うつ病というと、食欲が減退し、夜も眠れず、常に気分は沈み…と思ってしまいますが、過眠・過食で、“元気に見える時間”もある、そんな従来とは違う特徴のうつ病があります。
「本当は元気なのではないか」「怠けているだけではないか」といった誤解につながることもあり、場合によっては社会生活に支障をきたしてしまう精神疾患です。
他にはどんな特徴があるのでしょうか?
今回、大迫鑑顕医師(千葉大学大学院医学研究院精神医学 特任助教、医療法人鑑朗会メンタルヘルスかごしま中央クリニック院長)の監修で、「非定型うつ」の特徴等についてまとめました。
6~7割が女性患者の報告も
季節的に、「何となく気分が晴れない、五月病かも…」と感じている人もいるかもしれません。
「非定型うつ病」は、五月病の背景に隠れていることもある病態です。
うつ病は、日本では人口の約6〜7%、約15〜16人に1人が、生涯のうちに一度は経験するとされ、いくつかのタイプがあります。
そのひとつが、「典型的なうつ病とは異なる」という意味から「非定型うつ病」と呼ばれる病態です。「非定型特徴を伴ううつ病」は、うつ病の中でも一定数みられる病態とされています。

一般的にうつ病は女性に多いですが、「非定型うつ病」も女性に多い傾向があります。若年女性でみられることが比較的多いとされ、報告によっては6~7割が女性とされます。
(「新型うつ」という言葉がメディアで使われることがありますが、医学的な正式名称ではなく、通称・メディア用語です。非定型うつ病と同義ではなく、うつ病と診断されない状態のものも含まれています)
「甘え」「わがまま」「怠け」との誤解も
「非定型うつ病」には、従来の定型うつ病とは異なる、次のような特徴的な症状が見られます。
・嫌なことでは落ち込むが、良いことがあると一時的に気分が上がる(気分反応性):
・過眠・過食
・手足が鉛のように重く、動けなくなる(鉛様麻痺)
・他人からの批判や拒絶に過剰に反応し、傷つきやすい(拒絶過敏性)
「非定型うつ病」の最大の特徴は、出来事に反応して気分が変わることです。
従来型のうつ病は、“2週間以上、一日中続く抑うつ気分”という状態が診断条件の1つになります。どんなに楽しいことがあっても気分は晴れません。

一方「非定型うつ病」は気分の変動が激しく、気分が重く沈んでいても、親しい友人から遊びに誘われるなど良い出来事には一転して元気が出て、快活になります。
しかし長続きはせず、仕事に行くなどすると、また抑うつ状態に戻るのです。
こうした気分の浮き沈みが繰り返され、これを「気分反応性」と表現します。

一見すると“元気に見える時間”があるため、「甘えてる」「怠けている」「わがまま」と誤解されることがあります。
しかしこれは本人の意思でコントロールできるものではなく、医学的に認められた症状の一つなのです。
「眠り過ぎ」に苦しむ
また、過眠(10時間以上眠る日が週に3日以上)の特徴があります。とはいえ、「よく眠れる」というよりも、「眠り過ぎ」に苦しめられます。
「非定型うつ病」の場合、他者から非難されたと思い込むと気分が落ち込み、併せて眠気が強まります。また後述するように体が鉛のように重く感じてしまうので、起きていられず寝てしまうのです。

よく眠れば気分も落ち着くかというと、そうではありません。
長時間眠っても疲労感が抜けず、日中も眠気やだるさが続くことがあります。睡眠のリズムが崩れ、学校や職場を休みがちになり、日常生活にも支障をきたします。
食べ過ぎて、体重増加も
食欲が増加し、体重が増える傾向も特徴の一つです。これは従来型のうつ病で見られる「食欲低下」とは対照的です。

ストレス時に甘いものを欲しやすくなる人も多く、一時的に気分が和らいだように感じることがあります。
しかし、甘いものの効果は一時的なもので、食べ過ぎによって体重の増加を招きます。女性患者が多いので、太ったことで自己嫌悪に陥り、気分がまた落ち込む悪循環に陥ることもあります。

また、体が鉛のように重く、起き上がるのも困難なほどの強い倦怠感を伴う症状(鉛様麻痺)が現れることがあります。
活動量が低下することで、さらに生活リズムが乱れてしまう場合もあります。
他者の言葉を極端に悪く受け止める
他者の言動に対して過敏になりやすく、わずかな批判や否定的なニュアンスを強く受け止めてしまう傾向(拒絶過敏性)も大きな症状の1つです。
相手は全くそんなつもりはないのに、「自分が批判された」「見下された」「軽蔑された」等と否定的に受け止めてしまう傾向が強いのです。

例えば、職場の上司にささいなことで注意されただけでも「自分の全能力を否定された」と過剰反応して、出社できなくなったりします。反対に怒りだして攻撃的になることもあります。
「今日は頑張っているね」という良い意味での声かけに対しても、「いつもは頑張っていないと思われているのか」と、とらえる場合もあります。
「非定型うつ病」の症状の中でも、人間関係を損ね、場合によっては社会生活に支障をきたす深刻な症状と言えます。
「無理のない範囲で活動保つこと」が回復に役立つ
「非定型うつ病」の治療は、従来型のうつ病とは少し異なるアプローチがとられることがあります。
抗うつ薬は用いられますが、効果が現れにくい場合があり、調整が必要になることもあります。

治療では、抗うつ薬による薬物療法に加え、精神療法や生活リズムの調整などが行われます。
症状に応じて十分な休養も大切ですが、生活リズムを大きく崩し過ぎないよう、無理のない範囲で活動性を保つことが回復につながる場合もあります。
ただし、症状の重さや個人の状況によって適切な対応は異なります。
背景に別の気分障害が隠れている場合もあり、自己判断ではなく専門医へ相談することが重要です。
周囲は「怠け」「甘え」などの批判や、「他にもつらい人がいる」と他人との比較は決してすることなく、「つらかったね」「話せる範囲で聞くよ」と気持ちを受け止めることが大切です。

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