特殊詐欺の実態を知ることが、被害を防ぐことにもつながります。
9月、タイで日本人を狙った特殊詐欺グループが摘発され、宮城県警の警察官を装うための、ニセの制服やバッジが押収されました。さらに、県民の個人情報が細かく記された「闇名簿」も新たに見つかりました。AIを使って、より手口は巧妙化しています。
記者リポート
「こちらが摘発された詐欺拠点です。まるで城のような豪邸となっています」
9月、タイの首都バンコクで摘発されたのは、あまりにも豪華すぎる詐欺拠点でした。
豊富な資金源があったのか、豪邸の家賃は、日本円でおよそ月400万円にも上ります。
タイの警察当局は、日本人4人を含む男女14人を拘束しました。
アジトからは、警察官の制服のようなものが見つかりました。よく見ると、宮城県警のロゴを模したワッペンが貼られています。
さらに今回、ワッペンだけでなく、宮城県警と書かれた「バッジ」も多数押収されていたことが新たにわかりました。
記者リポート
「宮城との接点が次々と見つかったバンコクの豪邸です。取材を進めると、AIまで使った巧妙な手口が見えてきました」
一見すると、ただの戸棚…。しかし扉を押してみると、奥には「隠し部屋」がありました。ずらりと並んでいるのは、日本へ詐欺電話をかけていたとみられる小部屋です。
押収されたパソコンには、別人になりすますための「AIソフト」が入っていました。
記者リポート
「こちらのAIソフトを使うと、画面に映る自分の顔を変えることができます」
顔を動かしても、表情はほぼそのままついてきます。
タイ警察 パーヌワットさん
「日本人のかけ子はこれまで音声電話でだますのが主流でしたが、詐欺グループがAIを導入したことで、その手口は巧妙化しています」
さらに、押収されたのが、この「闇名簿」です。日本人600人を超える氏名や生年月日、電話番号、住所などが記されています。仙台市や石巻市など、宮城県内の住所も数多く含まれていました。
さらに別のリストには、家族構成や預金残高、普段の予定まで詳細に書き込まれていました。「鍵をかけずに出かける時がある」「金曜日は太陽光パネルの修理」これらは全て、通話の中で聞き出したとみられます。
押収された「マニュアル」からは、巧妙な手口の一端が見えてきました。
まず、日本郵便を名乗る人物から電話がかかってきます。「あなた名義の荷物から他人のキャッシュカードが見つかった」と伝え、不安をあおります。
次に、ニセの警察官が登場。「事件に関わっている」と告げ、ビデオ通話で身分証を確認します。今度は警察本部との無線演出まで加え、「このままだと逮捕状が出る」「誰にも話してはいけない」と相手を追い込んでいきます。
実際、被害者に誰にも相談させないための書類まで用意されていました。勝手に名前を使われた形の宮城県警は、警戒を強めています。
県警本部 竹内章了特殊詐欺対策室長
「(ニセ警察詐欺で)特徴的なのは、複数の犯人が役割を分けて登場する『劇場型』という点です。最初にカード会社を名乗る者、次に警察官、さらに検察官を名乗る者など次々と役割を変えて複数人が出てくることで不安をあおり、本当の捜査だと信じ込ませるのが特徴です」
警察は「警察が一般企業や検察官などと連携して連絡を取ることはない」としています。
「ニセ警察詐欺」は今年、8月末までに県内で94件発生し、被害額はおよそ8億円に上っています。手口が巧妙化する一方、警察は「見破るポイントはこれまでと変わらない」としています。
県警本部 竹内章了特殊詐欺対策室長
「基本的な見抜くポイントとしては警察官がビデオ通話で連絡を取ることない。さらに、お金を要求することもございません。ビデオ通話で制服姿の警察官が登場したら、絶対に詐欺だと考えてください」
作り込まれた台本をもとに、足を運ぶのが難しい遠方の警察を名乗り、ビデオ通話へ誘導するのも「ニセ警察詐欺」の特徴です。
今回の摘発をめぐっては、10月5日、警察庁の関係者がタイの入管警察本部を訪れました。
記者リポート
「日本の警察庁の関係者が、タイ当局との情報共有を終えて、今出てきました」
国境を越え、宮城も標的となる特殊詐欺。手口を知り、警戒することが重要です。
宮城県内では今年、特殊詐欺の被害額が30億円に上っています。ターゲットになりやすいのは「高齢の方」や、「固定電話」などのイメージがあるかもしれませんが、年代を問わず、巻き込まれる恐れがあるとして、県警は改めて警鐘を鳴らします。
今回の特殊詐欺に関する県警担当者への取材中、記者の携帯電話にかかってきたのは…
記者リポート
「(取材の最中)私のスマートフォンには(+1)から始まる番号からの着信がありました。国際電話を利用した特殊詐欺の電話とみられます」
詐欺電話の7割で国際電話が使用されているといいます。※SNS型除く令和7年・全国
また、「ニセ警察詐欺」では被害者の半数が、64歳以下の現役世代で、いまや高齢者だけではなく幅広い世代に被害が広がっています。※今年1月から8月末
県警本部 竹内章了特殊詐欺対策室長
「だましの手口はますます巧妙化しているので(詐欺)電話に出ればだまされるものとまず考えていただきたい」
警察庁では国際電話のブロック機能や発信元が表示されるアプリケーションのダウンロードを推奨しています。
県警は、このアプリのダウンロード手順を公式YouTubeチャンネルで紹介するなど、対策の浸透を図っています。
また、固定電話には、呼び出し音がなる前に“警告メッセージ”が流れ、通話内容を録音する「撃退装置」の購入費の補助も行っています。
一方で、被害に遭うだけでなく、闇バイトなどを通じ、加害者側で巻き込まれるケースにも、注意が必要です。
県警本部 竹内章了特殊詐欺対策室長
「楽して稼げるという言葉の裏には、犯罪を犯して逮捕されたり、犯人グループに監禁されて拷問を受けたりするなど、人生を失うリスクを伴うので、絶対にそうした誘いに乗らないでください」
被害に遭うだけでなく、SNSを通じた闇バイトなどで、私たちの生活にしのび寄る特殊詐欺。手口を知っておくことが、自分自身や、身の周りの人を守ることにつながります。
