マイページ
AIがおばあちゃんの人生を歌に 鹿児島・錦江町"老謡"プロジェクトに涙「お墓でも仏壇でも残せなかった記憶が…」|FNNプライムオンライン
こんなニュースも、ありました。

AIがおばあちゃんの人生を歌に 鹿児島・錦江町"老謡"プロジェクトに涙「お墓でも仏壇でも残せなかった記憶が…」

Google ニュース プリファードソース

「ばあちゃんはね、70歳の今が一番楽しいの」——そんな一節が歌詞に刻まれた曲を、AIが作った。鹿児島県錦江町で始まった「老謡」プロジェクトは、地域のお年寄りたちの人生をまるごと1曲の歌にし、子や孫へ遺すという試みだ。笑いあり、涙あり、ちょっとした教訓まで盛り込まれたその歌は、お墓や仏壇には収まりきらなかった"記憶"を、音楽というかたちで未来へつなぐ。

「老謡」とは何か——童謡ならぬ、老いの歌

錦江町にある地域活性化センター神川に、次々と人が集まってきた。この日披露されるのは、町内に住む70代〜80代の女性6人の人生を歌にした「老謡」だ。「童謡」をもじって名付けられたこの言葉には、死んだ後も子や孫に笑って思い出してほしいという願いが込められている。

地域活性化センター神川(錦江町)
地域活性化センター神川(錦江町)
この記事の画像(10枚)

企画したのは中村修治さん。故人を思い出す機会として、「お墓や仏壇では限界がある。だったら歌がある。歌がずっと残ればおじいちゃん・おばあちゃんのことを思い出す」と語る。歌という媒体が持つ力——繰り返し聴け、口ずさめ、記憶と結びつく——を、新しい終活に活かそうという発想だ。

作曲も歌声もAIが担当

この老謡を実際に制作したのは、福岡を拠点とするIT企業「いろいろ」だ。錦江町の知人の提案を受け、今回6人分の楽曲を手がけた。

制作の流れはこうだ。まず中村さんが対面でインタビューを行い、人の手で歌詞を作成する。そのうえで「手をたたける曲」「演歌調」などの方向性をAIに指示すると、希望に沿った楽曲が生成される。さらに歌い上げるボーカルもAIが担う。

著作権面への配慮も怠らない。同社の小林弘輝マネージャーは「著作権のチェックをするために他のAIを使い、問題がないか類似曲がないかチェックをして、問題がなかったら出す」と説明する。最先端の技術を重ね合わせることで、唯一無二の一曲を生み出す仕組みだ。

IT企業「いろいろ」の 小林弘輝マネージャー
IT企業「いろいろ」の 小林弘輝マネージャー

「釣った魚に餌はやらん」——70歳の教訓ソング

お披露目会の最初を飾ったのは、70歳の水流和代さんの曲だ。テーマは新婚2カ月で夫から言われた衝撃の一言。タイトルは【釣られた魚の唄】。

♪「『あんたずいぶん変わったね』笑ってあなたに言ったらさぁ・・・『釣った魚に餌はやらん』あの日の言葉は忘れない」

老謡を楽しむ 水流和代さん(70歳)
老謡を楽しむ 水流和代さん(70歳)

歌は孫へのメッセージへと続く。

♪「釣った魚に餌はやらん。そんな男もいるけれど、餌を待っている女じゃなくて自分で海へ泳ぎなさい」

そして最後は「ばあちゃんはね、70歳の今が一番楽しいの」という言葉で締めくくられる。水流さんは「しゃべっていたらあんな歌になった。会話の流れです。楽しかった。夫婦生活は。面白い旦那だった。まだ生きているけど」と笑顔で話した。

ガソリンスタンドで44年、街を見守ってきた女性の涙

続いて披露されたのは、ガソリンスタンドに立ち続けてきた74歳の女性の歌【おかしいだけじゃないんだよ。】だ。

♪「小学生だったあの子が免許を取って給油に来た。そのうち子供を連れてきて」「あなた、どこの子だったっけ?名前を聞いてああ!と笑った」

涙があふれる 馬場みよ子さん(74歳)
涙があふれる 馬場みよ子さん(74歳)

