東北6県の気象業務を統括する仙台管区気象台が、10月1日に創立100年を迎えました。この100年で進化を遂げた気象業務と、気象台の今後のビジョンを聞きました。
宮城県東松島市・野蒜。ここに、気象業務の原点があります。
平野貴久気象予報士
「こちらですね。野蒜測候所跡。宮城県および東北地方の気象観測は、ここから始まったとされています」
1881年に設置された「野蒜測候所」。東北地方で初めて気象観測を行った測候所です。
実は当初、測候所は、仙台に設置される予定でしたが、野蒜に近代的な港を造る計画が持ち上がり、急遽、野蒜に変更されたそうです。しかし、難航する工事に、台風の直撃も相まって、この計画は頓挫してしまいます。
当初の目的を失った野蒜測候所は、設置から6年余りで石巻に移転。その後、都市部に測候所を設置する機運が高まり、1926年10月1日、「宮城県立石巻測候所仙台出張所」として、仙台管区気象台が誕生しました。
設立当時は、わずか4人の職員で、気象や地震の観測を行っていたといいます。
仙台管区気象台観測整備課 毛利光志調査官
「気圧、気温、湿度、風向風速…回数は、1日6回観測をしていたようです。昔はコンピューターなどありませんでしたので、すべて人が目で見て観測をしていました」
こちらは、「毛髪湿度計」と呼ばれる観測機器です。当時は、人の髪の毛を使って湿度を観測していました。
仙台管区気象台観測整備課 毛利光志調査官
「毛髪の伸び縮み、これによって、こちらのアームが上下して、ペン先が記録紙の方に記録していくというものになっています。西洋の方の毛髪がよかったと記録されていまして、当時は輸入をしていたようです」
観測は、時代とともに進化していきます。
1942年には、「ラジオゾンデ」と呼ばれる無線付きの装置を用いた、上空の気象観測を開始。この観測は、仙台では2008年まで続けられました。
現在は、電波で上空の風を観測する「ウインドプロファイラ」という装置がその役割の一端を担っています。
1974年には、電話回線でデータを集約する、「地域気象観測システム」通称「アメダス」の運用を開始。観測は、徐々に自動化されていきます。
平野貴久気象予報士
「気象台がある仙台第3合同庁舎。この建物でひと際目を引くのが、あちらの丸い物体。あの中には、気象レーダーが取り付けられています」
電波を発射し、雨や雪の強さを観測する「気象レーダー」。現在は、ほぼリアルタイムでデータが得られますが、運用開始当時は、手間のかかる作業が必要でした。
仙台管区気象台観測整備課 毛利光志調査官
「コンピューター処理はされていなくて、人が手でエコー(雨雲)を写し取っていたという観測を行っていました。当時は準備から始めてだいたい1時間くらいかかっていたようです」
予報も進化しています。こちらは、天気予報の作成や警報の発信などを行う「予報現業室」です。
仙台管区気象台予報課 山中力主任予報官
「今は、観測データをスーパーコンピューターで処理をして予測を立てている。コンピューターで予測をして、最終的には予報官が決定をするという流れで行っています」
しかし、昔は…
仙台管区気象台予報課 山中力主任予報官
「ここに写真があるんですけど、これが昭和50年ごろの…」
平野貴久気象予報士
「全然違いますね。モニターがなくて、アナログという感じがしますね」
仙台管区気象台予報課 山中力主任予報官
「当時の予報としては、予報官が紙に天気図を描いたりして、予報を考えていたという時代になります。得られる情報も今と比べたら全然少なかったでしょうし、予報官の経験とか、そういったあたりで予報を発表していたのかなと思います」
この100年で進化を遂げた気象業務ですが、設立当時から変わらないのが、地域を災害から守る「地域防災」の理念です。その最初の大きな功績は、1941年までさかのぼります。
昔から、津波被害に度々見舞われてきた三陸沿岸に対し、津波予報を実施する「三陸津波警報組織」を発足。後にこの組織は全国へと広がり、津波警報体制が確立するきっかけとなりました。
また、今では当たり前となった、3カ月予報などの「長期予報」。これも元々は、東北地方を冷害から守ることを目的に始められたものでした。
形は変えながらも、気象台では今後も防災に軸足を置いた取り組みを、進めていきたいとしています。
仙台管区気象台 菅野智之台長
「より高度な、精度の高い予測・警報を発表していくということ。それを今度は、受け手の皆様が着実に自分の避難行動、防災行動に活用していただけるような社会を、関係機関の皆様、市町村をはじめとするところと一緒に作り上げていく。それが気象台に課せられた役割かなと思っております」
今年は最高気温が40℃以上の日をさす酷暑日という言葉が生まれたり、全国的に大雨災害も頻発。気象災害が激甚化する中で、情報の重要性はますます高まっていきます。
