国が負担する医療費などの削減を目指して、 自民・公明・維新が 「OTC類似薬」の保険適用を外す政策を進めています。私たちが日常的に使っている薬が保険適用外になるかもしれず、生活に大きな影響が出る可能性もあります。
これについて、6月18日放送の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した橋下徹さんは、患者の自己負担が増えることに理解を示しながら、保険制度全体を維持するために考える必要性を指摘し、「国民の皆さんがどっちをとるか判断したらいい」「提示して『どっちをとりますか』というのが政治家の役割」だと述べました。
■「OTC類似薬」の保険適用外す議論が進む
そもそも「OTC医薬品」とは、「OTC=Over The Counter」の略で対面販売を意味していて、薬局などで買うことができる薬のことで、費用は全額自己負担です。 かぜ薬や湿布などがあります。
今回、議論になっている「OTC類似薬」というのは、成分・効果は市販薬とほぼ同じですが、医師による処方箋が必要な薬で、保険が適用され、費用負担は年齢などに応じた所定の割合になります。
OTC医薬品とOTC類似薬で実際の負担額がどれほど違うのか。
一例として、アレルギーで服用する市販薬「アレジオン20」は24日分で約2000円、処方薬の「アレジオン錠20」は3割負担で約105円となります。
こういったOTC類似薬を保険適用外にすることで、日本維新の会によると年間3500億円の医療費が削減できるという試算もあるということです。
■「精神的不安」の面でも大きな問題だと矢沢心さんは自身の経験から話す
番組に出演した矢沢心さんは、長い間手荒れに悩み、皮膚科に通院していた経験から、「薬をいったんやめた時に夜中眠れないぐらいかゆくて、精神的にちょっとまいってしまう時期があった。薬の金額が上がると『やめとこう』と思ったりして精神的に不安にもなる。そういった方にとって大きい問題だと思います」と話しました。
街の皆さんへのインタビューでは、80代の女性が、もし保険適用にならなくなったら「(薬を)止める。悪くなってもしゃあないって感じちゃう。年金生活だと特に」と話しました。
一方で、普段整形外科に通院しているという50代の女性は、「(痛み止め)テープは必要なければ『いらないです』と言って調整するようにしています。普通にもらっていたら医療費が膨らむので。…考えながらやっていかないと、とは思っていますね」と医療費が過度に膨らむことがないよう配慮していると話しました。
ここまでの話を受けて、元フジテレビ・ワシントン支局長の風間晋さんは、「『国が負担する医療費』という括り方がそもそも間違っている」と指摘しました。
【風間晋さん】「国が負担する医療費という括り方が、僕はそもそも間違っていると思う。国民が税金と社会保険料で負担する医療費なわけです。いっぱい出される処方薬の経費は、みんなが負担しているんです。薬を使っている人も使っていない人も。それを“あっちの方の国が負担”とかという議論にしちゃいけないんじゃないか」
■「保険という全体の仕組みを考える」必要性を橋下氏は指摘
橋下徹さんは実際に薬を使っている方の負担が増えることには理解を示しながら、保険制度全体を維持するために考えることが必要だと話しました。
【橋下徹氏】「実際にお薬を使われている方にとって負担になるというのは、本当にそのとおりなんです。端的に言えば『薬を使っていない人が、保険料とか税金でどこまで負担しますか?みんなで支え合いますか?』という話で、いま医療給付は43兆円、これからもどんどん伸びるんです。じゃあ保険料を上げていくのといっても、保険料を上げるの大変。じゃあ税金も上げていくんですかというと、これも大変だと」
【橋下徹氏】「そうなれば保険という全体の仕組みを考えると、本当にリスクの高い高額療養費制度などは保険で面倒をみるけれども、そうじゃない軽めのものは、自分たちでやっていきましょうとして、保険制度全体を維持しましょうということなんです」
【橋下徹氏】「メディアが気をつけなきゃいけないのは、OTC薬とOTC類似薬の比較。『自分で買ったら2000円、保険適用で105円』だと。実はここにお医者さんの診療報酬が入っていないんです。これだけで比較したらダメなんです」
【橋下徹氏】「医師会の人たちがものすごく反対するのは、OTC類似薬を保険から外すと、病院に行かなくなるから、医者さんにその分診療報酬が入ってこなくなる。薬代よりもお医者さんの診療報酬の方が高くて、データはないのですが、ある報道によれば実はお医者さんに通うお金を含めると、市販薬を買う2000円とかぐらいの金額になっているではないかという意見がある」
【橋下徹氏】「それを(病院に行くことの負担も含めて)考えて、自己負担するのかどうか。病気と一緒にしてはいけないかもしれないけれど、自動車保険だと、車がちょっとかすったときに自己負担しようか、それとも保険使おうかとなるじゃないですか。そうしていかないと、保険(制度全体)は守られないんじゃないか」
【橋下徹氏】「それから実際にお薬を使う方は、保険で支えるのではなくても、税金の医療費控除というやり方もあるので、一定額を使えば所得税を下げるとかある。保険に関しては『みんなでよく使い方を考えましょう』というのが必要だと思います」
【橋下徹氏】「いま維新が3500億円削減というのは、たぶん薬代だけなのですけれど、医師の診療報酬を加えると1~2兆円という数字も出てきているんです。それぐらい削減できると。その分保険料を下げることができる」
■医師は“保険外し”による「健康被害リスク」を懸念
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】「医師の方にこの問題を聞いてみました。医者というのは、例えばかぜ薬だと治るまでの分量しか出さない。分量を守ってもらって、経過観察をすることが大事であって、ずっと診察して診療報酬をとっているみたいに言われるのは心外だというお医者さんもいました。もうけるためじゃなく、あくまでも治ったかどうか判断するためにしていることを分かってほしいと。そこは納得するところです」
いまい皮フ科・今井康友医師によると、OTC類似薬の“保険外し”によって健康被害のリスクが心配だということです。
薬が自己負担になって高くなるのだったら病院に行かなくなり、受診控えによって重大疾患の診断・治療が遅れてしまう恐れがあるといいます。
さらに、自己判断で薬を誤って使用して、症状が悪化してしまい、その結果余計に医療費がかかる恐れもあるということです。
【橋下徹氏】「こういったことも、データをとらなきゃいけないのですが、それがない。しっかりデータをとって、本当にこう(余計な医療費がかかる)なのか。僕の感覚だと本当にダメだったらお医者さんに行きますし、これぐらいなら一般市販薬だという自己判断というのも、僕は結構正しいんじゃないかと思います」
【橋下徹氏】「僕はこういう問題提起をして、国民の皆さんがどっちをとるか判断したらいいと思うんです。もしこれを全部保険適用するんだったら、これだけ保険料を上げていきますよと。(何らかの負担増を)提案する。今までそういうことにフタをしていたけど、それを提示して、『どっちをとりますか』というのが政治家の役割だと思います」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年6月18日放送)