今月1日、東京都で受動喫煙防止条例が一部施行され、まずは飲食店の店頭における「喫煙」「禁煙」の標識の掲示が義務化された。

そしてこのような受動喫煙防止に対する取り組みは自治体だけでなく、一般企業にも広がっている。コンタクトレンズメーカーのメニコンでは、就業時間中の喫煙禁止だけでなく、本社を訪れる取引先や顧客に「来社1時間前からの禁煙」を求めているのだ。

喫煙者からすると「やりすぎでは?」との声も聞こえてきそうだが、例えば接客用のテーブルなどには、こんなポスターが貼られているという。

(画像提供:メニコン )
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この“お願い”についてはネット上で、「素晴らしい!」「こうした企業が増えて欲しい」といった賛同する意見がある一方、「正直やりすぎ!」「たばこを吸う少数派の意見も取り入れて欲しい」といった声もあり、賛否両論がある状況だ。

たばこに対する世間の目が厳しくなった昨今ではあるが、なぜメニコンはこの取り組みを行うことにしたのか? そして取引先などの周囲の反応も気になってくる。メニコンCSR&コーポレートコミュニケーション部の担当者に詳しく話を聞いてみた。

2008年から就業時間中の喫煙禁止を開始

――「来社1時間前からの禁煙のお願いのポスター」をなぜ始めた?

そもそも、わが社では、2008年から就業時間の喫煙禁止の取り組みが行われていました。2016年6月からは禁煙運動推進を事業化しており、会社の定款に入れられています。

これをきっかけに、社内だけでなく社会を巻き込んで活動していくことになり、来社いただいた取引先の方にも禁煙のご協力を呼びかけさせていただき、地域で取り組んでいくことになりました。

ポスターを貼るようになったのは、2018年からです。入口の受付に貼ったり、接客用のテーブルの上に卓上版の小さなものを置いています。

入口の受付にポスターが貼られている(画像提供:メニコン )
入口の受付にポスターが貼られている(画像提供:メニコン )

――1時間という時間設定の理由は?

たばこを吸った後、呼気がたばこを吸う前に戻るには45分かかるという実験結果があります。それに10分程度の余裕を持たせてキリの良い1時間に設定しています。

取引先の喫煙者も最初はびっくり!今は多くの人が理解

――この取り組みに対して、社内の喫煙者の反応は?

直接聞いたことはありませんが、昔から喫煙が体に悪い事は社内で知られていたことですので、大きな抵抗はありませんでした。

――取引先の反応は?

取引先の喫煙者の方の中にびっくりされる方もいらっしゃいましたが、取り組みについて説明をすればご理解いただけています。またたばこを吸われない方からは、たばこ休憩で会議が遮断されないので、効率的な打ち合わせができるという声もいただいています。

――もしも取引先の人がたばこを吸っているのがわかった場合、どうする?

強制ではなくお願いですので、会社の禁煙の取り組みについてご説明して理解いただいています。

――ちなみに社長はたばこを吸う?

昔は1日1箱吸うヘビースモーカーだったと聞いています。「喫煙者のたばこ休憩で会議が中断したこと」や「喫煙者のたばこのにおいが気になる」といった社内の声を聞き、就業時間内は禁煙というルールにし、社長自身もたばこを吸わなくなりました。

――今回の取り組みを行い、どんなプラス面があった?

多くの方々に、健康増進事業の取り組みをアピールできていることです。

――マイナス面は?

特にないです。

禁煙の取り組みは「高度管理医療機器メーカーのポリシー」

――今後、禁煙の取り組みはどうなっていく?

加熱式のたばこはOKという空気がありますが、従来のたばこと同じように害はあります。加熱式もダメだということは伝えていきたいです。

加熱式たばこも禁煙の対象に(画像はイメージ)
加熱式たばこも禁煙の対象に(画像はイメージ)

――お酒も飲み過ぎると体に悪いが、お酒のほうのルールは考えている?

お酒のほうは、今のところ、考えていません。

――今後、たばこの煙対策のコンタクトの開発などを行う予定は?

そういった話は聞いていません。

――最後に、今回の取り組みに対して、喫煙者に厳しすぎるという声もあるが?

たばこの煙に害があることはわかっているわけですから、厳しすぎるという声もあるかと思いますが、高度管理医療機器メーカーのポリシーとして、禁煙に力を入れて取り組んでいきます。


一部の喫煙者からは、厳しすぎるという声が確かにある。しかし、たばこが及ぼす体への悪影響はいろいろと分かってきている。

このような取り組みを行う会社は医療メーカーに限らず、今後さらに増えていく可能性はあるだろう。喫煙者には肩身が狭くなった現在、今一度たばことの向き合い方を考えてみてもいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。