全国に約4300万人いるとされる高血圧の患者。しかし、そのうち約1400万人は、自分が高血圧だと自覚がないという。症状がないまま突然、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすことから「サイレントキラー」とも呼ばれる高血圧。福井県済生会病院健診センター所長で循環器内科の前野孝治医師に、見逃しやすい理由と対策を聞いた。
「症状がないから大丈夫」が最大の落とし穴
高血圧が厄介なのは、無症状なこと。前野医師は「血圧が上がっても、なかなか症状が出ないし、まったく症状がない方がほとんど」と説明する。自覚症状がないまま血管への負担が静かに積み重なり、ある日突然、脳卒中や心臓発作として表れる恐れがある。
年を取れば血圧は上がるので、高齢なら仕方がない、と思っている人は少なくないかもしれないが、前野医師はこれを否定する。
現在、高血圧治療における血圧の目標値は、上が130・下が80とされており、「若い人も高齢者も一緒」だという。
「高齢の方もしっかり血圧を下げた方が、病気が減る」と前野医師。年齢を理由に血圧管理を諦めるのではなく「高齢者も頑張って血圧を下げることに挑戦してもらいたい」という。
血管が収縮、汗をかかない冬場は特に注意
さらに、寒くなる季節は特に注意が必要だ。寒さを感じると、体は熱を逃がさないよう血管を収縮させるため、血圧が上がりやすくなる。
塩分の過剰摂取も、冬場は注意が必要だ。夏場は汗をかくことで自然に体内の塩分が排出される。しかし冬は汗をかきにくいため、夏と同じ食事を続けていると塩分が体内に蓄積し、血圧上昇につながるという。
朝起きた直後や、脱衣所・浴室・トイレといった温度差が大きい場所も要注意だ。急激な温度変化が血圧を大きく変動させる引き金になる。
日々の積み重ねが大きな結果に
高血圧の予防において、食生活の見直しは基本中の基本。日本食は食塩を多く含むものが多いが、日頃の生活のなかで「食塩の量を少し減らすだけでも違う」とされている。
大幅な食事制限でなくとも、意識的な減塩が積み重なれば、血圧への影響は小さくない。
予防のためには、自宅で手軽にできる運動を取り入れることも大切。ウォーキングよりやや速いペースの足踏みを1日30秒行ったり、足を肩幅に開いてかかとをゆっくり上げ下ろすのを1日10〜20回繰り返したりするのが効果的だという。
前野医師が特に訴えるのが、家庭での定期的な血圧測定だ。「一家に一台、必ず血圧計を置いて」と呼びかけ、日常的に測ることの重要性を強調する。測っていなければ、異常に気づくことすらできない。血圧は体調を知るバロメーターでもある。
サイレントキラーに気づくための第一歩は、まず「自分の血圧を知る」こと。さらに、日々の食事を少しだけ改善し、運動を取り入れることで、予防につなげよう。

