「サキドリ」。
担当は、矢野寛樹ディレクターです。

【矢野寛樹ディレクター】
このコーナーでは、今知りたい、旬の情報をお伝えします。

今回の「サキドリ」は、「いじめは無くならない」です。

広島県教育委員会の調査では、ここ数年、県内の小学校から高校、特別支援学校でのいじめの認知件数は、増加傾向にあるんです。
「いじめは無くならない」とすれば、大切なのは、「いじめを重症化させない」という事なのです。

そのためには、何が必要なのでしょうか?先月、広島市内で、ユニークなセミナーが開催されました。

<8月2日 「いじめ防止プロジェクト」 @広島グリーンアリーナ>

このセミナーは、広島市PTA協議会が主催して行われました。
セミナーの司会を務めるのは、上越教育大学大学院の高橋知巳教授です。
全国で、セミナーや講演を行う教育環境作りの専門家です。

【上越教育大学大学院・高橋知巳教授】
「(いじめを防ぐ)具体的な行動として何ができるのかという事を子ども側からも大人側からも言うこと。発信することはすごく大事だと思っています。予定調和的に終わることを僕らは求めていないので、自由に話してもらっていいと思う」

つまり、大人も子供も本音を言い合おうということなんです」


セミナーには、保護者や教育関係者と小学校の高学年から、中学生の、およそ250人が集まりました。

セミナーの冒頭では、現在、学校で行われている「いじめに関するアンケート調査」に、辛辣な意見が寄せられました。

【上越教育大学大学院・高橋知巳教授】<参加者の意見を紹介>
「アンケートは形だけでやっている感。形だけのアンケートでは毎回回答するのが手間です。あんまり本音を書けない。意味がないと思う。あったとしても書いて何になるのと思っている。正直あんなものは役に立っていない。いくらアンケートでも正直に書き辛い。誰がアンケートの内容を見るのか詳しく分からない」

セミナーでは、スマホやタブレットを使って、チャット形式で、意見が発信できるシステムになっています。

意見はモニターに表示されますが、個人の名前が出ないので、本音を言いやすいというわけです。

【上越教育大学大学院 高橋知巳教授 ・ スタッフ】
「もう173件きています」「すごい勢いできています」「こういった研究会をやってもいじめはなくならないのでは、これまでもこういった研究会をやっていじめが無くならなかったのは何故なのか。その振り返りをしたことがありますか?」「手厳しい意見が・・・親御さんの意見だと思います」

専門家は「いじめ問題」をどのように見ているのでしょうか?

【上越教育大学大学院・高橋知巳教授】
「いじめをなくすことは、ほぼ不可能だと思います。他者を攻撃するという心の持ちようは人間にはあると思う。それを重症化させないために大人がどのように見守るかが1番重要」

専門家の意見は、「いじめはなくならない」ですから、重症化させない事が大切なのですが、重症化してしまう原因があると高橋先生は言います。

【上越教育大学大学院 高橋知巳教授 ・ スタッフ】
「ここにも書いてあるんですが、アンケートに書いても応えが返ってこない。取らされるだけ取らされたアンケートにフィードバックが来ないとやっている側は馬鹿らしい時間も労力も使っているのに」「それが援助要請のハードルを上げている事にもつながっている。苦しいと声を上げても何も変わらないとなったら誰も声を上げなくなるというのがこの結果なのです」「そういう書き込みはたくさんありました」

高橋先生は、地域の学校などと連携した施設のセンター長も務めています。
アンケート調査とフィードバックは、いじめの重症化を防ぐ重要なポイントだと指摘します。

【上越教育大学大学院・高橋知巳教授】
「僕のいるセンターではアプリ化を図っています。アンケートを書く時に子供たちがチェックしやすいように、タブレットにアプリを仕込んでいてアプリから(センターに)報告するようにして報告してもらったら、その学校に僕たち大学の教員が直接行って、その子に対する教育相談をもっとしっかりしてくださいという話をその学校にしに行ったりしています。フィードバックしています。そういった事をしながらいじめをつぶす事はすごく必要だと思います」

セミナーでは、「何故、いじめが重症化するのか」その対策を話し合い発表していきます。

<参加者の意見発表>
「教師の見えない所で行われている事が1番の問題でもあるし、見えない所でやったら相談もしにくい」
「個人情報という名のもとに情報が出にくくなっていると最近思っています。実際にそういった事で困った件があった」

セミナーでは最後に全員で、「自分たちが出来る事」子供たちは、「大人にして欲しい事」などをグループで話し合いました。

<グループの話し合い>
「一旦は見守っておいてという感じ」「大人が関わったからといって何かが変わるわけじゃない」「保護者に言ったら無理」「僕らが保護者に相談したくないのに先生は保護者に相談する」

<グループの話し合い>
「親からしたら何で言ってくれなかったと思うけど、子供たちからしたらそう言うことが1番難しい事」

子供たちが考えた、「大人にしてほしい事」、「自分たちができる事」とは・・。

<意見発表>
「先生と毎日コミュニケーションをとれるものがあればいい。そういうことがあれば日々の事も報告しやすいし、先生方も何かいけない事があればすぐに気づいてもらえると思う」

<意見発表>
「悩みがある生徒に積極的に先生が聞きに来てほしいという事と聞きに来たら適当に対応するのではなくて最後までしっかり対応してほしい」

<意見発表>
「被害者の意見は子供の方が理解できると思う。だから生徒会とか子供たちが被害者の事を聞いてあげることが大事だと思う」


広島の現状を、高橋先生は、どのように見たのでしょうか?

【上越教育大学大学院・高橋知巳教授】
「自分を持っている子供たち、自分を持とうと思っている子供たちが多いという印象があります。いじめられている被害者が『助けて』という援助要請の声を上げられない事が原因だという指摘が子供たちの中からも多かった。ああいう子たちをどうやって大人が守れるかという点が広島の大人たちの課題なのかなと感じました」

<スタジオ>
「いじめは無くならない」だから、早い段階で、「いじめの芽」を摘まなければならない。というのが、高橋先生の意見です。
アンケートの件などでは、参加者からは辛辣な意見が多くありましたが、現状、教育現場で、懸命に取り組んでいる先生方がいらっしゃるとは思います。
しかし、現実には、いじめは増加傾向にあるという事実もあります。

【コメンテーター:エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん】
「子供たちに聞くといろいろ言ってくれるので、こういう事を続けることが大事だと思いました」

テレビ新広島
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