地元発祥のスーパー「日東」が挑む”オンリーワン戦略”
「我々からしたら、挑戦どころか無茶苦茶大きい挑戦って感じですかね」
日東物産の服部雅企社長はそう語る。
物価高や建築コストの高騰が続く逆風の中、愛媛県松山市のローカルスーパー「スーパー日東」が6号店となる土居田店を7月にオープンした。
開店前から駐車場には長蛇の列ができ、予想以上の来客に店側は開店時間を20分前倒し。
大勢の客がお目当ての商品へと一斉に流れ込んだ。
「今、物価高で高いので、安いのが家族も多いので助かります」と話す買い物客の声が、この日の熱気を物語る。
激戦区に出店する地元スーパー
7月29日、開店前のスーパーには長蛇の列ができていた。
松山市で5店舗を展開するスーパー日東が、新たにオープンする土居田店だ。
行列に並ぶ客:
「なんかいいものがあれば、安いものがあればいいな」
「肉・魚がね、非常にいいですから、それを狙ってきました」
予想以上の来客に店は開店時間を20分前倒してオープン。
大勢の客がお目当ての商品を目指して、店内へ流れ込んだ。
買い物客:
「今、物価高で高いので、安いのが家族も多いので助かります」
オープンセール目当ての客で店内は大混雑。
買い物かごはあっという間に商品で一杯になる。
買い物客:
「子供2人で普通に4人なんですけど、ただ夏休みということがあってお昼ご飯がいるんで、冷凍庫に頑張って入れたいと思います」
この日、客足は途絶えることなく、店は一日中大盛況だった。

松山市は120を超える店舗がしのぎを削るスーパー大激戦区
実は今回日東が出店したのは、大手スーパーチェーンの店舗の目と鼻の先だ。
日東物産・服部社長:
「松山市内にスーパーを出店する場合に、大手資本のスーパーと競合しない場所なんて、もはやないんですよね。我々からしたら、挑戦どころか無茶苦茶大きい挑戦って感じですかね」
大手不動産会社の調べによりますと、実は松山市は全国の市区町村別のスーパーの数が全国4位、120を超える店舗がしのぎを削る大激戦区だ。
なぜ松山にスーパーが多いのかー。
流通やマーケティングの専門家に話を聞いた。
松山大学経営学部・成田景堯准教授:
「『地元発祥のスーパーが多い』のが一つと、スーパーっていうのは『スケールメリットを発揮させるためには、多くの店舗を急速に展開しなきゃいけない』ということで多いんじゃないかと思ってます」
さらに、その背景には松山ならではの地域性もあるという。
成田准教授:
「松山の外食支出っていうのは、全国の中で比較すると結構低い方で、あんまり外食はしないっていうデータが出ています。当然、スーパーでの買い物は多くなります」

自慢の武器は「生鮮食品の強さ」
「トウモロコシ99円!制限ありませんので早い者勝ちで~す!」
威勢のいいアナウンスが店内に響く。
スーパー日東自慢の武器は「生鮮食品の強さ」だ。
日東物産・服部社長:
「生鮮部門は、いろんな細かい変化とかを大手と違ってつけやすい部門であったりするので、同業他社に比べて、すごく個性的になってたりとか、よそがやっていないような動きをやれてたりする中で、日東のよそと違う強みになってるところはあるかなという風には思います」
ローカルスーパーだからできることとは何か。
スーパー日東の戦略を支えているのが、売り場の責任者でもある『バイヤー』だ。
朝4時30分の市場に「おはようございます」と元気な声で現れたのは、新しい土居田店の鮮魚部門でチーフバイヤーを任された佐々木秀明さんだ。
市場関係者:
「これ養殖、養殖のハネもんやけんちょっと安いよ。面白いと思うな。これ切り身にするんだったら全然安い」
佐々木チーフバイヤー:
「じゃあ5ケースもってきて」
市場の買い付けは即断即決の連続。
バイヤー歴8年の佐々木さん、良い商品があればタイミングを逃さず確保する。

