JALとTSKさんいん中央テレビのコラボ企画です。
今回は、JALふるさと応援隊の福田奏海さんが、手書きの文化が失われつつあるなか、その文化を支えてきた道具のすばらしさを継ぐ職人を目指す大学生を取材しました。
島根・松江市の古くからの商店街の一角に店を構える「はらぶんパピロ21」。創業約90年…市民にもおなじみの文具店です。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
すみません、今作業中でしたか?
島根大学 材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
万年筆の修理をしていました。
作業の手を止めて応えてくれたのは、山田航士さん。島根大学材料エネルギー学部の3年生です。
学業の合間をぬって、1年ほど前から「はらぶんパピロ21」でアルバイトとして、万年筆を修理しています。
“手書き文化”の象徴して愛されてきた「万年筆」。今や見かけることも少なくなりました。
万年筆を修理する専門の職人は、メーカーを除くと国内ではわずか10人足らずといわれます。山田さんはアルバイトとはいえ、全国でも貴重な職人のひとりです。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
ショーケースに並ぶ万年筆をみてかっこいいとずっと思ってて好き。訳わからず好きだった、好きに理由なく好きだ。
「万年筆が好き。万年筆に関わって生きていきたい」…中学生のころからそう考えた山田さんは、職人を目指すことを決意。
独自に修理方法を学びましたがそれでは足りず、5年前、高校2年の時に松江市にあった専門店「中屋万年筆店」の主人に教えを乞いました。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
中屋さんには、教えてほしいとお願いしたけど断られた。もう万年筆の時代は終わった、勉強して別の道をいきなさいと。
それでも山田さんは「師匠」のもとに通い詰め、師匠の奥さんの助けも受けながら、まさに見よう見まねで師匠から盗み、技術を身につけていきました。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
ペンのここは直したんですよ。間の割れが閉じたり開いたりするとだめなので。
ペン先の調整など、万年筆の修理には繊細な技術が必要です。山田さんが調整した万年筆を見せてもらうと…。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
これが価格の低い、求めやすいペンです。同じなんですが、こちらが僕が調整したものです。書き味を比べてみてください。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
あ…全然違いますね。とてもなめらかに書けます。
職人として勤務するのは、隔週土曜日だけ。多い日には、1日に4、5本の修理の依頼を受けます。
まだまだ修業中という山田さん。それでも腕は確かなようです。取材した日も…。
男性客:
修理できる人がいると思ってなかったので。
出雲市から訪れた男性客は話をするうち、中古で購入した万年筆の修理を山田さんに依頼することを決めました。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
ペン芯大きいですね。
パーツを見た山田さんはピーンときました。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
モンブランは万年筆の王様。「146」と「149」は手が届かないので、「149」来たーと思って。
思いがけず、レアものの高級万年筆の修理することに。万年筆好きの血が騒ぎました。
客:
これ完璧なんじゃないですか。すごく良いですよ。
客:
これが本物の万年筆なんだってわかりました。本当に良かったです。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
さわったのは3回目、ちゃんと修理したのは初めてだったので、ドキドキでしたけど良かったです。
近年の文具業界は、個性的な新商品が相次いで投入され、個人需要が高まりをみせる一方、オフィスでの需要は落ちこんでいるといいます。
背景にあるのはパソコン、スマホの普及やペーパーレス化の進展。
かつて当たり前だった手書きの文化が失われつつあります。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
万年筆を使う方も減ってきている中で、山田さんのような若さで道を決めて、不安はありませんか?
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
新たに文具に触れようとする若い子は増えている。単なる活字になってしますと、その人の心が出ない。手書きは特別な存在になるけれど、残り続けると思っている。
それでも山田さんは、人類の英知が宿る万年筆に可能性を見い出し、その技術と文化を次の時代に渡そうとしています。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
山田さんの目標をお聞かせください。
島根大学材料エネルギー学部3年生・山田航士さん:
今は無い、ユーザーさんに会うような新しい万年筆を作れたらと思っています。最終的には、白潟にお店を出したい。僕の好きな街なので、ここにお店を出したいというのが15年、20年の目標です。
誰も見たことのない夢の万年筆を作りたい。夢をかなえるため、大学でも「素材」研究の道を選んだ山田さん。将来目指すのは、名だたる万年筆メーカーが生まれたドイツへの留学です。
「好き」の力で文化と技術を守る。松江の小さな文具店から、山田さんは夢への一歩を踏み出します。
JALふるさと応援隊・福田奏海さん:
将来への不安はあるとおっしゃっていましたが、常に前だけを向いて挑戦する姿に私も心を動かされ、勇気をいただきました。