地震が起きた時、地盤によって建物などへの被害に大きな差が出ることをご存じでしょうか。地中のCTスキャンで地盤の揺れやすさを把握する富山県内初の調査が行われました。ライブBBT『命と未来をまもる』独占取材です。
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん(魚津市出身)
「奥に地震計、本体がある」
特殊な地震計が設置されたのは、富山市の中心市街地。
この調査を指揮したのが魚津市出身で、茨城県つくば市にある国の研究機関、防災科学技術研究所の先名重樹研究員です。
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん(魚津市出身)
「リアルタイムで取っている(揺れの)画面、交通振動とか自然の揺れ、人には感じない波(揺れ)、ダンプが通ると地面が揺れるのも含めて微動として取っている」
特殊な地震計で観測していたのは、常時微動と呼ばれるわずかな揺れ。
それは、地震が発生した時の地面の揺れとは異なり、車や電車が通ることで起こる振動のほか川や海などの自然現象で生じる揺れを指しています。
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん
「これ(常時微動)を測ることによって地盤の硬さ、柔らかさが分かる。地盤の硬さ、柔らかさを通して地表に地震動が出てくる。事前にその構造を知っておけば、地震動を予測できる」
硬い地盤と柔らかい地盤。
これは、固さが違うゼリーの実験映像です。
同じ揺れでも硬い緑色のゼリーと比べて柔らかい赤色のゼリーの方が揺れ幅が大きいことが分かります。
柔らかい地盤は軟弱地盤と呼ばれ、硬い地盤と比べて地震の揺れ、地震動を何倍にも増幅させる性質があるのです。
その結果、地盤によって地表に現れる揺れの大きさが異なり、建物などの被害の差につながります。
Q地盤によって地表の揺れが変わる?
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん
「大きく変わる、地盤を知らないと揺れの特徴は分からない。場所によっては50メートル違うだけで(地盤が)相当違ったりする」
おととしの能登半島地震で震度7を観測した輪島市。
地震の後、先名さんは市内82か所で調査を行い、地盤の揺れやすさを数値化しました。
倒壊し、2人が犠牲となったこのビルが建っていたのは…
紫色で示され、揺れの大きさが2.5倍以上の超軟弱地盤でした。
揺れを何倍にも増幅する地盤の脅威、250メートル四方で色分けするとこれだけの違いがあるのです。
そして、この調査で分かることがもう一つあります。
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん
「(地盤が)柔らかいと長い周期で揺れが大きくなる。(地盤が)硬いと短い周期でそこそこの揺れになる。建物にも高さ、硬さによって固有の周期がある。(建物の)周期が地盤の周期と合ってしまうと共振という現象が起こって非常に被害も大きくなる」
地盤にはそれぞれ固有の周期があり、その周期によって揺れ方に違いが生まれます。
同様に建物にも固有の周期があり、双方の周期が合致すると共振と呼ばれる現象により、建物の揺れがより大きくなります。
細かく揺れる地盤では比較的、小さな戸建て住宅が激しく揺れ、ゆったり大きく揺れる地盤では高層ビルが激しく揺れる。
これが地震被害に差が出るもう一つの脅威、共振です。
今年7月、10年ぶりに震度7の揺れに見舞われた熊本地震。
八代市で工場の煙突が倒れ、9人が犠牲となりました。
この煙突倒壊の要因こそ、高い建物を大きく揺らす周期と地盤の周期が合致した共振によるものと見て、調査が進められています。
現在、県は、市町村を含めた防災対策の基準となる被害想定の見直しを進めています。
ワーキンググループの座長を務める京都大学名誉教授の川崎一朗さんは、今回、初めて行われた調査をこのように評価しています。
*県防災会議 地震・津波調査検討ワーキンググループ座長 川崎一朗さん
「地震の時、どれだけ揺れるか、特に大きな要素は地盤の浅いところの構造。どれだけ軟弱か、しっかりしているかで大きく左右される。常時微動の観測は被害想定にとって非常に重要な基礎的資料」
調査は、富山市を皮切りに県内すべての市町村あわせて1170地点で行われました。
先名さんは現在、観測データの解析を進めていて結果は、来年、公表される見通しです。
*防災科学技術研究所主任専門研究員 先名重樹さん(魚津市出身)
「CTスキャンと思っていただければ。硬い、柔らかい、どういうものがあるか推定する方法がこの微動アレイ(複数の地震計で観測)。しっかり調べることで防災対策につなげていただこう」
地盤の揺れの特性は一般的なボーリング調査では分からないということで、先進的な住宅メーカーは新築前に常時微動を調べ、揺れが増幅される地盤と分かった場合は耐震性能を上げるなど対策を強化しているそうです。
地盤によって地震の被害に差が出る要因、私たちも日頃の備えの一環として知っておく必要があります。
