和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド。
全国屈指の、ハイレベルなパフォーマンスで知られるイルカショーが人気だ。
今回の主人公は、そのイルカショーでバックヤードからイルカたちをタイミングよく出し、イルカがはじいた玉を回収する新人トレーナーの荻谷猛(26)さん。
6月にこのチームに加わったばかりだ。
今は「先輩たちの動きやこういう指先まで意識してるんだなとか、サイン出すタイミングも周りの状況見てどのタイミングで出しているんかなとかも見てます」と学びの日々。
「『自分がやってね』って言われたときに出来るかどうかといわれたらそれはまた別の話」と話す。
それでも…
(Qいつかは前に出たい?)
荻谷 猛さん:もちろん、いつかはというかすぐにでも前に出られるように毎日全力で頑張ってはいます。
■先輩からの適格で厳しい指導 続く訓練の日々
一人前のトレーナーになって、舞台に立てるように…!ショーの合間に猛特訓だ。
その様子を見てみると、できていないところを先輩が指摘。
「所作が雑だし、一人でやってるんじゃない、2人、3人、4人でやってるんだから4人とも合わせる。飛込も最後、荻谷君だけ遅かった。」と的確かつ厳しい指導を受ける訓練が続く。

■きっかけは父親 ショーに出る姿を何度も見せてきた
猛さんがイルカトレーナーになったきっかけになった人がアドベンチャーワールドで働いている。
アニマルエデュテーメント部でゼネラルマネージャーをしている荻谷実さん(56)。
猛さんのお父さんだ。
アドベンチャーワールドで働いて、ことしで36年目になる。
実さんは元イルカトレーナー。ショーに出てパフォーマンスする姿を幼い猛さんに何度も見せてきた。

■今も覚えている父親のイルカトレーナとしての姿 すごさを「感じます!感じます!」
「自分の息子が同じところに今、立とうとしているところで素直に親として応援したい』と話す実さん。
猛さんは今も目の前で見たイルカトレーナーとしての父の姿を、覚えている。
猛さん:幼い時にはやっぱり(父親は)すごいなという気持ちが大きかったのと、かっこよいなって思っていたので。そのショーで影響を受けてこの道に進みたいなと思った立場なので。
(Qお父さんのすごさって感じることある?)
猛さん:感じます!感じます!感じますね。簡単にやってそうな。同じ場所で止まるっていうだけでも結構難しかったりするんで、自分の前でイルカがとどまってくれてるってだけでもすごいんだなって実感している。
同じ道を歩んで“すごさ”が分かったという息子について、実さんは「そうですね、そうやって育ててきたんだよって」と笑って話す。

■父の背中を追って迎えた「特別な夏」 大舞台へ
幼いころに見た父親の背中を追って。猛さんの「特別な夏」が始まろうとしていた。
夏などに期間限定で行われる夜のイルカショー「Loves(ラブズ)」。
きらびやかな演出とパフォーマンスで長年、人気を集めている特別なライブだ。
実は猛さんがこのライブで“ある大技”に挑戦することが決まった。
イルカの背中に乗って、水の上を駆けるパフォーマンス。通称「サーフィン」。
ライブでも大きな盛り上がりを見せる技だ。

■大技“サーフィン” なかなか成功しない難しい技に挑む
先輩トレーナーはその難しさについてこう説明する。
先輩トレーナー・北田拓海さん:動物は生きているのでその時によってタイミングとかスピードが違ったりするので、動物のスピードに合わないと早すぎたら自分が落ちちゃうし、遅すぎたら後ろにいっちゃうしというところが難しい。
練習では何度もサーフィンを繰り返しが、落ちなくてもスピードに乗れないなど、なかなか納得がいかない。
猛さん:むずかしいです。パフォーマンスするっていうことを意識しないといけないんで。それが難しいですね。乗れるだけじゃダメですね、
お客さんは乗れているかつ、盛り上げる部分がサーフィンにはすごくありますし、お客さんもそれを一番期待していると思うので。

■本番の日 猛さんが円陣で声出し「めちゃくちゃ緊張してるんですけど…」 客席には家族が
練習に練習を重ね、迎えた本番。客席には家族も駆けつけた。
母・幸子さん:自分が出るわけじゃないけど緊張するな。
父・実さん:確かにな。
両親と一緒に見に来た猛さんの妻・帆希さんのおなかの中には新しい家族がいる。
帆希さん:きょうすごい(おなかの子)がポコポコしてるから、楽しみなんやなと思って。
開園直前の円陣で、声出しをしたのは猛さんだ。
猛さん(円陣で):きょうもたくさんのゲストの方が来てくれてます。サーフィンめちゃくちゃ緊張してるんですけど。和気あいあいと楽しんで全力で愛を届けていきましょう、せーのラブズ!

■大技「サーフィン」の本番 駆け出したものの…
数々のショーをやり遂げ拍手に包まれる会場。
そして、猛さんが大技「サーフィン」の時間に。その難しさを知る実さんも客席から拍手を送りながら家族と一緒に見守る。
そんななか「サーフィン」に挑んだ猛さん。
勢いよく駆け出すが、その数秒後に落水…。
客席の家族も思わず声をあげるなか、猛さんはプールからステージに戻った。
実さんは大舞台に立った息子をずっと笑顔で見つめていた。

「そんな簡単にはできへんっちゅうこと」“大先輩の”父親が息子にかけた言葉
終演後、家族と合流し「あー、ごめん!乗り切れんかった!恥ずかしい!」と笑顔ながら悔しがった猛さん。
父であり大先輩の実さんがかけた言葉は「そんな簡単にはできへんっちゅうこと」だった。
成功も失敗もこれからの糧に。トレーナーの道のりは始まったばかりだ。


