中国企業の競争力向上が収益を圧迫
中国企業との競争激化も重要な要因だ。
かつては日本企業が技術や品質面での優位性を生かして市場を開拓する余地が比較的大きかったが、現在は中国企業の技術開発力や生産能力が向上し、日本企業自身が厳しい競争に直面している。在中国日系企業の多くも、最大の競争相手を今日では中国企業と捉えている。
中国市場の成長は新たな事業機会を生む一方、価格競争や市場シェアの維持をめぐる課題も大きくしている。
競争力を保つには研究開発や人材育成、高付加価値製品への転換が必要だが、投資に見合う収益を確保できるとは限らない。他地域に経営資源を振り向ける判断も、企業にとって合理的な選択肢となる。
米中対立と経済安全保障の影響
米中対立の長期化に伴い、先端技術の輸出管理や関税、経済安全保障に関する政策が企業活動に影響を及ぼしている。
中国で事業を展開する日本企業は、中国国内の法制度だけでなく、日本や米国などの規制動向も考慮しなければならない場合がある。
先端技術や重要部品を扱う企業では、輸出管理や技術移転に関する規制の変更が、調達、生産、販売計画に影響する可能性がある。問題は、制裁などの重大な事態が実際に発生するかどうかだけではない。将来の規制や国際関係をどこまで予測できるかという、事業環境の予見可能性も重要となっている。
工場や研究開発施設への投資は、多額の資金を必要とし、回収にも時間がかかる。
中長期的な規制変更への不確実性が高まれば、新規投資を慎重に判断するのは自然な対応である。地政学リスクは全面撤退だけでなく、新規進出の抑制や投資計画の見直しを通じても、企業数の減少に影響し得る。
サプライチェーンの分散が重要に
日中関係の変化や台湾海峡をめぐる緊張など、企業自身では制御できない安全保障上の問題も、中長期的な事業計画に影響する。
ただし、日本企業の中国進出減少を日中関係の悪化だけで説明することはできない。採算性や現地競争、コスト構造なども企業の判断を左右するからだ。
重要なのは、特定の国や地域に生産・調達機能を集中させるリスクが、以前より強く意識されている点である。
中国には高度な製造業の集積がある一方、特定地域への依存度が高ければ、政治・経済環境の変化が事業全体に波及しかねない。
このため、中国から完全に撤退するのではなく、中国に加えてASEANなどにも生産拠点や調達先を確保するチャイナ・プラス・ワンが重要になっている。
機能を複数地域に分散させれば、一地域で問題が発生した場合にも事業を継続しやすくなる。
もっとも、拠点分散には追加投資や物流費、管理コストが伴う。すべての企業にとって移転が最適とは限らず、中国に残す機能と他地域に分散する機能を見極めることが課題となる。

