10月からの大阪府の最低賃金は1231円となる。
関西各地でも50円以上の引き上げが予定されているが、取材で見えてきたのは光と影。
パートで働く人々の家計を後押しする一方、給料を支払う企業側には深刻なしわ寄せが及んでいる。
人件費などのコスト上昇を価格に転嫁できている企業は全体の4割以下にとどまり、機械化や人員削減という選択を迫られる現場も出てきている。
■アルバイトの時給はいくらでした?
そもそもみなさんはアルバイトの時給はいくらだっただろうか?
30代・ファストフード:800円ぐらい、ミスタードーナツ。高校生で働こうと思ったらチェーン店しかなかった。マクドかミスドかみたいな。
80代・配達:しとったよ。最初は1万円だった。20歳ぐらいの時働いたから1万円や!最初の時給はね!ちゃうちゃう月給月給!
40代・ジェラート店:スタートが780円とかで、だんだんちょっとずつ上がってきて820~830円とかだった気がする。
30代・居酒屋:居酒屋のバイトとか、めっちゃ大変でした。酔っぱらったおじさんの相手したりとか。900円あったかな。(Q.時給900円はつり合って釣り合ってました?)釣り合ってないです。いまの若者たちがうらやましい。
60代:500円以上やったと思うわ。喫茶店のウェイター。なんべんもこぼした。よう高校生の女の子もくるやんか。ほんな“めくばせ”するねん。なつかしいな。

■最低賃金の変遷 20年で約1.7倍に
全国の最低賃金は2005年度に668円だったが、20年でおよそ1.7倍となり、去年度は1121円まで上昇した。
政府が2023年に全国平均1500円の目標を掲げて以降、毎年50円前後という異例の引き上げが続いている。
今回の改定では近畿2府4県と徳島でも、10月以降で平均およそ56円アップ。大阪府は東京・神奈川に続いて1200円台に乗ることになる。大阪府の吉村洋文知事はこう述べている。
大阪府 吉村洋文知事:最低賃金の引上げには賛成です。中小企業にとっての経営努力も必要になってきます。いま物価が上がり、様々なものが上がっていく中で、給料も上げていく社会を目指すべきだと。今はその時期にある。

■パートで働く76歳 「初めて1200円台」
最低賃金の引き上げの恩恵を直接受けるのが、パートタイムで働く人々だ。
大阪のスーパーで15年間働く奥本美知子さん(76)は、週に6日出勤し、鮮魚コーナーで盛り付けや品出しなどを担当している。
雨の中でも「もう慣れてますので」と話す奥本さんの現在の時給は1190円。10月からは1240円に引き上げられる。
奥本美知子さん(76):1240円に(上がる)。
1200円台は初めてだという奥本さん。1日3時間ほど働いているため、月におよそ4000円の給料アップになる。
奥本美知子さん(76):やっぱりうれしいです」(Q.贅沢できそう?)「ちょっと贅沢できる?そうやね!
思わず笑みがこぼれるほど、パートタイムで働く人にとっては歓迎すべき変化だ。

■企業側のしわ寄せ 価格転嫁できているのは4割以下
一方で、給料を支払う側からは、切実な声が…。
フレッシュマーケットアオイ 内田寿仁社長:最低賃金が50円上がるだけで、1000万円以上の負担になるので経営的には厳しい。『人件費も上がる』、『得られる利益もちょっとずつ減る』、営業利益はマイナス傾向が続いている。

多くの野球ファンが集まる大阪・天満の居酒屋「三冠王」でも、10月からアルバイトの時給を50円ほど引き上げるが、その分を商品価格に転嫁することには慎重になっている。
野球居酒屋三冠王 辻西陽平オーナー:価格競争が結構激しいので、ウチだけ価格を上げる勇気はないです。
「三冠王」では3年前の開店時からビール1杯450円の価格を維持してきた。辻西オーナーは約20年前との比較でこう語る。
野球居酒屋三冠王 辻西陽平オーナー:当時は時給800円前後で生ビールの値段が500円前後だったのが、今は時給は1200円程になってもビールの値段は500円前後。バイトに早上がりしてもらうとか、工夫をしていかないといけないかなと思います。
帝国データバンクによると、人件費などのコスト上昇を価格に転嫁できている企業は全体の4割以下にとどまっており、多くが値上げができていない現実が浮かび上がっている。

■配膳ロボットが担う深夜シフト 時給換算で94円
人件費の高騰への対応として、”人を減らす”という選択をした店舗もある。
兵庫県朝来市にあるラーメン店では、コロナ禍を機に特に時給が高い深夜帯のスタッフを1人削減し、代わりに配膳ロボットを導入した。
午後8時をすぎると、夕食時間帯にもかかわらず従業員が1人退勤。ホール担当が1人になる時間帯を、ロボットが自動で商品を客の元まで届けることでカバーしている。
らーめん格別ヤ和田山店 中村千春さん:22時以降は人件費も上げるので、アルバイトを雇うよりも、配膳ロボットに動いてもらった方が店舗としては助かる。
販売会社によると、このロボットの利用料は5年のリース契約で月々3万4100円。1日12時間、30日稼働させると、時給はたったの94円という計算になる。
利用しているラーメン店では月に5〜6万円の人件費削減につながっているという。
1杯1000円を超えると敬遠されると言われるラーメン業界で、同店は看板メニューを800円台に保っている。

■専門家が指摘する“急激な引き上げ”のリスク
こうした動きについて機械振興協会経済研究所の森川正之所長は「珍しくない」と話す。
機械振興協会経済研究所 森川正之所長:ロボットだけではない。例えばタッチパネルで注文する仕組みにする(などもある)。
(スタンフォード大学研究によると)最低賃金が上がると、ロボットの採用確率が高くなることを示した実証研究があって、”最低賃金が10%高くなると、ロボットをその会社が使う確率が8%ぐらい高くなる”。
そういう研究もあるので、世界的に最低賃金上がると、ロボットに置き換えるという動きはある。
その上で森川所長は、「急激な引き上げは、倒産や雇用喪失を招きかねない」と指摘する。
最低賃金をめぐる光と影。
雇う側と雇われる側、どちらも納得できる形は実現するのだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月29日放送)


