能登半島地震から2年9カ月。地震発生当時、住まいを失った人々が不動産店に殺到し、地域の賃貸物件が消えた。この未曾有の事態に「ぞっとした」と語るのは、石川県かほく市に本社を置くサンリー・ホールディングスの小林和晃社長だ。同社は被災者支援を強化し、復興住宅の提供や能登と避難者をつなぐ新拠点を設立。「なんかあったらサンリー」を合言葉に、地域に根ざした企業の挑戦を追った。
能登地震が変えた不動産会社の使命と復興への覚悟

木のぬくもりを感じさせる、コンパクトな平屋。これは、被災者向けに開発された「いしかわ型復興住宅」のモデルハウスだ。これを手がけたのは、石川県かほく市に本社を構えるサンリー・ホールディングスである。
創業9年の同社は、もともと不動産賃貸の「サンリーホーム」としてスタートした。

「最初は賃貸からスタートしたんですけど、そこからお客様の要望が増えていき、売買、一戸建ての売り買いとか土地を扱うようになった」と、小林和晃社長は振り返る。かほく市周辺では広い土地が多かったことから、遊休地の活用や宅地造成、建売事業にも進出。結果として、不動産事業のあらゆる分野を網羅する企業へと成長した。そんな同社にとって、大きな転換点となったのが能登半島地震だった。
「うれしくない、ぞっとした」地震直後の大行列
津波が多くの建物を流し、各地に甚大な被害をもたらした能登半島地震。サンリー・ホールディングスが年明けの4日に営業を再開すると、店の前にはこれまでにない光景が広がっていた。オープン前からできた大行列。しかし、小林社長はその光景を「うれしくないんです、ぞっとしまして」と表現する。

「これは一大事だと。雨さえしのげればいいと、とりあえず住むところがないというところで、古いところでも求める方がいた」。その切迫した状況は、わずか1、2カ月でエリアの不動産がなくなるという事態を引き起こした。

この状況を受け、サンリー・ホールディングスは従業員を増やし、被災者へのサポート体制を強化。特に賃貸物件の不足が今なお続く羽咋市以北では、古いアパートのリフォームやリノベーションを積極的に進めている。
被災者と能登をつなぐ「金沢の窓口」

地震をきっかけに、多くの人々が拠点を金沢市内や県外へ移さざるを得なかった。故郷・能登とのつながりが薄れゆく中、サンリー・ホールディングスは新たな一手を打つ。今年7月、金沢市鞍月に「サンリーの家 金沢県庁」をオープンさせたのだ。

この拠点の役割は、金沢や県外へ移った人々と能登をつなぐ窓口となることだ。賃貸から注文住宅、リフォームといった住まいに関する幅広い相談を一つの場所で受け付けることで、被災者が抱える多様な悩みにワンストップで対応する。

小林社長は「やっと職とか住まいが落ち着いた方がほとんどなので、新築で建てるかリフォームするか、そういった方が増えている」と、被災者のニーズの変化を語る。生活が落ち着き始め、次のステップを考え始めた人々のために、あらゆる選択肢を提示できる土台を整えた形だ。
復興の新たな選択肢「いしかわ型復興住宅」

新築を検討する被災者に向けて、同社は地震に強く、低コストで建設できる「いしかわ型復興住宅」のモデルプランも手がけている。この住宅には、地震の揺れを制御する装置が取り入れられているほか、デザインにも被災者の暮らしに寄り添う工夫が凝らされている。

建築プランナーの山本裕将係長は「単身・夫婦世帯が対象ということで比較的コンパクトな平屋になっているんですけれども、空間の広がりを強調したいということで内部は勾配天井を採用しています」と説明する。顧客には高齢者も多く、階段の上り下りが負担になることから、平屋の需要は大きいという。コンパクトながらも開放感のある空間は、被災した人々の心に安らぎを与えることを目指している。
能登半島地震から2年半あまり、生活の基盤である「住まい」を失った人々をサポートしてきたサンリー・ホールディングス。その視線は、能登の未来へと向けられている。
「能登のどこまでも」地域に根ざす企業の使命

今後、能登の復興に向けてどのようなビジョンを描いているのか。小林社長の答えは明確だ。「継続的な、永続的なサポートができるようにしたい。能登といっても輪島、珠洲だったり、そこまで行ける会社であり続けたい」。

多くの会社が仕事を引き受けるのをためらう能登の奥地。そこを自社がすくい上げ、「珠洲までどこまでもいけるぞ」という気概を示す。目指すのは、「なんかあったらサンリー」「なんかわからんけどサンリー」と、地域の人々から真っ先に頼られる存在だ。

かほく市にルーツがある会社だからこそ、その思いは強い。一人ひとりのニーズに応える「住まい」の提供を通じて、復興を後押ししていく。小林社長が目指すのは、ただ家を建てることではない。能登で暮らす人々の生活と未来を、永続的に支え続けることである。
(石川テレビ・9月25日放送)
