11日の特集、テーマは「ヴィーガン」です。
ヴィーガンとは「動物由来である食べ物を口にしない完全菜食主義」のことで、例えば肉はもちろんですが、チーズやたまご、魚でとっただしなども口にしないということです。
外国人観光客のほか、健康志向の高まりでヴィーガンを取り入れている人も増えてきています。
そうした人たちにもおいしいものを楽しんでほしいと、鹿児島の名物料理のヴィーガンメニューが登場しています。
気になる味はどうなのか?
メニューが生まれた背景を坪内キャスターが取材してきました。
鹿児島市天文館のラーメン店「こむらさき」。
1950年創業。
70年以上にわたって地元の人々や観光客に愛され続けているお店です。
こむらさきのラーメンといえば鶏と豚を丸ごと、そして椎茸を煮込んだスープに、つるっとした特製の麺。
鹿児島県産の黒豚を使ったチャーシューがたっぷり乗った、動物性のうま味が欠かせないラーメンです。
そんな老舗ラーメン店に2025年3月に登場したのがヴィーガンメニューです。
ラーメン専門 こむらさき 鹿児島・橋口麗さん
「自分自身が肉が食べられなくなってきた。そういう人が身の回りに多くなってきた。年配の人たちにも体にもっと優しいものを提供したいという思い」
とはいえ、創業当初から変わらないラーメンのみで営業してきた、こむらさき。
ヴィーガン対応の新しい味を出すことに葛藤もありました。
ラーメン専門 こむらさき 鹿児島・橋口麗さん
「ラーメン一本でやってきたプライドがやはりある。そこをどう発想を転換していくか」
こうして誕生したのが、一日限定10食の「薬膳麻辣」。
豆乳をベースに、椎茸と昆布でとった出汁をブレンドしたスープを使ったヴィーガン対応ラーメンです。
トッピングのキャベツ、ねぎ、シイタケ、そして麺は、通常のラーメンと同じものを使っています。
上にたっぷり乗ったピリッと辛い薬膳麻辣醤が味の決め手になりました。
坪内一樹キャスター
「全然こむらさきのラーメンと違いますね。(一口食べて)美味しい!おーっ!」
「動物性のものが入っていないということですが、まったくそれを感じさせないくらいの、食べ応えを感じますね!」
ラーメン専門 こむらさき 鹿児島・橋口麗さん
「ヴィーガンにしてしまえば、(イスラムの教えに沿った)ハラールやベジタリアンなど全部に対応できる」
値段は通常のラーメンと同じ1200円。
ヴィーガンの人はもちろん、辛いものが好きな人が注文することも増えてきました。
老舗ラーメン店が打ち出したヴィーガンメニューは、客層を広げる一杯となったようです。
ところで、観光庁の調べによると、2023年に日本を訪れた外国人は約2506万人。
そのうちの5.1%、128万人がヴィーガンを含むベジタリアンと推計されています。
インバウンド需要が高まる中、鹿児島市の観光サイトでもベジタリアンやヴィーガン対応のメニューがあるお店を紹介していて、食の多様性に応えています。
現在、掲載されている店舗は29件。
3年前と比べると、約2倍に増えました。
大島紬の製作工程や、奄美の原生林を思わせる庭園など、奄美の文化や自然に触れられるスポットとして知られる鹿児島市の奄美の里です。
海外からの観光客も大勢訪れるこちらでもヴィーガンメニューに取り組みました。
アーダンリゾート・藤陽一社長
「コロナを機に健康への見直しなどで、ヘルシー志向の人たちにも食べてもらえるのでは。思った以上にニーズはある」
施設内のレストラン。
こちらの看板メニューは奄美の郷土料理、鶏飯です。
ほぐした鶏肉や、錦糸卵などの具材を白いご飯に乗せて鶏ガラのスープをたっぷりかけていただきます。
鶏のうま味を存分に味わうこの料理、いったいどうすればヴィーガンメニューにできるのでしょうか。
アーダンリゾート・藤陽一社長
「(鶏飯の)中心である鶏は使えないが、雰囲気を味わってもらうという点では満足してもらえるのでは」
同じ味を再現するのではなく、鶏飯と同じ、具材をご飯にのせて食べるスタイルをヴィーガンメニューで楽しんでもらう。発想を全く変えてメニューの開発に取り組みました。
とはいえ、味も妥協はできません。
熟練の和食料理人が味の研究を重ね、1年かけて作り上げました。
奄美の里 サウスヴィラガーデン 和食部門・勘代順司料理長
「はっきり言って無知だった。なにひとつわからない。知らない部分を勉強して、今までやってきた和食と融合させた」
そして完成したのが、「鹿児島の季節の彩り野菜と濃厚ごま豆乳の薬膳スープ膳」です。
坪内一樹アナウンサー
「うん、濃厚ですね!錦糸卵に見えるものをいただきます。(一口食べて)うん、食感は卵ですね。こちらは湯葉ということです」
「実際は鶏飯ではないのですが、こうやって具材を乗せて食べるスタイルを楽しむというところは共通して、ヴィーガンの人も鶏飯流の食べ方を楽しむことができるのではないかと思います」
いまのところ事前予約が必要ですが、このメニューを作ったことでヴィーガンの人も同じスタイルで一緒にテーブルを囲む楽しさを提供することができるようになりました。
食の多様化に伴うヴィーガンメニューは、それを望んでいる人はもちろん、新たな客層の取り込みなど、店側にもメリットがあります。
鹿児島のヴィーガンメニューが増えていくのは、まだまだこれからかもしれません。