先週、兵庫県庁で斎藤知事から衝撃的な発言が飛び出しました。
【兵庫県 斎藤元彦知事】「『早期健全化団体』に移行する可能性が。今の財政状況を受け止めていかなきゃいけない」
兵庫県が4年後には、財政破綻寸前といわれる「早期健全化団体」に転落するおそれがあるというのです。都道府県では、全国初です。
「newsランナー」は、過去に早期健全化団体から奇跡の復活を果たした街を取材。
市の名前の権利を売り出す事態に、市民は「(再建に)そこまでやらないとだめなのかと落胆が大きかった」と語りました。さらに、ため池をも売却したという話まで。
自治体が「財政破綻寸前」になったら、住民の「暮らし」にはどんな影響が出るのか。徹底取材しました。
■「かなり厳しめの試算の結果25%を超える」
先週、兵庫県庁で専門家を招いて財政運営を見直す会議が開かれました。
その2日後に斎藤知事が明かしたのは…。
【兵庫県 斎藤元彦知事】「早期健全化団体に移行する可能性が、かなり厳しめの試算をした結果ではあるが、(基準の)25%を超える」
財政難のレベルは3段階。
いくつかの指標があり、収入に占める借金返済の割合、「実質公債費比率」が18%になると「起債許可団体」、25%になると「早期健全化団体」に。
さらに、35%になると「財政再生団体」とされ、これは財政破綻を意味します。
■財政難の要因は「2020年度の出来事」? 前知事は取材依頼に応じず
兵庫県は、まもなく19.3%に至り「起債許可団体」となりますが、2030年度に財政破綻寸前とされる「早期健全化団体」に転落するおそれが浮上しています。
斎藤知事はその「主な要因」として、2020年度にあったある出来事を挙げました。
【兵庫県 斎藤元彦知事】「当時の知事から『全額借り換え』と『県債管理基金残高の確保』という指示があって、地方財政法に抵触する恐れがあったということは、大変遺憾な状況」
時は井戸敏三前知事の時代。
公用地を取得するための債券=公共用地先行取得債(用先債)として借り入れた490億円のうち、338億円分の土地を売却していたにも関わらず、返済を先延ばしにして全額を借り換えていたのです。
違法の疑いもありますが、井戸前知事は関西テレビの取材依頼に応じていません。
■不適切な借り換えがなくても6年後には財政危機
この借り換え分を修正すると、実質公債費比率は最大で0.8%悪化しますが、斎藤知事の部下である財政課長は…。
【兵庫県 中村正紀財政課長】「(実質公債費比率)最大0.8ポイント悪化を抜いたとしても、令和14(2032)年度には、実質公債費比率は3カ年平均25%を超過し、早期健全化団体への移行が見込まれる」
不適切な借り換えがなかったとしても、6年後に財政危機に陥る状況は変わらないようです。
(Q.斎藤知事に有利な方向に県民世論を誘導していることになりはしないか?)
【兵庫県 斎藤元彦知事】「財政運営については、私自身もできるだけ自分で説明することに努めておりますし、資料についてもオープンな形でやらせていただいておりますので」
■主な要因は「金利の変動」 「財政破綻寸前」に市民は「引っ越したいって思うかも」
過去の事業の清算などに加え、負債の主な要因となっているのが金利の変動です。
兵庫県によると、借金の金利負担を今の長期金利とほぼ同じ3%で試算したところ、「早期健全化団体」の基準を超えたということです。
「財政破綻寸前」という事態に兵庫県民は…。
【兵庫県民】「あー、財政破綻するって。知事とかの責任やから、あっちに責任取ってほしいわ」
【兵庫県民】「インフラ(料金)とか上がったら、引っ越したいと思うかもしれません」
■2009年に「早期健全化団体」大阪府泉佐野市 市の名前売り出す事態に
「早期健全化団体」になるとどのような影響があるのか?取材班が向かったのは、大阪府の泉佐野市です。
去年、ふるさと納税の寄付金額が全国3位となった泉佐野市ですが、実は2009年には、早期健全化団体に陥ったことがありました。
その原因を当時の新田谷修司市長は「取らぬタヌキの皮算用ですよ」と話していました。
泉佐野市は関西空港の開港にあわせた「りんくうタウン」の開発や、新しい道路の建設を実施。しかし、バブル崩壊などで借金が膨れ上がったのです。
【泉佐野市 千代松大耕市長(2012年)】「『泉佐野』という市の名称には愛着があるが、企業からの提案を受けようと」
その結果、「泉佐野」という名前の権利を売り出す事態になりました。
【泉佐野市民】「そこまでやらないとだめなのかなという落胆のほうが大きかった」
一方で、「市民の負担は増えなかった」という声もあります。
(Q.当時、何か値上がりしたりした?)
