ライフジャケットを着ていても溺れる
愛媛県西条市の加茂川で6月27日、SUP(スタンドアップパドルボード)を楽しんでいた男性3人が溺れる事故が発生し、このうち会社員(53)と公務員(62)の男性2人が死亡した。
現場を取材すると、「ライフジャケットを着ていても“必ず命を守れるわけではない”」川の危険性が浮かび上がってきた。
事故当日、川はいつもと違っていた
事故当日、川は台風7号の影響で上流の黒瀬ダムが放流中で、現場付近もいつもより流れが速く、水深も約20センチ深かったという。
当日と同じくダムの放流で増水中の加茂川を見た青木稜悟記者も「手前を見てみると、川の流れはかなり穏やかなんですが、奥を見てみると水しぶきが立ち、川のスピードが速いことがわかります」と、場所によって川の流れが違うことを感じていた。
LOVE&SAFETYさいじょう・久保一平さん:
「川とか自然で遊ぶ人は僕は大好きですし、みんなに遊んでほしいと思っています。だからこそ事故があると、本当に心が痛いです」
加茂川で「SUP」のガイドなどをしている久保一平さんだ。
久保さん:
「きょうはきのうの雨ですごく水量が増えている状態で、ダム放流中なので、あちら右からの流れ込みはダムの水なので。きょうはわかりやすく(水が)濁っているので濁った川には入らないです」

入る前に確認すべき「2つのポイント」
市街地にも近く、アウトドアの人気スポットとして知られる加茂川ですが、実は全国で51カ所の「水難事故多発地点」の一つに指定されている。
2024年7月には10歳の女の子が死亡するなど、2012年以降、今回を含めて7人が亡くなっている。
事故を防ぐため、久保さんは川に入る前に確認すべき、2つのポイントがあるという。
一つ目は『水の濁り具合』だ。
久保さん:
「山に雨が降って山の土が(川に)入ったりするので、わっと増水するときはまずは濁りますね」
普段、青く澄んでいる川の水が雨が降ったあとは茶色く濁っている。
水の濁りは上流で雨が降り、川が増水していることを知らせるサインだ。
水辺に近づく際は、ダムの放流情報と共にチェックが必要だ。

『流れの速さの違い』に注意
そして、もう一つのポイントが『流れの速さの違い』だ。
久保さん:
「川はまっすぐじゃなくてぐるぐる回っているので、カーブの外側が速くなって内側が遅いだけなので、手前がゆっくりだからといって入っちゃうと、奥で流されたりします」
岸の近くは穏やかでも、川の中央やカーブの外側では流れが速くなることがある。
3人がやっていたSUPは水面に浮かぶボードに乗る水上スポーツで、水流が速い場所では、流れに逆らって岸に戻ることが難しくなるケースもあるという。

「安全な場所はどこにもない」という意識を
水の事故は、浮き輪やライフジャケットなど救命胴衣のあるなしが命を救えるかのどうかの大きなポイントになることが多い。
ただ、今回の事故は警察の調べで、事故にあった3人ともライフジャケットを着用していたことがわかっている。
では、それなのになぜ溺れてしまったのか。
久保さん:
「こっちが滝になっちゃって、人が作った滝っていうのはまっすぐ直線の滝になって、自然にはない流れで非常に危なくて、絶対に近づいてはだめな場所ですね」
警察が最初に現場に駆けつけたとき、男性2人は川の流れに落差がある『取水堰』の近くで溺れていた。
当時、この取水堰からは水が滝のように勢いよく流れ落ちていたという。
久保さん:
「(堰から)落ちた後、水面に出ても戻されて、ぐるぐる回される場所があって、ライフジャケットを着けていても沈められて、抜け出せなくなります」
堰から流れ落ちた水流は下流に向かわず、上流側に戻ることがある。
それが『循環流』だ。
さらに水しぶきが上がると、水中に空気が多く含まれ泡が発生する。
空気が多くなるため、水の浮力が弱まり、“ライフジャケットを着ていても、体が浮きにくくなる”というのだ。

「安全な場所はどこにもない」という意識を
久保さん:
「(他にも遊んでいる)人がいるから安心とは思わずに、川なので安全な場所はどこにもなくて、その意識を持って来てほしいですね」
県警によりますと2025年、県内では19件の水難事故が発生。
このうち半数以上が6月から8月の夏場のレジャーシーズンに起きている。
まもなく本格化する夏を前に、改めて川の危険性を知ることが必要だ。


