国の事業をチェック「JUDGIT!」
税金を納めていると、どうしても気になるのが、その“使いみち”だ。
国のどのような事業に使われ、どのような成果が出たのか、
こうした中、国の事業に関する“予算の使いみち”や“成果”などをインターネット上でチェックできる新たなWebサイトが、7月11日に公開された。
政策シンクタンク「構想日本」や日本大学など4団体が共同で開発した、「JUDGIT!」だ。
たとえば、「オリンピック」と検索すれば、該当する事業が検索結果として出てくる。
そして、事業名をクリックすると、「事業の目的」や「予算額」、「成果」などが表示されるようになっている。
これらのデータの元になっているのは、政府が作成している「行政事業レビューシート」。
政府が実施する約5000事業の予算執行状況を確認し、点検と見直しを行うためや透明性などの目的で公開されているものだ。
ただ、公開されているデータは膨大で検索や確認が難しく、活用が難しかった。
こうした状況から、「構想日本」や日本大学など4団体が「JUDGIT!」を作成。データを整理して検索可能にし、グラフ化などで利用と理解をしやすくしたのだという。
サイトを作るきっかけは何だったのか?
そして検索が可能になったとはいえ、データは膨大なはずなので、ちなみに、「成果が出ている事業」と「成果が出ていない事業」は何なのか?「構想日本」の担当者に聞いてみた。
国の予算は目的や成果を説明しないまま使われていた
――「JUDGIT!」を作ろうと思った、きっかけは?
従来、国の予算については、目的や成果について説明をしないままに、多くの事業が行われていたのが実態でした。
2008年、自民党が行政改革を進めるために党内に作った「無駄撲滅チーム」の一つの班で、日本初の国の事業仕分けを行いました。
「構想日本」はそれに協力し、議論の基礎資料とするため対象事業の「事業シート」を初めて作りました。
これは、行政機関が行っている事業毎に「何が目的か」「事業の内容」「予算額」「事業予算の支払い先」「どんな成果があったか」など約30項目をフォーマット化して各省の担当課が記入するものです。
翌年、民主党政権となり、政府による事業仕分けが行われた際も「事業シート」が作られました。その後、安倍政権になってから現在に至るまで「行政事業レビューシート」と名を変えて、約5000ある、国の事業すべてについて継続して作られています。
「行政事業レビューシート」は2014年以来、内閣官房がエクセルでデータベース化して公表していましたが、「JUDGIT!」は、そのデータベースに検索機能などをつけ、誰でも利用できるサイトとしてオープンしました。
国の予算や事業を通して政治・行政が多くの人にとって「自分ごと」になる。政治・行政は、緊張感が出てレベルが上がる。それが「JUDGIT!」の目指すところです。
事業によっては成果を掲載していないものもある
――予算の「成果」は「行政事業レビューシート」に明記されている?
事業についての全ての情報は政府が公開している「行政事業レビューシートのデータベース」に掲載されています。予算の成果も同様です。
ただし、事業によっては成果を「測定不能」として掲載していないものもあります。
それが妥当なのかどうかも含めて国民がチェックできると良いと思っています。
――「JUDGIT!」でチェックできる予算の使いみち、成果はいつの事業から?
「JUDGIT!」に掲載しているレビューシートは2015年度以降です。
ですので、成果等は2015年度以降の情報になります。
成果が出ているのは「訪日旅行促進事業」
――「成果が出ている事業」、たとえば?
「訪日旅行促進事業(訪日プロモーション事業)」です。
訪日旅行客数が順調に伸びていることが読み取れます。
成果が出ていないのは…
――「成果が出ていない事業」、たとえば?
明確に成果が出ていないような数字は、官僚たちもなかなか作らないので、レビューシートだけで「これは成果が出ていない」と言い切るのは難しいのですが、たとえば、「地方への移住・交流の推進に要する経費」です。
成果のところには『「移住・交流情報ガーデン」における移住・交流に関するあっせん件数』という自分たちでやっていることの範囲だけで書いています。
しかし、本来は、目的欄に「地方から東京圏への人口流出に歯止めをかけ、「東京一極集中」を是正し、地方への新しい人の流れをつくる」とあるように、日本全体のマクロな数字を掲載するべきです。
――なぜ、このような表現になっている?
マクロの状況では「新しい人の流れ」を作れていないため、このような表現になっていることと思います。
このような事業は、他にもいくつもあります。ぜひ、探してみてください。
このサイトをどのように利用してもらいたいか、と「構想日本」の担当者に聞くと、
「政治家やメディアなどが事業の内容をチェックするために使うのみならず、たとえば就職活動をしている学生が自分の希望する企業が政府とどのような事業を行っているのかとか、ビジネスで政府とともに何かをしたいと考えている人が既存事業の情報を収集するとか、色々な使い方が考えられます」と答えてくれた。
ふるさと納税は直接的に還元されるが、税金の“使いみち”もどうせ払うなら有効に活用して欲しいという思いは同じだ。気になる人は是非一度チェックしてみて欲しい。