核家族で共働き世帯が増えた現在、子どもだけで留守番をする機会も増えている。もし、そのような時に地震が起きたら、子どもたちはどのような行動を取るべきなのだろうか?

地震大国の日本において、この想定は全くありえない話ではない。
そのような中、茨城大学の齋藤芳徳教授とゼミ学生(今井菜摘さん、宇野麗奈さん)が、家の押し入れを活用した減災プラン「HIMITSUKICHI」を提案している。
押し入れの空間や揺れに強いと言われる構造に注目し、万一の際には“避難シェルター”として活用するというプランだが、押し入れを子どもが日頃から遊べる秘密基地のような空間とすることから名付けたという。

具体的にはどのようなものなのか? そして、もしもの時のために子どもにはどう教えておくべきなのだろうか?「HIMITSUKICHI」を提案する、一級建築士でデザイン学が専門の齋藤教授に話を聞いた。

共働き世帯の増加で、子ども自身で身を守る必要性

日常的に押し入れを遊び場とし、その環境に慣れておく(画像:齋藤教授)
日常的に押し入れを遊び場とし、その環境に慣れておく(画像:齋藤教授)
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――子どもを対象としたのはなぜ?

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「専業主婦世帯と共働き世帯の推移」によると、2011年以降は右肩上がりで共働き世帯が増えています。つまり、子どもだけで自宅にいる時間帯があり、災害時に子どもが自分自身で身を守る必要性が高まっていることから、保護者不在時を想定したプランにしました。

(画像:独立行政法人労働政策研究・研修機構HP)
(画像:独立行政法人労働政策研究・研修機構HP)

――“避難シェルター”として押し入れに注目した理由は?

まず、日本の一般住宅の押し入れは、柱が四方を囲む設計となっており、揺れに強い構造となっていることが多いです。さらに必要に応じて耐震補強を施せば、自宅の中では比較的、安全な空間となるのです。

そして日頃からこの押し入れを「HIMITSUKICH」として遊んでいることで、もし地震が発生した場合も保護者が帰宅するまで安全かつ安心して待つことができるはずなのです。

また地震発生から数日後、ライフラインは復旧しないものの避難所から自宅生活に切り替えた際も、押し入れは災害前に近い環境が残っている可能性が高く、子どものストレス緩和にも役立つと考えています。

――その押し入れを避難シェルターにするには、日頃からどのような状態にしておくべきか?

まずは、整理整頓をして子どもたちが日常的に遊べる空間にすることです。遊べる場所と日頃から認識しておくことで、万一の発災時においても慣れ親しんだ場所で保護者を待つことができると思います。

また必要があれば、押し入れを耐震補強することも、いざというときの安心・安全につながります。


――押し入れがない住宅の場合は、例えばクローゼットを代わりにすることはできる?

押し入れがない住宅でも、押入れに近い構造のクローゼットであれば、代わりにすることが可能です。

地震発生時には避難シェルターとなる(画像:齋藤教授)
地震発生時には避難シェルターとなる(画像:齋藤教授)

「押し入れが安全」だと日頃から伝えておくことが重要

――いざという時のために、子どもにはどのような防災教育が必要?

普段から遊ばせている押し入れ「HIMITSUKICHI」が安全な場所であり、発災時には避難して待つように伝えておくことです。

そうすることで、保護者が不在の時に地震が発生した場合、子どもたちは教わった通り「HIMITSUKICHI」に避難します。「HIMITSUKICHI」は、日頃から遊んでいるシェルター空間なので、子どもたちは保護者が帰宅するまで、安全・安心して待つことができます。


ーーちなみに、今回のプランは東日本大震災の経験からヒントを得ている?

共同提案者の学生も私自身も、それぞれ茨城県内で東日本大震災を経験しました。大学生でも不安な毎日を過ごした経験から、災害時の子どもの不安を解消する方策を考えました。


「備えあれば憂いなし」ということわざもある通り、事前に準備することは防災・減災においても重要だろう。今回の押し入れの活用法を参考にするとともに、子どもが家で一人の場合にどう行動すべきか、家族で話し合っておいた方がいいだろう。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。