体や心の障害によって散髪が苦手な人もサービスが受けられる美容室が玉野市にあります。どんな美容室なのか取材しました。

じっと椅子に座ることが難しい。
「僕、ハサミしない・・・」
ハサミで髪を切ることが苦手。

そんな一人一人の悩みと向き合う美容室が玉野市にあります・・・2025年12月にオープンしたこぐま美容室。スタッフは、経営する大熊智巳さん、ただ1人です。

(福祉美容師 大熊智巳さん)
「ここは福祉美容室を作りたいという気持ちだけで作った場所」
「人の心をどうしたら癒やせるか、元気にさせられるかを考えた時にやりたかったのはマンツーマンで、1対1でできることに必要性を感じたのでそういう美容室を作った」

店内は、車いすでも利用しやすいバリアフリー設計。大熊さんのこだわりが詰まっています。

(大熊さんと客とのやりとり)
「そのまま倒れます」
「すごい、このままシャンプー!?動かなくていいんだ」
「動かなくていいんです」
「高齢者にとっても、いちいち移動大変だから」
「お子さんもそれでぐずついたりしますもんね」
「そうなんですよ」
「これはいい」

シャンプー台は移動式で利用客が歩く必要がありません。椅子は全自動でフルフラットになり一人一人に合う姿勢でサービスを受けることができます。

座席は2席ありますが、一方には鏡がありません。ここにも大熊さんのこだわりが。

(福祉美容師 大熊智巳さん)
「鏡がある方が落ち着く人もいる、無い方が落ち着く人もいるので鏡がないバージョンにしている。車いすの人はこのままシャンプーすることができる。最終チェックは自分が回り込んで目で確認するようにしている」

大熊さんは、もともと循環器内科の看護師でした。入院患者をケアする中で、ある違和感があったといいます。

(福祉美容師 大熊智巳代表)
「本人も家族も「スッキリした」「ありがとう」と言っていたが、その人らしさがないスタイルにどうなんだろうという気持ちが増えた。自分が看護師の経験を生かして、カットもできる看護師になればいいと思い美容学校に行った」

昼は病院で働きながら夜は美容学校に通い美容師免許と福祉美容師の資格を取得。関東地方の美容院で12年間、経験を積みながら福祉施設やグループホームで訪問カットにも取り組んできました。

(福祉美容師 大熊智巳代表)
「岡山出身で、とにかく岡山が大好き。子供が小学校に入学するタイミングで今しかないと勢いで(移住した)」


この日、訪れたのは岡山南支援学校小学部3年の加治 輝(ひかる)くん。軽い知的障害を伴う自閉スペクトラム症で散髪が苦手です。

(輝くんの母・麻耶さん)
「嫌がる感じ。お風呂場でバリカンやってた。際の部分を嫌がる」

元々母親の麻耶さんがこの美容室に通っていて、今回初めて輝くんを連れてきました。

(輝くんの母・麻耶さん)
「こぐまさんだから甘えちゃっているが、普通のお店では色々なものを触るので放置できない」

一般社団法人日本美容福祉学会によりますと、福祉美容師の資格を取得する人は年々増えていて、美容室も多様化しています。

(福祉美容師 大熊智巳さん)
「あえて病名は聞かないようにしている。診断名がどうであれ、色々なパターンの性格の子供がいる。特性というより、こういう性格なんだと向き合うようにしている」

大熊さん、輝くんをカットする秘策を用意しました。

(やりとり)
「見て見てこれ。椅子に座る、タオルを巻く、エプロンをまく、バリカンで髪を切る。できる?これ」

手順を示すイラストを大熊さんが手作りしました。

(大熊智巳さん)
「椅子に座る。(輝くん椅子に座る)できた。できたからこれおしまいね。(最初のイラストを取って机に)次タオルまく。タオルまこう。オレンジ色のタオル」

イラストの効果もあり順調に準備が進みます。

いよいよカットです。

「貸して」

バリカンに触れることも大熊さんは拒みません。

(やりとり)
「痛くないから。ここにブーンブーンブーンブーンやっていい?」
「いいよ」
「ありがとう」
「輝くん見た?」
「切れてる」
「切れてる。上手に切れてる」

苦手だったきわの部分も切ることができました。約40分でカットが終了しました。

「終わり。上手にできました。やった」
「やった」

(輝くんの母・麻耶さん)
「よかった。(Q:出来栄えはどう?)私がやるよりかっこよくしてもらえてよかった」

玉野市で美容室を始めて半年。大熊さんには伝えたいメッセージがあります。

(福祉美容師 大熊智巳さん)
「最後の砦(とりで)ではないが、その人の心のお守りのような存在でありたい。ある意味挑戦だと思う。行きづらい人や子供に特性があって、大丈夫かと感じる親もいると思う。一つの挑戦をここでしてもらえるというのが私も心からやってよかったなと思える」

サービスするのではなく心の交わり、人との関わりを大事にしている。

大熊さんは一人一人と向き合い美容室が苦手な時期がより早く終わってくれたらいいなと話していました。

岡山放送
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