【泉佐野市民】「別に値上がりはしてないんじゃないですかね」
■ため池までも売却しわずか5年で早期健全化団体を脱却
当時を知る市の職員に何があったのか聞いてみると、できるだけ市民に影響が出ないように対応したことがわかりました。
泉佐野市は、活用されていなかった市有地などを売却するなどして、財源をつくったと話します。
当時の担当者が、市内の民間企業が経営する駐車場を案内してくれました。
【泉佐野市 市長公室長 河野陽一さん】「元々、市の持ち物で市民会館が建ってて、そこを売却して、民間が駐車場として(使っている)。当面の財源に活用するために売却しました」
さらに市が所有していたため池までも売却。現在は埋め立てられ住宅地となっています。
他にも、市立病院の独立行政法人化や職員の人員削減、給与カットなどを行い、わずか5年で早期健全化団体を脱却しました。
【泉佐野市 市長公室長 河野陽一さん】「市民に対してはそんなに影響のないように。税を上げるとか、新たな負担を強いるっていうようなことはせずに、(財政健全化の)計画を立てました」
(Q.給与明細を見て、がっくりしたことも?)
【泉佐野市 市長公室長 河野陽一さん】「ないことは、なかったですね…(笑)」
■「4人家族で月1万4000円」の負担増のケースも 2006年に財政破綻の夕張市
一方で、市民に大きな影響を与えた街もあります。
北海道夕張市は、観光開発の失敗などで、300億円以上の借金を抱え、2006年、財政破綻しました。
当時、市民から「市民の先のこと1回でも考えたことありますか!」という声もあがる中、夕張市は職員の給与カットだけでなく、市民税の増税、小中学校の統廃合、下水道料金の値上げを行うなど、市民にも大きな負担が及びました。
40代夫婦で子供2人の4人家族(軽自動車を所有)の場合で試算すると、月およそ1万4000円の負担が増えることになりました。
その結果、来年3月には、借金を完済する見通しです。
■県が財政破綻すると…「県立高校、福祉」など影響のおそれ
私たちの生活へ影響を与える恐れがある行政の財政危機。泉佐野市や夕張市と違って、都道府県が財政破綻寸前になると、どうなるのでしょうか。
財政学が専門の立命館大学大学院・森裕之教授は、「最も分かりやすいのは公立高校です。(校舎などの)建て替えや改修がずっと遅れていくことは当然考えられる」などと具体例を指摘しました。
【立命館大学大学院 森裕之教授】「例えば福祉もそうなんですね。市町村が行う事業なんだけど、県の補助金が削られてくるので、市町村でも市民や町民への事業・サービスが削減されてくる可能性は十分考えられます」
■新税の導入の可能性も…財政学の専門家「マイナスにばかり捉えるべきでない」
さらに兵庫県議会では、県民の負担を大きくする新しい税の導入の可能性も指摘されています。
【兵庫県 中之薗善明財務部長】「新税ということに関しては、なかなか今お答えするのは難しいところですけれども、そうしたこともひょっとしたら出てくるかもしれません」
兵庫県は今具体策を検討していますが、その一方で、森教授は「マイナスにばかりとらえるべきではない」と話します。
【立命館大学大学院 森裕之教授】「僕は財政危機をマイナスにばかり捉えるべきではないと思っています。むしろ、これを機に県の財政構造を全面的に検証し直して、兵庫県民にとって最も大事な使い方に変えていくきっかけにすべきだと思いますね」
混沌とする兵庫県の財政。ピンチをチャンスに変えることはできるのでしょうか?
(関西テレビ「newsランナー」2026年7月23日放送)
