通学中の子供が車などに衝突する痛ましい事故は、依然としてなくならない。子どもを持つ親にとって、交通事故は大きな心配ごとのひとつだろう。

交通事故総合分析センターの発表するデータでも、2019年、歩行中に交通事故に遭った子どものうち、最も多いのが小学1年生(7歳)だと分かっている。そして、登下校中の時間帯が半数近くを占めていたという。

(出典:交通事故総合分析センター)
(出典:交通事故総合分析センター)
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こうした中、本田技術研究所が小学生の交通事故を減らすことを目指してロボットを開発している。その名も「Ropot(ロポット)」だ。

画像提供:本田技術研究所
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これは、手のひらサイズのGPS搭載の装着型機器で、専用スマートフォンアプリと連携させて使用するもの。
子供がランドセルの肩ベルトに取り付けて登下校すると、あらかじめ設定した道路横断地点で、横断前にRopotが振動し、保護者の教えた安全確認を思い出させるのだ。

画像提供:本田技術研究所
画像提供:本田技術研究所

また、車両検知センサーも搭載しており、後方から車が接近している場合にも振動して気づきを促すという。

そしてRopotは、登下校のデータを記録することができ、このデータを見ながら親子で交通安全の振り返りをできる仕組みになっている。

なお現段階では販売計画はなく、ユーザーや学校関係者に試してもらい、使い勝手や有用性などを検証している段階だという。

横断歩道などの安全確認が必要な場所を振動で知らせてくれると、たしかに交通事故から子供を守るのに期待ができそうだ。開発の理由や期待される効果について本田技術研究所の「Ropot」担当者に話を聞いてみた。

きっかけは、7歳の事故の多さに気づいた

――開発のきっかけを教えて

開発者(桐生大輔さん)が歩行中の交通事故死傷者数のデータを見て、7歳の事故の多さに気づいたことがきっかけです。ちょうど開発者の子どもが7歳になる頃だったこともあり、技術で子どもの交通事故を減らすために貢献できないか検討し、Ropotのアイデアを社内コンペに出展したことがきっかけで、研究開発が始まりました。

本田技術研究所 ロポット開発責任者・桐生大輔さん
本田技術研究所 ロポット開発責任者・桐生大輔さん

――どれくらいの自動車のスピードで振動する?

開発中のため、詳細は公表していませんが、一定速度以上の物体を検知した際に振動します。


――自動車以外に反応するものはある?

一定以上の大きさ、速度で接近するものを感知します。現在の試作機は自転車、一定速度以上のランナーも感知しています。

「立ち止まって安全確認する」という習慣づけを目指す

――車が接近するたびに、頻繁に振動することはない?

気づきを促すためのものですので、車群の先頭を検知した場合に振動し、連続した車両に対して振動はしません。


――子供が振動に慣れてしまう心配は?

Ropotは振動により、保護者が教えた「立ち止まって安全確認する」という約束を思い出してもらうための機器です。Ropotに頼るのではなく、「立ち止まって安全確認する」という習慣づけができるようになることを目指しています。

安全確認できたかをデータで確認も可能

――子供の行動データが確認できることで、どんな利点がある?

帰宅後に、保護者と子どもが一緒にその日の歩行経路を確認し、きちんと立ち止まって安全確認できたか、を振り返ることができます。

――実用化はいつごろになりそう?

研究開発段階のため、未定です。

なお、ロポット開発責任者の桐生さんは、Ropot開発への思いをFNNの取材にこう話している。

「お子さまの肩に乗っかって、一緒に通学をして、一緒に安全に帰ってきて、『ただいま』と大きく言ってほしい。そんな世界をつくっていきたい」

子供の登下校中の交通事故は、依然として発生している。「Ropot」の実用化で、子供の交通事故がない世界の実現を期待したい。

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プライムオンライン編集部
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