福島県西会津町の工房に並ぶ革製品。使われているのは、会津地方で狩猟されたイノシシやクマの革だ。手掛けたのは町に移住した女性。新たな“命の循環”が生まれ、新たな産業が地域に根付きつつある。

■作ることが幸せ
西会津町の古民家を改装し2年前にオープンした「やまあみ鞄製作所」。店内には黒や茶など自然な色合いの鞄や小物が並ぶ。

立ち上げたのは神奈川県出身の片岡美菜さん。元々は東京で鞄職人として働いていた。

「ミシンを踏んでいるのが幸せというか、作ることが幸せなので、それ以上良いかなと思っていた。でも『自分だったら、ここで今まで見ないようなバッグブランドができるのかな』と思って移住を決めた」

会津地方に根付いた伝統工芸品などの文化と豊かな自然に惹かれ、2020年に「地域おこし協力隊」に着任。任期が終わった後も、素材にこだわった作品を西会津町で作リ続けている。

■駆除された野生動物の革
片岡さんが使用しているのは、会津地方で害獣として駆除された野生動物の革だ。

「野生の動物の革なので傷とかも多くて、生きていた時の傷だと思うんですけど」

細やかなしわがあり柔らかく手になじむクマの革、丈夫で生命力に溢れるイノシシの革。しかし、狩猟された動物の革は、一般的な革と比べて製品に使える部分が多くない。鉄砲の痕など“狩猟の痕”が残っているからだ。

一つ一つ傷の入り方が異なり、オスかメスか、あるいは個体の年齢によっても風合いが全く変わってくるという。

■託された“もったいない”の思い
町の面積の8割以上を山林が占める西会津町。イノシシやクマなどの野生動物による農作物被害が深刻で、離農を加速させる要因にもなっている。

素材となる毛皮を届けてくれたのは、地域おこし協力隊としてジビエ利活用に取り組む神奈川県出身の力武未歩さんだ。地元の猟師とともに害獣駆除や解体を手伝う中で、必死に生きる動物たちの姿を前に「もったいない」というやり場のない思いを抱いていた。

東京電力福島第一原発の事故後、出荷制限が続く福島県内の野生動物。西会津町でも駆除した動物の食肉利用ができず処分されているのが現状だ。そうした中、毛皮は利用が許された数少ない“命”のカタチでもある。

「いただいた大切な命を少しでも活かしてほしい」

力武さんや地元の猟師たちから、その思いが片岡さんへと託された。

■手仕事に込める“命への敬意”
毛皮を革に加工するために欠かせないのが「せん打ち」と呼ばれる作業。片岡さんはこの技術を独学で身に付けた。

批判の対象になることもあるが「殺したくてやっているのではなく、獲った命を無駄なく使い切るためにやっている」と片岡さん。外注せず自ら手作業で行うこの工程には、制作する革製品への“命への敬意”が込められている。

「自分がやらなければ捨てられてしまう皮。特に福島県は食肉の利活用が難しい現状がある」

だからこそ、皮だけでも獲った命を活かしたい。

「命を活かすという意味で、この取り組みを続けていきたい」

西会津町に移住した片岡さんだからこそできる“命の活かし方”が、地域に新たな命の循環を生み出している。

福島テレビ
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