ファミリーマートの制服が新しくなった。業界初の“Tシャツスタイル”は「より働きやすく」「カジュアルな着こなしを」というストアスタッフからの要望も取り入れたという。
また、衛生面や安全面を確保しつつ髪色や服装の選択肢を広げる“新しい身だしなみ基準”「ファミマコーデ」も導入された。
創業45周年の挑戦の一環として、『いちばん働きたい』を目指した取り組みだという。
「これは単純に『制服変えました』『髪色が自由になりました』という話ではありません。ファミリーマートが、世の中の少し先にあわせにいった“集大成”ではないかと思います」
と話すのは、“働き方評論家”で労働社会学者の千葉商科大学基盤教育機構・常見陽平教授。詳しく聞いた。
■ファミマにあわせるのではなく、従業員の“個”を活かす姿勢
【千葉商科大学基盤教育機構 常見陽平教授】
今回のファミリーマートの取り組みは、「服装や髪型が自由になりました」「面接がフレキシブルになりました」ということだけを捉えて論じるべきではないと思います。
もっと深いところ、「コンビニスタッフとは何なのか」とか「ファミリーマートのあるべき姿とは何なのか」を問い直した施策ではないでしょうか。
「従業員にとって、働きやすくて、整っていて、クールな服装を提供します。髪型や髪色、アクセサリーは自由にどうぞ」という潔さ。
ファミリーマートという存在ありきで従業員に合わせてもらうのではなく、従業員の“個”を活かす姿勢を打ち出し、さらに世の中の少し先にファミマが合わせにいった“集大成”ではないかとみています。
■茶髪はむしろ「あたたかい印象」という反応も
髪型など身だしなみ基準については、様々な意見があると思います。しかし、価値観はどんどん変化しています。
東京メトロが2025年5月に「身だしなみルール」を改正。茶髪をOKとし、ピアスなどの装飾品も業務に支障のない範囲で可能としました。
お客さんから「親しみやすい」「あたたかい印象で好感が持てる」といった反応があがっているそうです。
やや余談ですが、タトゥーについても、若い世代を中心に捉え方は多様化しています。記念やファッションの一部として、小さな文字や図柄を入れる人もいる。
「自分を持っている」と好意的に評価する人もいる。従来の「入れ墨」と同じイメージだけで捉えることは難しくなっています。
■客層の変化で“人手”の重要さが増す
以前、あるコンビニチェーンの経営者から「年金支給日の売り上げが大きい」と聞き、客層の変化を象徴する話だと感じました。
コンビニの客層の中心は、既に若者・単身者だけでなく、高齢者へとシフトしているのです。
日本にコンビニが登場して50年余り。現役の時にコンビニを利用していた人たちが高齢者となり、当たり前にコンビニを利用する時代になりました。
加えて、高齢の少人数世帯にとって、スーパーでの買い物は過剰になる場合があり、少量の総菜などが買えるコンビニは使い勝手の良い存在になっています。
このように客層が多様化、とくに高齢化する一方で、コンビニはセルフレジ化を進めたり、無人コンビニの実験なども実施。最先端のシステムを導入して、「滞在時間を短縮しますよ」或いは「人件費を減らせますよ」というチャレンジをしています。
ただ、セルフレジなどの操作に戸惑う利用者もおり、とりわけ高齢者にとっては、人によるサポートが重要になる場面があります。
■コンビニだからこその“柔軟”な面接方法
そもそも、日本のコンビニの大半はフランチャイズ店ですから、アルバイトで働いてくれる人がいないと成り立ちません。
若者の数の減少や、正社員で働く主婦の方が増える中、もうずいぶん前からコンビニのアルバイトは争奪戦です。
今回、ファミリーマートは「ウェブ面接」「録画面接」などを取り入れました。
これは、コンビニならではの非常に深い取り組みだと思います。
例えば『録画面接』は、あらかじめ決められた質問に対し、スマホなどから回答・録画して応募できます。コンビニの業務はある程度マニュアル化されているので、面接でも質問内容がある程度は絞れ、録画面接という手段が可能なのです。
『WEB面接』も、空き時間を利用して好きな場所からワンクリックで面接ができる。「この日、この時間にお店に来てください」という対面面接と比べると、サクッと気軽に受けられます。
業務内容がある程度マニュアル化されているコンビニだからこその手法ではありますが、アルバイト争奪戦の労働市場のなか、面接を受けるまでのハードルを下げるのは、非常に意味のあることだと思います。
■“「あなたと、コンビに」を働く側に広げた”
ファミリーマートのキャッチフレーズは「あなたと、コンビに、ファミリーマート」。
「お客様一人ひとりに家族のように寄り添う」「あなたと一緒に」という意味だそうです。
技術による効率化と、人がいることによる安心感。その両方をどう成立させるかが、これからのコンビニの課題です。
その意味で今回の改革は、ファミリーマートが従来掲げてきた「あなたと、コンビに」という考え方を、働く側にも広げたものだと捉えています。
実はコンビニにとって「温かさ」は、登場した当初からの重要なキーワードです。
コンビニがなぜ夜中でも明るいかというと、やはり「ホッとする」意味合いが大きい。
一人暮らしや、あるいは忙しく働いている中で、「寄るとちょっとホッとする」。
マニュアル通りの接客ではあるけれど、人と会うということで心が癒されるのです。
今後、最新技術の導入などは進むでしょうが、それでもやはり、原点の「温かさ」を大切にする。ファミリーマートにとって今回の改革は“当たり前”だったのかもしれません。
(千葉商科大学基盤教育機構 常見陽平教授)
