続いては、7月、伊万里市で発生した強盗殺人事件。逮捕・起訴されたのはベトナム人の技能実習生で、いまも動機は分かっていません。地域と外国人の共生が進む中、関係者は根拠のない差別や偏見に警鐘を鳴らしています。
【野口貴史リポート】
「こちらの奥に事件現場があるとみられますが、規制線が張られて奥に入ることはできません」
静かなまちに、衝撃が広がりました。
7月26日、伊万里市東山代町で親子が切り付けられ死傷した事件。
椋本舞子さん40歳が死亡しました。
強盗殺人などの疑いで逮捕・起訴されたのが、ベトナム国籍の技能実習生ダム・ズイ・カン被告24歳。
【現場近くで働く人】
「1番はびっくり。妻は寝られないって言っていた」
カン被告の自宅は、現場からわずか50メートル。
他の技能実習生と一緒に、寮で暮らしていました。
この寮からは、血の付いた包丁1本が押収されています。
【現場近くで働く人】
「もう何もない方が良い。外国人さんと仲良くできれば」
伊万里市には、900人を超える外国人が暮らしています。市内の建設業者は、外国の技能実習生を「貴重な労働力」だと話します。
【黒木建設・出雲正一専務取締役】
「実習生全てが事件みたいなことを起こすわけではない。うちの会社の3人は、一生懸命にやってくれている。本当に3人の働きは戦力」
カン被告も、去年1月から伊万里市の食品加工工場で働いていました。
事件当日も、昼ごろまで、休日出勤していたことが分かっています。
無断欠勤や遅刻などはなく、勤務態度はまじめだったということです。
Q.事件について知ったときどう思った?
【インドネシアからの技能実習生・リドワン・モハマド・アンワルさん】
「びっくり。同じ外国人として残念。真面目に働こう」
一方、伊万里市で技能実習生などに向けた日本語教室を開く男性は。
【日本語教室いまり・中村章さん】
「日本の現実をみると、日本人だけではやっていけない。彼らが日本を支えている一員でもあるというそういう目でみていただければ」
技能実習生の多くは、寮などで共同生活をしています。日本で働き、家族への仕送りもしています。
Q.日本に来たきっかけは?
【リドワン・モハマド・アンワルさん】
「家族のため。ここに働いて毎月お金を送るため」
Q.インドネシアに帰りたいときある?
「もちろんある。でもお金のために家族ためにここで働かなければならない」
この日は、インドネシアの郷土料理・メンドアンを作っていました。
【リドワン・モハマド・アンワルさん】
「みなさんにインドネシア料理があるというのをみせたい。みなさんが来るからチャンスと思って作った」
【鈴木悠斗】
「いただきます。美味しいです。パリパリでネギが良い塩と食感。またすぐ食べたくなる」
Q.どれくらいの時間かけて準備した?
【ワヒュディンさん】
「最初から最後までで1時間くらい」
【アノム・クンチョロさん】
「うれしい。インドネシアの食べ物は、説明したりして日本人に食べておいしいと言うのが良かった」
【黒木建設・出雲正一専務取締役】
「日本人がやらないことでも彼らは率先してやってくれている部分がある。思いやりが非常に素晴らしい」
【技能実習生】
「まぶしくて目を開けてられない」
この会社では、週に1回、技能実習生の日本語の指導や生活状況の確認を行っています。
【黒木建設・出雲正一専務取締役】
「技能実習生は、受け入れ側が技能実習の責任者・生活指導員の役割がある。それにも素直に行動している」
被害者の女性を包丁で脅して現金を奪い、殺害した疑いが持たれているカン被告。
調べに対し「何も話したくない」と供述しています。
真面目な仕事ぶりを見せていた中で、なぜ事件を起こしたのか?
動機は分かっていません。
今回の事件で厳しい目が向けられた、「外国人」や「技能実習生」。
一方、地元で共に生活する中村さんは根拠のない差別や偏見に警鐘を鳴らしています。
【日本語教室いまり・中村章さん】
「外国人を排除しろとかそんな動きがあったりもしている。自分の文化だけを中心にその先にあるのは争いしかない。お互いの文化を認め合いながら一緒に共生していくそういう世界が平和にも繋がってくると思う」