錦江町に嫁いでから44年。地域の人々の成長を間近で見守ってきた日々が、わずか数分の歌にギュッと詰め込まれた。その歌を聞いた女性の目から、自然と涙があふれた。

「シゲちゃんはイケメンが好き」——87歳の純恋歌

お披露目会のラストを飾ったのは、酒屋の店主・迫シゲ子さん(87)の曲【イケメン純恋歌】だ。

♪「シゲちゃんはイケメンが好き。昔も今でもイケメンが好き。理屈じゃないのよ、顔なのよ。いい男ならすぐわかる」

酒屋の店主・迫シゲ子さん(87)
酒屋の店主・迫シゲ子さん(87)

シゲ子さんはご満悦の様子で、「一番自分の旦那がイケメンでした」と言い切った。人生で出会った男性の中で最高のイケメンとは、夫の満喜さん(享年82)だという。

夫の満喜さん(享年82)の写真を眺める 迫シゲ子さん(87) 
夫の満喜さん(享年82)の写真を眺める 迫シゲ子さん(87) 

シゲ子さんの孫・泰地さんは「おばあちゃんがイケメン好きとは知らなくて、きょう知った。感動して一生孫7人で大事にしていきたい曲」と目を細めた。87歳になった今も店番を続けるシゲ子さんは、できあがった曲を店内でも流すつもりだという。

歌は、お墓よりも遠くへ届く

今回誕生した曲は、スマートフォンなどで簡単に聴くことができる。場所を選ばず、何度でも再生できる。それはつまり、故人の声と笑いが、いつでもどこでも子や孫のそばにあり続けるということだ。

AIという最先端技術が、地域のお年寄りたちの"生きた言葉"を掬い上げ、歌として残す。老謡というプロジェクトは、終活の概念をひっそりと、しかし確実に塗り替えつつある。鹿児島県錦江町で大好評だったこの試みが、やがて日本全国の「おじいちゃん・おばあちゃんの物語」を音楽へと変えていく日が来るかもしれない。

【動画で見る▶「釣った魚に餌はやらん」孫への教訓も…AIがお年寄りの人生を1曲に 鹿児島・錦江町「老謡」プロジェクト】

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。

  • 1
  • 2
関連記事
【よく一緒に読まれている記事】
【台風26号】奄美で最大4mの高波 今後の進路予想 沖縄・奄美・関東への影響は 気象庁は海上しけに注意呼びかけ
【台風26号】奄美で最大4mの高波 今後の進路予想 沖縄・奄美・関東への影響は 気象庁は海上しけに注意呼びかけ
こんなニュースも、ありました。の他の記事
電子投票、鹿児島で初導入へ 阿久根市議会が条例改正を可決 来年12月の市長選から実施
電子投票、鹿児島で初導入へ 阿久根市議会が条例改正を可決 来年12月の市長選から実施
政治
JAXA、鹿児島・肝付町にパラボラアンテナ新設へ 小惑星探査機や科学衛星の電波を送受信 2032年度完成目指す
JAXA、鹿児島・肝付町にパラボラアンテナ新設へ 小惑星探査機や科学衛星の電波を送受信 2032年度完成目指す
都道府県
アメリカ産ジャガイモ輸入解禁、手続き最終段階へ 病害虫・価格影響の懸念広がる 鹿児島県知事が国への要請を表明
アメリカ産ジャガイモ輸入解禁、手続き最終段階へ 病害虫・価格影響の懸念広がる 鹿児島県知事が国への要請を表明
都道府県
火星の衛星から砂や岩石を持ち帰る
火星の衛星から砂や岩石を持ち帰る"世界初ミッション" JAXAが相模原の管制室を初公開、10月20日打ち上げへ
経済
一覧ページへ
×