美里町在住の画家・瀧下 和之さんが地元の保育園の卒園制作として、子どもたちと一つの作品を作り上げました。その制作現場に密着しました。
(4月)
美里町の堅志田保育園です。4月、この保育園出身の画家・瀧下和之さんが訪れました。
【先生】
「この人だ~れだ、何の絵を描く人だと思う?」
【子どもたち】
「鬼!」
鬼をモチーフにした作品で知られる瀧下さんは、1975年生まれの50歳。県立第二高校美術科を卒業後、東京藝術大学と大学院に進学し、その修了制作で鬼の絵を描き始めました。
桃太郎が出てこない『桃太郎図(ず)』はシリーズ1000作を超えました。
最近では、人気マンガ『キン肉マン』の作者・ゆでたまごの2人とコラボし、売り上げの一部を去年8月の記録的大雨で被災した美里町や熊本地震で被災した熊本城の復旧支援のために寄付するなどの活動も行っています。
【画家 瀧下 和之さん】
「卒園して大人になって、またここに顔出しにくる機会があるときに、自分のやったものがあるのはすごくうれしいと思うので、何か形にして〈あの時やったな〉と感じてもらえるものを残せたらと思って」
そんな瀧下さんは今回、3月に堅志田保育園を卒園した5人の子どもたちと一つの作品を作り上げます。
子どもたちの前に置かれた木製のパネル。真ん中には鬼が描かれています。
【瀧下さん】
「どこに描きたい?」
周りの四角い枠に5人それぞれがイヌやキジ、サルなどを描き入れます。瀧下さんはそっと見守ります。
【瀧下 和之さん】
「大人になって思ったのは、『ここ、もっとああしたら』と言ってくれることが子どもの自由な発想を狭めていると思っている。困っているときは一言声かけて、あとは好きにやらせたほうがすごくいい絵が出来ると思う」
【子ども】
「サルを描いた。完成したらきれいだから楽しみ」
「強いイヌを描いた」
最後はみんなで仕上げをして、下絵が完成です。瀧下さんが今回の卒園制作を企画した理由とは?
【瀧下さん】
「この子たちの代は堅志田保育園が閉園で揺れていた時なので、園生活をなかなか楽しめなかったと思うので、最後にこの年だけやれることをと思って」
(3月)
「卒園生入場」
3月の卒園式です。
ことし50周年を迎えた堅志田保育園では2年前、少子化などを理由に閉園の話が持ち上がりました。
この卒園式が最後になりそうでしたが、保護者や地域の人たちが署名活動を行うなどして、存続することが決まりました。
【保護者代表の挨拶】
「園の存続という大きな課題に直面した時、そこにあったのは子どもたちの育ちの場をなんとしても守りたいという保護者、先生たち、地域の人たちの強い思いでした」
【岩村 智子 代表理事】
「ご卒園おめでとうございます。この場所がこれからも続いていくことの大切さ、子どもたちにとって心に残りまた帰ってこれる大切な場所であることを改めて感じました。子どもたちにとって安心できる、いつまでも帰ってこられる場所であり続けるために、この場所を大切に守っていきます」
5人の子どもたちは愛されています。
(5月)
瀧下さんのアトリエです。
【瀧下さん】
「想像をして色をつけるのが楽しくて、形も大人じゃかけないような線が現れるので手なのかとかを考えながらやるのが」
瀧下さんは鬼の絵を描くときは右利きにもかかわらず、左手で描きます。
【瀧下さん】
「そもそも右利きなのに左利きで鬼を描いているのが、子どもの頃に描いていた線に憧れて左手を使っている。(子どもたちは)自然と利き手で描いているときに面白い形が出るのがいいなと思いながら」
(7月)
卒園した子どもたちがこの日、小学校の制服姿で園を訪れました。
作品が披露されると…ひと時、じっと見つめます。
タイトルは『桃太郎図 鬼ヶ島の五人衆』。瀧下さんが描いた赤鬼を子どもたちが描いた桃太郎、キジ、イヌ、サル、赤鬼が囲んでいるカラフルでかわいらしい作品です。
【子どもたち】
「すごかった」
「赤鬼、かわいかった、口(が)」
「きれい」
【瀧下さん】
「色をたくさん使おうと思って。子どもたちに教える時は、色鉛筆やクレヨンとかを全部使って、とやらせる。それを自分で実践しようかなと思って。言われないと同じのでずっと描いたりするので、制限をとってあげることを自分の身に置き換えてやりました」
普段の作品には登場しない桃太郎も描かれています。
【子ども】
「大きな桃太郎を描いた」
「かっこよかった」
「桃太郎(の方が強い)」
【瀧下さん】
「自分はまだ描くイメージがないので、せっかく描いてくれた桃太郎、もし桃太郎を描くなら影響があるかも」そして、完成した『鬼ヶ島の五人衆』がさっそく飾られました。園児たちも興味津々です。
【瀧下さんの幼なじみ 橋口 美香 先生】
「(保育園が)続くのが当たり前って思っていたが、今回、改めてうれしい出来事。本当にありがたいなと思います。これから先も子どもたちが『先生、先生』って来てくれる園であり続けたいなって」
【先生】
「今のうちに『来年もお願いします』って言っておけば」
【園児たち】
「お願いします」
【瀧下さん】
「はい、また来年も」
多くの人に愛され、多くの子どもたちを育む堅志田保育園。そこには優しくて、楽しげな絵があります。
保育園のある美里町は、7月の地震で震度6強を観測しましたが、この絵は地震対策のフックで壁にかけられていたため、落ちることはなかったそうです。
