しっかり休んだのになぜか眠い。
その正体は一体、何なのか…。
「newsランナー」は、ことし世界的な医学賞『ラスカー賞』を受賞した睡眠研究の第一人者・柳沢正史教授を単独取材。
【記者】「寝る前のスマホ、これはついついやっちゃう」
【柳沢教授】「寝る前のスマホは絶対NGかと言われたら、それは×ですね」
睡眠に大切なのは、質?量?
そして今話題になっている“ショートスリープ”は…。
睡眠の新常識を徹底取材しました。
■休み明けなのにしんどい…その正体は自作の“社会的時差ボケ”
11年ぶりの5連休となったシルバーウィークが終わり、戻ってきた日常。しっかり休んで、24日からスッキリ仕事!と思いきや、街からは「眠い」というぼやきの声が聞こえてきます。
【街の人】「起きるのもしんどい。(連休明けの)初日はそうですね」
【街の人】「夜(遅くまで)起きてしまったりすると眠たい」
普段よりもたくさん寝たはずなのに一体なぜなのか。医学で「ノーベル賞の登竜門」とも呼ばれる「ラスカー賞」を受賞した、睡眠研究の世界的権威の柳沢正史教授に聞きました。
【筑波大学 柳沢正史教授】「個人的に必要な睡眠量というのは、生まれつきの体質として決まっている」
連休中に夜更かしをして昼まで眠る生活を繰り返すと、睡眠時間だけでなく、眠る”時間帯”そのものが後ろへズレていきます。
【筑波大学 柳沢正史教授】「例えばすごく遅寝・遅起きを連休中してしまうと、自分で”時差ボケ”をつくった状態になっちゃうわけですね。”社会的時差ボケ”という」
海外旅行で生じる時差ボケと同じ現象を、連休中の生活リズムの乱れによって自分自身でつくり出してしまう。それが休み明けの疲れの正体だというのです。
■寝る前のスマホは「”絶対NG”ではない」? 眠りに関する新常識
さらに話を聞くと、私たちが長年信じてきた睡眠の”常識”が次々と覆されました。
まず、寝る前のスマホについてです。
【筑波大学 柳沢正史教授】「寝る前のスマホは絶対NGかと言えば、それは×ですね。絶対NGではない。使い様です、コンテンツ次第」
スマホを使うこと自体に大きな問題はなく、重要なのは”何を見るか”だと教授は強調します。
【筑波大学 柳沢正史教授】「思考を一瞬止めて、リラックスできるようなコンテンツを入眠習慣にする。私は”見る将”なんですけど、将棋の解説動画(が入眠習慣)」
次は、広く信じられている「90分の倍数の時間で寝るとスッキリ起きられる」という説です。
【筑波大学 柳沢正史教授】「完全に×ですね。全く意味がないです。迷信と言っていいですね」
予想外の回答に記者が驚くと、教授はその理由をこう説明しました。
【筑波大学 柳沢正史教授】「ノンレム・レムの睡眠周期の平均値が1時間半というのは本当なんだけど、1時間~2時間半ぐらいの間でゆらぐので、倍数というのは全く意味がない」
睡眠の周期は大きく変動するため、90分の倍数に合わせて睡眠時間を決める根拠にはならないとのこと。
■最近話題の“ショートスリーパー”は完全否定
また、最近話題の“ショートスリーパー”についても、教授は明確に否定しています。
【筑波大学 柳沢正史教授】「睡眠の質を上げて“短眠”で済ませようというのも、完全にナンセンス。いわゆる自称『ショートスリーパー』は、ほぼ全ての方々は無自覚な睡眠不足」
OECDの調査によると、日本人の平均睡眠時間は1日あたり7時間42分で、33カ国中最も短い結果となっています。
■3時間睡眠を検証 睡眠不足は記憶力・判断力にどう影響するか
では、睡眠不足になると頭の働きにどれほど影響が出るのでしょうか。柳沢教授に教えてもらった「N-Back課題」というアプリを使って検証しました。
3回前に光ったマスと今光ったマスが同じならボタンを押すというゲームで、正答率を記録します。
まず、2人の記者が7時間睡眠をとった状態でチャレンジ。10回の平均は、40歳の原記者が77.5%、26歳の司記者が83.3%でした。
