多くの施設の屋内が原則禁煙となり、違反した場合は罰則対象となり得る「改正健康増進法」が全面施行されてから、半年以上が経過した。

これをきっかけに禁煙した愛煙家もいるかもしれないが、今冬から「治療用アプリ」が保険適用となり、医師の診断のもとで処方されるようになるということをご存知だろうか。
 

左から、患者アプリ、COチェッカー、医師アプリ
左から、患者アプリ、COチェッカー、医師アプリ
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11月11日、医療用アプリを開発する株式会社CureAppは、禁煙治療を補助するアプリ「CureApp SC」(ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー)が、中央社会保険医療協議会の了承を得て、12月1日から医療保険が適用されると発表。合わせて同日、アプリが発売される。

同社によると、治療用アプリが公的な医療保険で使えるようになるのは日本で初めての事例で、禁煙治療の分野では世界で初めてだという。

「CureApp SC」は、患者アプリと、呼気中の一酸化炭素量を測るポータブルサイズのCOチェッカー、医師アプリの3つで構成されており、患者アプリは誰でもダウンロードできる状態になっているが、そのままでは使うことはできない。

アプリを使うには、まず医師が治療にあたり患者に「処方コード」を発行。患者はアプリをインストールした自分のスマホに、「処方コード」を入力して初めてアプリが使用できる。
 

患者は日々の喫煙状況や服用回数、健康状態などをアプリに入力し、さらにCOチェッカーで呼気中の一酸化炭素濃度を自ら計測。

その結果に応じたガイダンスや治療指導・禁煙に関する情報などがスマホに表示されるという。
アプリが使える期間は6カ月で、それを過ぎると使用できなくなる。

一方、禁煙外来で行われている保険適用治療の「標準禁煙治療プログラム」は一般的に12週間で、その間に5回受診する。CureApp社は、スマホなら在宅や勤務中など、これまで医療者が介入しにくかった「治療空白」の期間でも支援が行え、禁煙継続率が向上するとしている。
 

事前に行われた臨床試験では、「CureApp SC」を使った患者は未使用患者より、禁煙を続けられた割合が治療開始から24週の時点で13.4%高かったという。

過去に禁煙に失敗した人にもうれしいアプリになるかもしれないが、では実際、「CureApp SC」ではどんなガイダンスが表示されるのか? そして価格は? また、これからは様々な病気を治すためにアプリを処方するのが一般的になるのだろうか? 気になることを担当者に聞いてみた。

自己負担なら25400円、3割負担なら…

――まず、スマホを使う「治療アプリ」のメリットは?

生活習慣病や精神疾患などは、患者さんが自身の生活習慣や考え方などを変えていくことが必要になります。そのためには医療的に正しいきめ細やかな指導などが必要となりますが、現状の医療システムでは、病院を一歩でた患者様の日常生活をサポートすることは現実的ではありません

治療アプリは日常生活に入り込んで個別化して患者様をサポートすることができるため、患者様の日々の生活の中で正しい考えや習慣を学習していただいたり、困った時にすぐに的確なアドバイスをするなど、従来の医薬品や医療機器では困難だった治療を行うことができます。
 

――どんな「ガイダンス」が、どんなタイミングで表示される?

毎日体調や薬の服用、禁煙できたか、タバコを吸いたい度合い、CO濃度など記録しているので、記録されたデータをもとに毎日数回程度、アプリ側から「薬を飲んでいないようですが、喫煙衝動が治っていても薬を飲むことが大事です」や、「今日は日記を書いていないようですね」などといったガイダンスが送られてきます。

またこちらからもタバコが吸いたくなった場合にアプリに働きかけることができます。「タバコが吸いたい」と伝えると「歯磨きをする」「深呼吸を5回する」「部屋の掃除をする」「ガムを噛む」など様々な代償行動などを提案してくれます。


――「治療アプリ」は自己負担でいくら?保険3割適用ならいくら?

自己負担の場合25400円、3割負担の場合7620円です。


――「治療アプリ」の医療費っていつ払うの?

ニコチン依存症治療アプリ(禁煙アプリ)への支払いは、最初にアプリが処方されるタイミング一括で支払いになります。なお、禁煙外来の診察およびお薬は来院時に毎回費用が発生します。


――患者がスマホを持っていなかったら?

基本的には、スマートフォン等の汎用モバイル機器を持っている患者さんを対象とした医療機器になります。
 

10年以内にスマホでの治療を当たり前にしたい

――アプリによって禁煙治療はどう変わる?

禁煙はニコチンに対する依存との戦いです。この依存は2つに分けることができ、1つはイライラしたり喫煙欲求がおきる身体的依存、もう1つは、例えばご飯を食べた後や一仕事終えた後にタバコを吸うなど喫煙習慣を作る心理的依存です。

従来の禁煙外来では、禁煙補助薬を使って、身体的な依存に対してはアプローチができていました。一方で、心理的な依存に関しては薬は効果がなく、長期間に渡ってきめ細やかな指導を患者さんごとに行っていく必要がありますが、これまでの医療の仕組みではその支援を十分に行うのは難しかったのです。

この喫煙習慣を根本からしっかり治療していくというのをアプリでケアできるようになったのがとても大きな価値です。これまで患者さんは一歩病院の外に出ると、心理的依存とニコチン依存の症状に一人で孤独に闘う必要がありましたが、今後は治療アプリが患者さんを24時間365日支援します。


――これからCureApp社が目指すことは?

まずは国内で初の治療アプリである「ニコチン依存症治療アプリ」をより多くの患者さんへ届けられるよう、まだ新しく誕生したばかりであるこの治療アプリを用いたデジタル療法の認知・普及に務め、10年以内にはアプリで治療をすることが当たり前となっている世界を実現したいです。

また、当社では現在もニコチン依存症以外にも複数の疾患に対する治療アプリの研究開発を進めておりますが、さらに多くの疾患に対して研究開発を行い、未だ適切な治療法がなく病で苦しむ患者さまの治療へ、貢献をしていきたいと思っています。
 

確かに毎日スマホに体調などを入力する方が、数週間に1度などのペースで病院に通うよりは自分の体を気遣いそうだが、みなさんはどう感じただろうか? これまで禁煙したくてもできなかった人は、このような最新の治療法を試してみるのもいいかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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