「不便さ」から生まれたアイデアグッズです。交通事故で手足が麻痺した男性が1人暮らしに挑戦し、その経験から便利なグッズを作りました。製品化したいと支援を呼びかけています。
■「日常の困りごと」から開発
長野市の堀内宗喜さん(46)。交通事故の後遺症で首から下が動きません。
この日、県庁を訪れ、自ら開発したあるグッズを発表しました。
事故で四肢麻痺・堀内宗喜さん:
「世界のキッチンのスタンダードに。瓶系調味料にはトップキャプスがついている。それが当たり前の世界」
名前は「トップキャプス」。樹脂製の丸いキャップに、酢や酒など調味料の名前が書かれています。
堀内さんの日常の困りごとから生まれた商品です。
■母も絶賛「これは便利」
自宅のキッチンには、上から見るだけで調味料の種類がわかるよう、ふたに「トップキャプス」が取り付けられていました。
堀内さんは、県営住宅で1人暮らしをしています。
毎日最低2回、ヘルパーに訪問してもらい、起床・就寝時の移動と着替えを、日によって入浴や食事の用意などサポートを受けています。
この日は、市内に住む母親が訪れ昼食を用意していました。
調味料のキャップについて聞くと―。
母・園枝さん:
「忙しい時に『酢とみりん間違えた!』とか。これは便利、一目でわかるから。よくこんなところに気が付いたなって」
考案したきっかけは、ヘルパーが瓶を持ち上げ、調味料の中身を確認する姿を見たことでした。
堀内宗喜さん:
「瓶を持ち上げては下げて意味のない動作をしていた。(その)作業を減らすことでヘルパーさんも少しでも便利になったらいいんじゃないかと」
■22歳で事故、絶望の日々
堀内さんは24年前、交通事故で頚髄を損傷しました。動くのは頭と右手の一部だけです。
事故にあったのは都内の専門学校を卒業して間もない22歳の時。バイクに乗って配達作業中に車と衝突し、心肺停止の状態で病院に運ばれました。
集中治療室で1カ月。奇跡的に命を取り留めましたが―。
堀内宗喜さん:
「ある日、起きたら、この状態よりはるかに悪い状態で絶望した。死にたくてしょうがなかったです」
■スマート家電駆使し1人暮らし
そんな堀内さんが実家を出て、夢見ていた1人暮らしを始めたのは6年前のこと。
背中を押してくれたのはスマート家電でした。
堀内宗喜さん:
「(最初は)ベッドの背もたれを上げることだけ活用してみた。(それまでは)目が覚めても起き上がることができず天井を見るしかなかっただけの時間が、(スマート家電のおかげで)自分で背もたれを上げてDVDを見ることができた。もしかして1人暮らしができるんじゃないか(と思った)」
堀内宗喜さん:
「アレクサ(AI音声アシスタント)、リビングの照明つけて」
「アレクサ(AI音声アシスタント)、リビングカーテン開けて」
堀内さんはボタンが押せません。右手の人差し指でスマホとタッチパッドを操作し、声に反応するスマート家電を30台以上使いこなします。
■自宅は「私の城」
家には自作のドリンクサーバーも。
堀内宗喜さん:
「これでウイスキーの水割りが完成」
ワインディスペンサーとスイッチを押してくれるロボットを組み合わせ、好きなお酒を好きな時に飲むことができます。
つまみの豆も、食べやすいよう吊るした器に入れるなど工夫を凝らしています。
堀内宗喜さん:
「快適。不便がまったくないから(自宅は)私の城です。私のニーズがめちゃめちゃ狭かったので自分で作るしかないんだなって。(自分は)ものづくり気質なんだと思う」
■3年がかりで製作、特許取得
「トップキャプス」は3年がかりで製作しました。アイデアを形にするのは3Dプリンターです。独学で設計も学びました。
簡単に、そして繰り返し付けられるよう、中央にへこみを作り0.1ミリ単位で調整。2025年、商工会議所などに相談しながら、特許を取得しました。裏面には粘着テープも。大きなふたや、平面のない丸いふたでも取り付けられます。
7月からクラウドファンディングで製品化の資金を募っています。返礼品は「トップキャプス」。6個から24個のセットなどを用意しました。
堀内宗喜さん:
「(トップキャプスは)小さなお子さんのいる家庭もそうだし、共働き夫婦とかで家事を共有している家庭。シニア層にも非常に有効な道具じゃないか」
■感謝のバトンを次の世代へ
重い障害を負いながらも生活を楽しむ堀内さん。
電動車いすで街に出て、店の人の助けも借りながら食材の買い出しなども行います。
堀内宗喜さん:
「1人で外出すると、障害や福祉とまったく関係ない人が対応してくれる。そういう機会を増やすことで、一般の人も障害のある人に慣れてくれるんじゃないかって思いがありまして」
かばんからチラシを出してもらい―。
堀内宗喜さん:
「今度、挑戦を始めるのでよろしくお願いします」
日常の不便を諦めず、さらにそれを「誰かの便利にできたら」と願っています。
堀内宗喜さん:
「(自分は)本当に多くの人の力を借りて世話になって、迷惑をかけて生きている。生きていることに感謝なんですけど、助けてくれた人に直接返すことはできない。“感謝のバトン”を次の人に、次の世代に渡していければいいなって。(誰かが)ちょっとでも便利になれば、それが私なりの社会貢献なんじゃないか」