そしてその晩、深夜0時に会社で眠りについた2人は、わずか3時間後の午前3時過ぎに起きて再び課題に挑みました。
目が真っ赤な原記者、あくびが止まらない司記者…回らない頭で取り組んだ結果は、原記者が73.8%、司記者が74.7%。中には40%台となった回もありました。
【原記者】「1回集中力が切れちゃうと立て直せない」
あくまで簡易的な実験のため個人差はあるものの、睡眠不足は記憶力や判断力に影響を与えるといいます。
■“ショートスリーパーの訓練”で限界「おすすめできない」
「newsランナー」は実際に、短時間睡眠を続ける「ショートスリーパー」になるための“訓練”を受けたという男性を取材しました。
大阪市で訪問介護サービスを経営する北林大輝さん(37)は、15年ほど前に“短眠講座”を受講しました。
【ショートスリーパーを目指した 北林大輝さん】「『2カ月で1日3時間睡眠でいけるようになります』と言っていた。(浮いた)3、4時間分、好きなアニメとかも見られるし、例えばバイトとかしたらお金も稼げる」
“訓練”として毎週30分ずつ睡眠時間を削っていったものの、半年ほどで睡眠時間が4時間になったころにギブアップ。
【ショートスリーパーを目指した 北林大輝さん】「最後、脱落する直前は朝5時に起きてから2時間ぐらい、ただ起きてるだけでした。何も活動的になれなくて、何をするわけでもなく。
そのときの“先生”は、『睡眠は鍛えられる』って言ってた。筋トレみたいに」
(Q.周りには勧める?)
【ショートスリーパーを目指した 北林大輝さん】「おすすめはできないですね。やっぱり、自分が寝たいだけ寝られるのが1番幸せです」
■精神科医も警鐘 短時間睡眠は「やめたほうがいい」
連日多くの不眠症患者と向き合う精神科医のアウルクリニック・片上徹也院長も、意図的な短時間睡眠の危険性を訴えます。
【アウルクリニック 片上徹也院長】「血圧が上がるし、肥満になるし、心臓病と脳卒中が増えて死亡率が上がる。あと判断力と集中力が落ちて、次の日のパフォーマンスが下がる。やめたほうがいいと思います」
■拡大する睡眠市場 若い世代も高機能寝具に注目
睡眠の重要性が再認識される中、睡眠関連市場も活況を呈しています。
枕やパジャマなど幅広い睡眠グッズを販売する「BRAIN SLEEP」は、ことし5月に阪神梅田本店へ関西初の店舗をオープン。「ブレインスリープピロー」が同店舗で最も売れている商品だといいます。
【ブレインスリープ広報 伊藤美紀さん】「以前はシニア世代が寝具にこだわる印象かと思うが、今、若い世代の方たちも、高機能な寝具を購入する率が高まっている」
富士経済によると、睡眠サポートなどセルフケア関連の市場は右肩上がりで、2030年までに1兆4200億円規模に拡大する予想です。
■まず大切なのは「質」より「量」 睡眠研究の権威・柳沢教授からのアドバイス
よりよい睡眠を追求する機運が高まる中、柳沢教授は睡眠時間が不足している日本人に対し、具体的な第一歩を示しました。
【筑波大学 柳沢正史教授】「最低3日、4日続けて30分長く寝てみてください。3日ぐらい続けて30分長めに寝ると、自分の調子がどうなるかを自覚してほしい。多くの方が、実は寝不足だったと改めて気がつく場合もある。そこが第一歩ですよね」
睡眠の新常識を整理すると…
・寝る前のスマホ:OK ただし、コンテンツによる。興奮しない、リラックスできるコンテンツであれば問題なし
・冷房をつけっぱなしで寝る:OK 冷房を切ると寝苦しくなり、睡眠の質が下がる
・靴下をはいて寝る:NG 足の裏は放熱に重要なため、覆わない方がよい
・90分の倍数の時間で睡眠を調整する:迷信であり、根拠がない
・ショートスリープ:NG 完全にナンセンス
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月24日放送)
