「犬を飼っている高齢者は、飼育経験がない人と比べて、要介護認知症の発症リスクが48%低い」
国立環境研究所などの研究チームが、約1万1200人の高齢者を対象に“犬の飼育の有無と認知症の関係”について7年半にわたって追跡した調査結果を発表した。
犬の散歩による運動や地域の人たちとの交流などが、心身に良い影響を与えるという。
また高齢者の健康が維持されることで、公的な医療・介護費が4年間で約5920億円削減される試算も示された。
一方で、高齢者は犬などのペットを飼うのが難しい現実もある。病気や入院で世話ができなくなったり、飼い主が先に亡くなる心配も少なくない。高齢者のみの世帯が増える中、「犬を飼いたいけど諦めている」というのは身近でもよく耳にする話だ。
そんな中、「一人暮らしの高齢者だからこそ、犬を飼い、最期まで一緒に暮らしてほしい」との思いから『ペットサポートサービス』を形にしたのが、おひとりさま終活士の大和泰子さんだ。
おひとりさまや高齢者の終活支援を行う中で、「最期までペットと暮らせる社会」の重要性を痛感。数年かけて“ペットと高齢者が共生できる終活の形”を整えたという。詳しく聞いた。
犬を手放し、亡くなる日までずっと泣いていた…
【一般社団法人包括あんしん協会代表理事・大和泰子さん】
2016年、おひとりさまや高齢者の終活をサポートする「一般社団法人包括あんしん協会」を設立。その最初の会員だった男性がガンになり、愛犬を里親に出しました。
われわれがサポートするから最期まで一緒に過ごされてはどうかと勧めたのですが、「自分が元気なうちに愛犬の次の人生を見届けたい」と手放すことを決断されたのです。
しかしその後、「寂しくてたまらない」と、亡くなる日まで毎日泣いていました。
「ずっと一緒にいたい思いを断ち切るのは、どれほどつらかったのか……」。
この経験から、「高齢者が最期までペットと安心して暮らせること」の重要性を痛感しました。
また、残されたペットたちが愛護センターで殺処分されるかもしれない現実も知りました。
一人暮らしの高齢者の中には「1週間声を出さなかった」という方も少なくありません。お友達もだんだんいなくなり、テレビに向かってしかしゃべる機会がない。
そうなるとやはり、認知症にもなりやすくなるのではないかと思います。
「高齢の一人暮らしだからこそペットを飼って、最期まで一緒に過ごしてほしい」。
これをサポートするため、飼い主に万が一のことがあった時にペットを安全に守るための仕組み「ペットサポートサービス」を立ち上げました。
ペットがひとりぼっちにならないよう責任を持つ
現在のサポート内容は、保護団体や動物病院と連携して『今、飼っているペットが残された場合、責任をもって次の家族を見つける、または保護団体で引き取る』という形です。
対象は犬を中心に(全国)、猫も一都三県では対応しています。
飼い主さまの逝去後、われわれがペットを迎えに行き、その地域の連携保護団体などと協力して里親を探します。
ペットが高齢の場合などは、保護団体が引き取ることもあります。
安心していただくために、飼い主さまと当協会の間で「死後事務委任契約」を結び、飼い主さまの逝去後は、「ペットの保護、医療連携、譲渡までの全体管理」を当協会が確実に担います。
何より、ペットがひとりぼっちになったり困ったりしないよう、われわれが責任をもって対応します。
次の目標は“命の循環”
現在は、飼い主さまが亡くなった時と施設入所などで飼えなくなった時の対応が中心ですが、今後は、例えば入院中などの「一時預かりサービス」などにも取り組んでいきたいです。
※現在「一時預かりサービス」は東京のみ対応
そしてもう一つ、ぜひ大きく取り組んでいきたいことがあります。
通常、高齢者は保護犬や保護猫の里親になることはできません。保護団体が譲渡に厳しい基準を設けているからで、一般的に60歳以上になると難しいケースがほとんどです。
それを、連携している保護団体と協力し、高齢でも条件(環境や飼育経験など保護団体の基準)を満たせば譲ってもらえる仕組みをつくりました。
保護団体の受け入れ頭数にも限りがあります。高齢者でも個別審査で大丈夫な方に里親になってもらえれば、団体はまた新しく保護できる。命を救えます。
現在は、私どもと連携している保護団体のみの取り組みですが、これを広げ、命をつなぐ循環をつくっていくことが私の目標です。
より安心してもらえる体制づくりとは…
現在、連携していただいている保護団体は、どこも本当に犬や猫を大切にしています。
万が一、代表者が倒れてその団体の方針が変わってしまう場合に備えて、横のつながりをしっかりつくり、「この人が倒れたらどこに連絡する」ということも決めています。
安心してもらえる体制を整え、しっかり責任を持つためにも、ボランティアではなく費用が発生します。
プランは大きく2種類。飼い主さまの年齢や健康状態によって契約状況は異なります。
事前に預託金をお預かりして保護費用に充当するプランと、生命保険に加入し、逝去後、保険金をわれわれが受け取って保護費用を担保するプランです。
保護費用には、ペットを迎えに行く際の交通費や人件費、ペットの餌代、譲渡前の健康チェックやワクチン接種代、保護団体への飼育費等の手数料が含まれます。
“ペットのエンディングノート”今すぐ準備を!
単身でペットを飼っている方にお願いしたいのは“ペットのエンディングノート”の準備です。
飼い主さんが急な入院や事故にあった場合など、ペットの名前すら誰にも分からないことが起こりえます。
通っている動物病院、ペットの性格、食べ物の好み、食事の回数や量、散歩時間、気を付けることなど、メモ書きでも大丈夫ですから、できる限り詳しく書いておいてください。
そして、書いたエンディングノートを託す人、緊急連絡先や緊急時に対応してくれる人には事前に伝えて承認を取っておくことも重要です。
万が一のことがいつ起こるか分からないのは、20歳でも80歳でも同じです。しゃべれないペットのために、日ごろからしっかり準備をしておいていただければと思います。
命の責任の重さを第一に
会員の皆さんを見ていると、ペットと暮らしている方はお元気でいる時間が断然長い。「自分がいないと生きていけない子」がいると、やはり気力が出て元気になるのだと思います。
一方で、自分だけで生きていけない子たちだからこそ、人間は責任を持たなければいけません。
私たちのようなサービスを利用する、しないに関わらず、大切なペットのために、できる準備をしておくことが、大切なペットを守ることにつながります。
われわれも、命の責任の重さを考えつつ、ペットと高齢者の共生を支えていきたいと思います。
(一般社団法人包括あんしん協会代表理事・大和泰子さん)
取材: 高知さんさんテレビ

