準となった。
一方、「現状維持」は64.3%で最も多く、「縮小」または「第三国・地域への移転・撤退」は14.4%だった。
これらの結果は、在中国日系企業の大半が一斉に撤退を目指しているわけではないことを示す。むしろ、既存事業を維持しながら新規投資には慎重になり、必要に応じて拠点や機能を再配置する姿勢が広がっていると考えられる。
中国市場の魅力は失われたのか
中国には依然として大きな消費市場があり、製造業の集積や部品の調達網、物流インフラなど、長年形成されてきた経済的基盤が存在する。
中国国内で販売する企業や現地の供給網を活用する企業にとって、拠点を維持することが競争上の利点になる場合もある。また、進出企業数の減少が、中国に残る企業の売上高や利益、投資額の同じ割合での減少を意味するわけではない。
企業数と事業規模は区別して考える必要があり、企業数だけで対中ビジネス全体の実態を判断することはできない。
日本企業の中国進出がピーク時から約3割減少した背景には、中国の経済環境や競争構造の変化、コスト上昇、米中対立、経済安全保障上の懸念、サプライチェーンの集中リスクなど、複数の要因がある。
かつては、中国の巨大市場や生産コスト、産業集積を活用することが海外事業拡大の有力な選択肢だった。
しかし現在は、事業上のメリットだけでなく、将来の規制変更や競争激化、特定地域への依存リスクまで考慮する必要性が高まっている。
今後の焦点は、中国から撤退するかどうかという二者択一ではない。
中国市場の魅力をどの程度評価し、どの事業に経営資源を配分し、どの機能を他地域に分散させるのかという問題である。
約3割という企業数の減少は、日本企業が中国進出を当然の成長戦略とみなす段階から、採算性とリスクを比較しながら進出・維持・縮小を選択する段階へ移りつつあることを示している。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】

