指定難病の患者が医療費助成を受けるための更新手続きで、マイナ保険証への移行後も紙の書類提出が求められ、患者や家族から戸惑いの声が上がっている。2026年9月28日の石川県議会でこの問題が指摘された。従来の保険証が廃止されたにもかかわらず、マイナ保険証だけでは手続きができず、改めて資格確認書などの取得を求められるケースが発生。「本末転倒だ」との批判も出る中、石川県の対応と、隣県や国の指針との間に食い違いも見えてきた。
マイナ保険証なのに「紙の書類を」 なぜ

指定難病の患者が医療費の助成を受けるために必要な「受給者証」。年に1回の更新手続きをめぐり、マイナ保険証への移行後も紙の書類提出が求められ、患者や家族の間で混乱が広がっていることが分かった。

この問題は、9月28日に開かれた石川県議会の厚生文教委員会で、会派「未来石川」の吉田修委員が取り上げたものだ。指定難病の患者が医療費の助成を受けるためには、保健福祉センターなどで受給者証を申請し、年に1回、更新の手続きが必要となる。

申請を行う保健所などでは、窓口にマイナンバーカードを読み取るリーダーが設置されていない。更新の際には加入している医療保険の確認書類が必要で、これまでは健康保険証のコピーなどで手続きが行われていた。しかし、2025年12月に従来の健康保険証が廃止されたことで、現在は資格確認書や、マイナポータルから印刷した資格情報の提出が求められているという。
「本末転倒だ」マイナ保険証だけでは手続きできず
吉田委員は、難病患者の家族から寄せられたという相談内容を紹介した。その家族は、マイナ保険証だけでは手続きができず、改めて資格確認書の取得を求められたという。
この状況に、吉田委員は「役所に何回も行ったり来たり、市役所で紙のカードをもう1度発行してください、改めて送りますと説明をしなきゃいけなくなっていることすら私は本末転倒じゃないかなと思っている」と、手続きの煩雑化を強く批判した。

デジタル化によって利便性が向上するはずのマイナンバーカードが、かえって利用者の負担を増やす結果となっている。患者やその家族にとっては、ただでさえ大変な闘病生活に加え、煩わしい行政手続きのために何度も役所を往復しなければならないという二重の苦しみを強いられているのが現状だ。
県の答弁「国のルールになっている」

吉田委員の指摘に対し、石川県の塗師亜紀子健康福祉部長は「委員ご指摘の通りマイナ保険証をお持ちの場合でも紙の健康保険の資格確認書をご提示いただく、国のルールになっている」と答弁した。

県としては、国の定めたルールに則って運用しているという立場を崩さなかった。しかし、そのルールが結果として県民に大きな負担をかけている実態が浮き彫りとなった形だ。県は今後、国に対して「患者の負担軽減につながるよう要望していきたい」と述べるにとどまった。
隣県では「画面見せるだけ」 国の指針とも食い違い?
石川県の「国のルール」という説明には、疑問点も浮かび上がる。石川テレビが隣接する富山県と福井県の手続きについて調査したところ、マイナポータルの資格情報画面を窓口で見せるだけで手続きが完了することが分かった。

さらに、厚生労働省の案内でも、特定の条件を満たせば物理的な書類の提出は省略可能とされている。このことから、石川県の運用が他県と比較して硬直的である可能性や、「国のルール」の解釈に自治体間で差が生じている可能性が示唆される。なぜ石川県では、患者の負担となる紙の書類提出を必須としているのか、明確な説明が求められる。
デジタル化の恩恵はどこへ? 置き去りにされる患者たち

マイナ保険証への移行は、行政手続きの効率化や国民の利便性向上を目的として進められてきたはずだ。しかし、今回明らかになった指定難病患者の更新手続きをめぐる混乱は、その理念とは逆行する事態と言える。
従来の保険証が廃止されたにもかかわらず、その代替となるべきマイナ保険証が単体では機能せず、結局は「紙の書類」が必要になるというのでは、何のためのデジタル化なのかという根本的な疑問が湧く。特に、支援を必要とする難病患者やその家族に、さらなる負担を強いる現在の運用は早急に見直されるべきだ。富山県や福井県のように、マイナポータルの画面提示で手続きを可能にするなど、利用者の負担を軽減するための柔軟な対応が石川県にも求められている。県が表明した国への要望が、一日も早く現場の改善につながることが期待される。
(石川テレビ・9月28日放送)
