「子どものむし歯」についてお伝えします。「熊本県は子どものむし歯が多い地域」ということはライブニュースでもこれまで何度かお伝えしてきました。
1歳半健診で「むし歯がある」と診断された子どもの割合を都道府県別に少ない順からランキングにしたところ過去10年間で、熊本県は最下位・ワーストが2度、その他も45位や46位と最下位付近です。
最新の2023年度のデータでは『32位』。過去10年間で最も上位で状況は改善しつつあるといえます。しかし、それでもまだ1歳半に限らず、他の年齢でも熊本県内は全国平均より子どものむし歯が多い状況です。むし歯が多い県、よりはむし歯が少なく歯がきれいな県、となりたいですよね。「むし歯が多い県」脱却に向け、改善のカギを探ります。
【イベント参加者・小学生】
(歯みがきは好きですか)「めんどくさいです」
(どういうところが面倒くさい?)「寝るときにいつもやっているんですけど早く寝たいので…」
【イベント参加者・3歳児の母親】
(子どもの歯みがき、スムーズにできていますか?)
「なかなかできていない。寝転がってほっぺたを引っ張って奥歯を磨くとか…そういうところが難しい」
熊本市歯科医師会が毎年6月に開いているイベント、『歯の祭典』です。むし歯予防啓発のためまずは子どもたちに歯に興味を持ってもらおうと歯医者さん体験などのブースが設けられました。
【熊本市歯科医師会 西正浩理事】
「子どものころから歯に関心を持つ、きれいにしてもらえると将来的にもそれは続いていくと思うので歯を削らない、抜かないということを一番の関心ごととしてほしい」そもそも、なぜ熊本にはむし歯のある子どもが多いのでしょうか?県歯科医師会の伊藤明彦(いとうあきひこ)会長に尋ねました。
【熊本県歯科医師会 伊藤明彦会長】
(熊本がむし歯の子どもが多い理由は?)「フッ素の活用が遅れたのも一つあるかもしれない」
歯の表面を強くしむし歯を防ぐ効果があるとされる『フッ化物』。フッ化物を利用したむし歯予防にはうがいの『フッ化物洗口(せんこう)』や歯の表面に塗る『フッ化物塗布(とふ)』などがありますが、こうした取り組みが県全体として遅れたことがむし歯が多い要因の一つではないかと指摘します。
【熊本県歯科医師会 伊藤明彦会長】
「例えば佐賀県では非常にむし歯の多い県だったがフッ化物洗口を始めて(むし歯が)ぐっと減っていって今は上位、ほとんどむし歯がないくらいになっている。やはり小中学校でフッ化物洗口をすることは大切だ」
伊藤会長から佐賀県の事例が紹介されましたが他にもモデルケースとしてよく名前が挙がるのがむし歯の少なさ全国トップクラスの常連の新潟県です。新潟県は全国に先駆けて1970年代からフッ化物洗口に取り組んでいます。
熊本県によりますと熊本県内でフッ化物洗口の取り組みが広く普及したのは10年前の2014年ごろからですので新潟県ではかなり早い段階からむし歯予防に力を入れていたことがわかりますよね。ただ、こうした良い事例は遠い町の話、ではありません。県内の市町村にも「むし歯ゼロ」を誇る地域があるんです。取材してきました。
やってきたのは1歳半のむし歯が『ゼロ』の町、玉名郡長洲町です。6月9日、町内のこども園で行われていたのは1歳から3歳までを対象にしたフッ化物塗布です。長洲町では30年前の1995年から未就学児へのフッ化物塗布事業を行っています。フッ化物塗布は通常、歯科医院で受けると1回あたり1000円前後費用が掛かりますが、長洲町では歯科医師などが町内の保育施設を訪問し、年に3回、無料でフッ化物塗布を行っています。
【長洲町役場歯科衛生士 廣岡奈菜さん】
「早い段階からフッ化物塗布に取り組んだりフッ化物洗口も始めたので長洲町としては歯科保健に関する取り組みはすごく力を入れている自治体の一つではないかと思う」一方、『歯の教育』にも力を入れています。
【歯科教室】「磨くときはどんなふうに磨くんだった?力を入れてゴシゴシするんだったっけ?」
(児童)「やさしく!」「そう、力を入れずに優しく小さくゴシゴシするんだったね」
こちらは今週月曜日に長洲小学校で行われた歯科教室。町の歯科衛生士が今月から来月にかけて町内すべての小学校、全クラスを訪問し、歯みがきの仕方や歯周病についてなど歯にまつわる授業を行っています。
【小学3年生感想インタ】
「自分ではきれいに磨けていると思っていたけど思っていたより磨けていないんだなと思った」「仕上げ磨きをしてもらうようにしたい」
長洲町の12歳児のむし歯有病者率は県内の市町村で最も低く、熊本県や全国の平均を大きく下回るなど取り組みの成果はデータにも現れています。
(熊本県27.76/長洲町4.55全国平均26.60)
【長洲町役場歯科衛生士廣岡奈菜さん】
「まずはかかりつけの歯医者さんを持ってもらって症状がないうちからメンテナンスをしっかり受けてもらうことがむし歯や歯周病を予防することにつながると思う」
【熊本県歯科医師会 伊藤明彦会長】
「熊本県内だけではなく全国のいい事例があればそれに倣ってやっていく。急に改善することはないかもしれないが徐々に徐々に改善していって熊本県もむし歯がないような県になることが理想」
こうしたフッ化物を活用したむし歯予防の取り組みは市町村ごとにばらつきがあるのが現状ですが、集約している熊本県によりますと「年々、取り組む市町村が増えて県全体に広がりつつある」ということです。また、それに伴ってむし歯がある子どもの割合も徐々に減少してきています。こうした活動を継続していくことで5年後、10年後…むし歯のある子どもがさらに減った、となればいいなと思います。