猟師を目指す女性たちについてです。長野県東御市で開かれたわな猟の講習会に、3人の女性が参加しました。高齢化や担い手不足に悩む狩猟の世界に、なぜ興味を抱いたのか?そのワケを取材しました。
■わな猟の技を学ぶ講習に3人の女性
9月6日、東御市で開かれた「くくりわなの講習会」に3人の女性の姿がありました。
その中で最年少は、東御市の小山裕紀子さん(26)です。
9月に行われる試験で、わな猟の免許取得を目指しています。
小山裕紀子さん:
「自給力の高い生活をしたいっていうのがもともとあって、何かあったとしても自分の力で生きられるような環境に身を置きたいっていうので長野に来た。狩猟も、食べるものを自給するための力があった方がいいっていうので(狩猟に)至った」
残りの2人、野上珠美さん(47)と、矢代千波瑠さん(42)も東御市内に住んでいて、すでにわな猟の免許を取得しています。
猟師 福島俊治さん:
「ベテランのハンターから中堅、若手のハンターにわな猟の技を教える機会というのは、やっぱり少ないというのが現状だったと思う」
■「高齢化」と「担い手不足」の現実
講習会を企画したのは、猟師の福島俊治さん(47)です。
福島さんは、東御市のジビエ料理店「ふくふく亭」の店主で、東御市の猟友会に所属するハンターでもあります。
捕獲したシカやイノシシを自ら処理し、ジビエ料理として提供しています。
高齢化と担い手不足。
狩猟の世界が抱える課題解決のため、福島さんは月1回のペースで講習会を開くなどして、猟師の育成に取り組んでいます。
福島俊治さん:
「お店を開いて、狩猟に興味があるという方が集まってきていただいたので、せっかくだったら私が普段教わっている師匠(先輩ハンター)の技を若手の後輩ハンターにも教える機会を持ちたいというふうに思って」
■移住女性が猟師に「地域に恩返し」
3人の女性のうちの1人、野上珠美さんは、2年前に県外から移住。
2026年6月にわな猟の免許を取得し、講習会にも参加して狩猟の知識を学んでいます。
野上珠美さん:
「この地域に来て、東御市の方には移住してからとてもよくしていただいて、この地域に何か返していけることはないかということを模索している中で、自分でも参加できると思ったのが狩猟の世界だった」
■テレビを見た翌日「弟子入り」志願
矢代千波瑠さんは、2026年1月にNBS長野放送で放送した特集を観て、放送翌日に福島さんの店を訪ね、「弟子入り」を志願。
矢代千波瑠さん:
「興味があるだけで、実際に(猟師を)やっている方とお会いする機会がなかった。これはぜひ行かないと、と話をすぐに聞きたいという思いだった」
野上さんと同じく、6月にわな猟の免許を取得。
この日の講習会では、くくりわな作りを学びました。
矢代千波瑠さん:
「すごく素晴らしい機会を設けていただいて、本当に自分はラッキーだと思う。ゼロからだったら何をしたらいいのか、何を揃えたらいいのか、どこに行ったらいいのか、そういうのもわからないので」
■「自給自足」のため猟師目指す
小山裕紀子さんは、2026年3月まで横浜市で生活していました。
自然災害が相次ぐ中、「自給自足」の環境に身をおきたいと考え、4月に東御市に移住。
市内のワイナリーで働きながら、わな猟の免許取得を目指しています。
小山裕紀子さん:
「免許を取って一通りわなをかけて、お肉にするところまで自分の手でできるように、技術として習得したい」
講習会でも先輩猟師に積極的に質問―。
小山裕紀子さん:
「(わなは)何回くらい繰り返し使えるものなんですか」
先輩猟師:
「ワイヤーの傷み具合にもよる。基本的には1回捕ったら、新しくした方が間違いない」
■力が必要な作業も…「工夫が必要」
小山さんもくくりわな作りに挑戦。
機械を動かせず―。
小山裕紀子さん:
「いかにちゃんと手抜きせず、安全で正確なわなを作れるかどうかが、自分の身を守ることにもつながるし、巡り巡って、捕まえた動物のためにもなると考えたら、わな作りは手を抜けない」
先輩猟師に教わりながら、作業すること40分。
くくりわなが完成しました。
このあと、店の外でわなを仕掛ける練習に。
小山さんにとって、初めての経験です。
先輩猟師:
「頑張れ、もうちょい。よしよし、それでそこを締める」
先輩猟師からアドバイスをもらいながら、無事に設置することができました。
小山裕紀子さん:
「この体格なので、力がいるところはそれなりにある。要所要所、てこの原理とかをうまく使いながらやるとか、工夫が必要かなと思った」
■「命が消える瞬間」に立ち会う
この日、「わなにかかったシカがいる」という情報が入り、講習会の後、都合がついた小山さんだけ現場へ。
先輩猟師が有害鳥獣駆除のために仕掛けたわなにかかったシカでした。
駆除に立ち会います。
小山裕紀子さん:
「最初に命が消える瞬間を見たときは、考えるものがあった。阿部さんという先輩猟師が、命は皆同じだと。食べ物は野菜をとるにも、動物を殺すにも、生きることってこういうことだなと思って」
■10年で2300人減「消滅すると困る」
県内の狩猟免許の所持者は、2024年度で6769人。
10年の間に、2300人近く減少しています。
また年齢別で見ると、60歳以上が51.2%で、半分以上を占め、高齢化と担い手不足が課題となっています。
東御市 猟友会東支部・阿部秀平さん(71):
「若い方が入っていただいて猟友会を盛り上げていただかないと、年配者の集まりになってしまっているから。どんどん若い方を伸ばしていくことを考えていかないと、猟友会が先細りなんてものではなくて、消滅してしまえば困るから」
■若手育成の輪が広がってほしい
猟師(ハンター)は、有害鳥獣の捕獲を通じて住民の生活や農地、生態系を守る重要な役割を担っています。
講習会を開き、猟師の育成に励む福島さんにとって、この取り組みがほかでも広がることを期待しています。
福島俊治さん:
「これだけ若い方、女性の方が集まってくれて、びっくりしているんですけど、非常にうれしい。猟友会が新しい方が入ってくると活動も活発になってくると思う。こういう取り組みが注目されることで、他のエリアでも若手のハンターを育てていくというムードが高まればいい」