「日東としては『魚が命』」
毎朝市場をくまなく歩いて集める『情報』が、その日の売り場を作っていく。
佐々木チーフバイヤー:
「買い付けのポイントは、鮮度と魚種。他のスーパーと差別化を図りたいんで、日東としては『魚が命』やと自分の中では思っているんで、魚でお客さんを呼べるように、闇雲にただ安いから買うっていうんじゃなくって、お客様がお買い求めやすいようなサイズ感であったりとか、そういうのも意識しながら(買い付ける)」
また、仕入れた魚を店舗にどのように売り場に並べるか。
そこまでが担当するのが、バイヤーの仕事だ。
佐々木チーフバイヤー:
「売れる物は目立つように、あとはボリュームと迫力みたいなものですかね。来て頂いたお客さんにワッとね、すごいって思っていただけるように」
ボリュームを意識するスーパー日東は、陳列台にも特別なこだわりがある。
佐々木チーフバイヤー:
「この台は特注ですね。できるだけ低く上から広範囲に見渡せるんで、日東ってこういう真ん中で山に盛って、魚を並べるっていうのは売りのひとつなので」
「魚をよく買う」という買い物客も、「日東さんは魚がお安いイメージがある。しかも丸々売ってる店があんまりないので、売ってるとこに行きたいよね」とこの店を選んだ理由を語る。
佐々木さんの狙いは、ばっちり客のハートをつかんでいるようだ。

買い付ける商品は、野菜だけで120種類以上
「日東」自慢の生鮮食品を支えるもう一本の柱が、青果部門だ。
新店舗の青果部門は、バイヤー歴19年のベテラン、濱本正秀さんに任された。
買い付けで重視しているのは、質と価格の両立。
オープンに向け買い付ける商品は、野菜だけで120種類以上。
総重量約4トンにもなるという。
濱本チーフバイヤー:
「イメージは150~160円やったらいいなあぐらいの感じで、ただ200円ぐらいしよりますよね普通に。間とってもいいしとか」
市場関係者:
「もう言うて下さいやります」
濱本正秀チーフバイヤー:
「え~じゃあ160円でいい?」
市場関係者:
「はい、全然OKです」
市場を所狭しと駆け回りながら、ここぞという時はベテランならではの巧みな交渉術で取り引きをまとめる。
市場関係者:
「商品をうまく回してくれる人っていうんですかね、僕らが一生懸命いろんなところで集めてきたものを、一生懸命いろいろ回転させていって、お客さんを喜ばせてくれているようなそういうバイヤー」
濱本チーフバイヤー:
「市場も喜んでお客さんも喜んで、うちの会社も結果喜んで、売り上げが立ってっていうところ、そこが大事かなって思ってるんで、みんなが喜ぶところを意識したい」
日東は、こうした『現場重視の体制』を大切にしてきた。

食料品を扱う「あずま商店」からスタート
スーパー日東は1962年、食料品を扱う「あずま商店」からスタートした。
その後、業態をスーパーに変え、店舗数も拡大するなか大型店の進出などで、厳しい競争にさらされる。
その中でたどり着いたのが、現場に権限を持たせる今の店づくりだった。
大手スーパーは、本部が仕入れを一括で担い、各店舗に商品を供給するのが一般的だ。
一方、日東では各店舗の部門ごとにバイヤーを配置していて、どの商品を仕入れるかいくらで売るか、それぞれの現場に判断が委ねられている。このため、店舗によって品ぞろえや価格が異なることもあるという。
地域性に合わせて柔軟に対応できる「オンリーワン戦略」が支持され、この20年で売り上げは約5倍に。
わずか5店舗で年間100億円近くの売り上げを誇るスーパーに成長した。

ローカルスーパーだからできること
濱本チーフバイヤー:
「すいません、トウモロコシ完売したんです」
千本用意したトウモロコシは昼過ぎに完売した。
客足は途絶えることなく、バイヤーが作り上げた売り場は多くの客を惹き付けた。
佐々木チーフバイヤー:
「いろんなことをお客様から学びながらアップデートして、またレベルアップした日東というのを見せていければいいかなと思ってます」
濱本正秀チーフバイヤー:
「たくさん売れるっていうことは、お客様が喜んでくださるってことなので、多くの人に喜んでもらうっていうのが、すごくやりがいを感じますね」
日東物産・服部雅企社長:
「自分たちとしては、地方の食品スーパーの運営企業がどういう風に成長していくかっていう、成長のモデルっていうものを自分たち自身で作り出したいと思っていて、それが新店舗の出店って形になります」
ローカルスーパーだからできること。
スーパー激戦区・松山で、新たな挑戦が始まっている。


