お手頃な価格で、お腹も心も満たしてくれる焼き肉の食べ放題。家計にとって心強い存在だが、いまその存続を揺るがしかねない状況に直面している。

世界有数の牛肉供給量を誇る「アメリカ」で起きている“異変”を緊急取材。

牛肉高騰の一方で、新たな選択肢として”ラム肉ブーム”という動きも出てきた。

■ 焼き肉食べ放題に広がる危機

大阪府泉佐野市にある焼き肉食べ放題店「焼肉バイキング左近」。時間制限なし(ランチ大人2200円~)というスタイルが人気を集め、店内はにぎわいを見せている。

しかしその光景を、左近哲也社長は複雑な思いで見つめている。

焼肉バイキング左近・左近哲也社長:アメリカ産が多いです。ものすごく上がっています。びっくりするほど上がっています。国産牛と変わらないぐらいの値段に。

農畜産業振興機構のデータによると、アメリカ産牛肩ロース(冷凍)の輸入価格は、2025年4月は1キロあたり1698円だったものが、2026年4月には2258円へと高騰している。

特に深刻なのが、店の名物である特製タレ漬けのハラミだ。その仕入れ価格は2年前のおよそ3倍にまで跳ね上がった。

補充してもすぐになくなってしまうハラミは、店にとって利益を圧迫し続ける存在となっている。

ハラミは2年で3倍の値段に
ハラミは2年で3倍の値段に
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■ 値上げは小刻みに 苦肉の策は“肉以外”の充実

それでも、客離れへの懸念から大幅な値上げには踏み切れない状況が続いている。

店では100円の値上げを3回にわたり小刻みに実施するという苦肉の策をとっている。

そしてもう一つの“対策”が、肉以外のメニューの大幅な充実だ。たこ焼き、唐揚げ、餃子、チキン南蛮、おでん、博多とんこつラーメン、うどんなど、その数は120種類以上にのぼる。

左近社長はその狙いをこう明かす。

焼肉バイキング左近 左近哲也社長:正直言って、色んなものを食べてもらいたいのと…お肉食べる量少しでも減らしてもらったら(笑)お肉が非常に高いのでね…。

そして「肉下がるまで頑張ろうと思います。我慢です」と、先行きへの不安をにじませながらも前を向いている。

肉以外のメニューの大幅に充実させた
肉以外のメニューの大幅に充実させた

■ アメリカ東部で何が起きているのか

牛肉価格の高騰を引き起こしている根本的な原因を探るべく、世界有数の牛肉供給量を誇るアメリカの現状を取材。取材班は東部のバージニア州へ向かった。

現地で開催されていた牛の品評会に参加した畜産農家からは、厳しい経営状況が語られた。

畜産農家:牛の餌を買うための出費が増えています。干し草や飼料を買うとなれば、本当に高くつきます。

牛のエサとなる「干し草」の価格が著しく高騰しているというのだ。

畜産農家「牛の餌を買うための出費が増えている」
畜産農家「牛の餌を買うための出費が増えている」

およそ100年、代々畜産農家を営むケビン・クラウンさんの牧場では、その深刻な実態が目に見える形で広がっていた。

畜産農家 ケビン・クラウンさん:地面が見えているでしょう、これは普通ではありません。通常ならここの草は私の膝ぐらいまで伸びます。平年を下回る降水量で、干ばつはことしで3年目になります。

バージニア州では1941年以来、最も乾燥した状況が1年半にわたって続いているという。かつて牛たちが喉を潤した川も完全に干上がり、地面がむき出しの状態になっている。

牧草が育たない分、農家は購入した干し草で牛を育てるしかないが、その価格も例年に比べておよそ1.7倍に上昇している。

畜産農家 ケビン・クラウンさん:干ばつによって、私たちは多くの牛を手放しました。そうすれば、生産できる牛肉の量も少なくなります。しばらくは牛肉の値段は通常より高いままでしょう。

牛たちが喉を潤した川も完全に干上がり地面がむき出し
牛たちが喉を潤した川も完全に干上がり地面がむき出し

■ 専門家が指摘する“ダブルパンチ” 「干ばつ」と「円安」

干ばつによる牧草不足と牛肉の生産量減少。これに加えて、日本特有の問題も重なっている。

日本総研 三輪泰史チーフスペシャリスト:日本の場合は、ダブルパンチのような形で円安の影響が出てくるんです。アメリカで高いものを、さらに円安で日本に輸入するとなると、日本国内の値段が大きく上がってしまう。

アメリカでの供給不足による価格上昇にくわえ、円安による価格上昇が重なっている構造だ。

三輪さんによると、「この状況は1年ほど続く見通しで、価格が下がる要因が見当たらない」という。

同時に、三輪さんは消費者の選択が変わる可能性についても言及している。

日本総研 三輪泰史チーフスペシャリスト:牛肉以外の肉であったり、(たんぱく質が豊富な)豆だったりが、これから人気になっていくかなと思います。

日本総研 三輪泰史チーフスペシャリスト
日本総研 三輪泰史チーフスペシャリスト

■ 関西で“ラム肉ブーム”の兆し

専門家の見立て通り、牛肉の代替として注目を集めている肉がすでに現れている。それが「ラム肉」だ。

大阪・なんばに2026年2月にオープンした「ラム太郎」の貝原ベイ店長は出店の理由をこう語る。

ラム太郎難波店 貝原ベイ店長:いま牛肉はすごく値上がりしていて、ラム肉はまだ落ち着いているので。

ラム肉は牛肉に比べて安価なうえ、冷凍技術の進歩で以前より臭みが軽減されている。

ラム肉が大きく注目されたのはおよそ20年前、「BSE」によりアメリカ産牛肉の輸入が一時停止した時期だった。

今回の牛肉高騰を背景に、関西では再び”ラム肉ブーム”が起きつつある。

ラム太郎難波店 貝原ベイ店長:まず値段、今まだラム肉の方が手を出しやすいし、栄養価値とかも結構、魅力的ですし、ぜひ1度食べに来てほしいと思います。

異常気象と円高が引き起こしているアメリカ産牛肉の高騰。

焼き肉食べ放題はいま、大きな転換点を迎えている。

(関西テレビ「newsランナー」2026年8月18日放送)

関西で“ラム肉ブーム”の兆し
関西で“ラム肉ブーム”の兆し
関西テレビ
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