プロが自宅に来て、食事の準備をしてくれる「料理代行」のサービス。
共働きや高齢世帯の増加を背景に需要が高まっています。
こうした中、2025年、新たにサービスを始めた島根県浜田市の女性を取材しました。
ずらりと並んだ料理。
肉じゃがに揚げ物、テーブルに並ぶ数々の「家庭の味」。
料理を作ったのは重兼佳奈さん。
この夏、浜田市で「料理代行」サービスを始めました。
保育園の職員で、1児の母でもある重兼さん。
子育てまっただ中の今、新たな挑戦に踏み出しました。
浜田市のおぐに保育園で重兼さんは栄養士をしており、園児たちの給食づくりに追われていました。
重兼佳奈さん:
すごく忙しいけど、すごく楽しい。忙しさというか、やりがいがすごくある仕事だなといつも思って。
重兼さんは、この保育園に週4日ほど勤務。
園児や保育士約20人分の給食メニューを1人で考え、調理しています。
おいしい給食は、園児たちに大人気!
忙しくも充実した毎日を送っていますが、2025年7月、浜田市では珍しい料理代行のサービスを始めました。
「結婚して出産して育休あけて、フルタイムで復帰した時に、家に帰ってからの夕飯づくりがしんどいって思う時が多くなって」
重兼さんは、3年前、ひとり息子の湊くんを出産。
子育てに追われ、精神的に追い詰められた時、利用したのが「料理代行」でした。
重兼佳奈さん:
こんなに心が救われるんだ、この感動を浜田市のお母さんたちにも伝えていきたいなと思って始めました。
浜田市内のスーパーで、重兼さんが品定めをしています。
今回の依頼は買い出しから。
時折、スマホを見ながら食材を次々とかごに入れていきます。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
頭じゃ覚えきれないので。スマホに打ち込んでて、買い忘れがないようにメモを見ながら、買い物をしています。
旬の食材を使いながら飽きがこないようにとメニューを考え、食材を選ぶと、かごはいっぱいです。
買い物を終え、車で約30分。
向かうのは浜田市内の依頼者の自宅です。
稲澤鈴夏さん:
お願いします。こんにちは。
これが6回目の依頼というリピーターです。
元気いっぱい、5歳の詩乃ちゃんと、まだまだ手がかかる2歳の輝衣ちゃんの姉妹。
そして、夫の4人家族。
仕事や家事に追われる中でも、子どもたちとの時間を作りたいと依頼しました。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
きょうは、肉じゃがと。
詩乃ちゃん:
うわ~!
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
もずく丼と。
詩乃ちゃん:
やった~。
購入した食材やキッチンにある調味料を確認。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
マヨがある?
稲澤鈴夏さん
マヨはある。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
ゴマねーず和えみたいにしたら、酢がそんなにいらないから変えましょうか。
メニューを決め、調理に取り掛かります。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
8品の予定なんですけど時間見つつ、材料見つつ、増やせそうだったら10品いきたいですね。
料理代行の料金は、調理時間2時間半で8000円。(初回6000円)
1週間分、8品ほどを作ります。
まずは、時間がかかる煮物と食材の下ごしらえを同時進行。
限られた時間で仕上げるポイントは「段取り」です。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
ほうれん草を茹でているうえで蒸すことができるように、クッキングシートで上にのせて。
クッキングシートを使って、ほうれん草ともやしを1つの鍋で同時に調理。
洗い物も減る時短テクニックです。
重兼さんが調理している間、鈴夏さんはゆっくり子どもたちとの時間を過ごします。
稲澤鈴夏さん:
まじで相棒って感じ。家庭の相棒。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
よかったわー。
そして…。
稲澤鈴夏さん:
かなちゃん、ちょっと外出てきてもいい?
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
いってらっしゃーい。
遊びたい盛りの子どもたちと外へ。
調理を始めて約1時間、手羽元の甘辛煮のできあがり。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
空いた鍋で肉じゃがをしかけようかなと思います。
そしてここから、怒涛の追い込み。
肉じゃがにもずくや肉、野菜を炒めるモズク丼。
さらに次に作る、れんこん炒めやきんぴらの野菜を用意。
一気に5品を仕上げていきます。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
子どもさんが食べられるものと、お母さん自身が食べたいもの、どっちも作ってあげたいなと。
「できた。」
「やったー!リクエストの肉じゃがうれしい。」
残り時間は30分。
グラタンは具材を炒め、米粉を溶いた牛乳を後入れして「時短」。
揚げ物に、和え物も出来上がり間近。
「少しでも長い期間、家事が楽になれば」と残った時間でカット野菜を作り置きしてフィニッシュ!
食卓には予定より3品多い11品が並びました。
重兼さんの愛情がつまった料理は、子どもたちの大好物!箸がとまりません。
稲澤鈴夏さん:
仕事と家事と育児と、なんか全部、完璧にやろうと思うと本当になんか、どこかにしわ寄せがいっちゃうなって思ってて。
(料理代行の利用で)子どもと過ごせたりとか、仕事の時間に回せたり本当に助かっています。
「こんなに作ってもらったんですかとか冷蔵庫開けたら、まだあるから幸せが続いてますとかって言ってくださる声がすごく励みになるし、もうすごくすごくうれしいですね。
料理代行ことこと・重兼佳奈さん:
1人でも多くのお母さんを助けたいなと思うので、料理代行でバリバリにやっていけるように頑張りたいなと思ってます。
重兼さんがぶつかった「育児と仕事の両立」という壁。
「同じ悩みを抱える人たちの救いになれば」そんな思いが重兼さんの背中を押しています。