鹿児島県鹿屋市出身の落語家、桂竹丸さんが創作落語で戦争を語り継いでいます。

現在の鹿児島県曽於市を舞台に、特攻作戦に最後まで反対した海軍少佐の生き様を落語ならではの臨場感で伝えています。


「史上最低の作戦を、こんな愚かな作戦はないというのを考え出します。何をするかと言ったら『アメリカの軍艦に体当たりして死んでいけ』と言うんです」


創作落語「特攻セズ」

鹿屋市吾平町出身の落語家・桂竹丸さんが手がけた創作落語です。

東京を拠点に全国各地で公演する竹丸さん。

落語で戦争を伝えるようになって20年ほどになります。

この日は地元にある吾平中学校で落語を披露しました。

まずは、普段、なじみのない落語に慣れてもらうため、竹丸さんは落語のイロハを説明しました。

「そば熱いからね。ズルズルズル~」

目の前にないものが、あたかもあるように語り、想像させるー。

「みなさんのイマジネーション。頭の中で空想してできるのが落語なんです」

落語で、誰も見たことのない「戦争」を生徒たちに伝えます。

竹丸さんは静かに高座に上がると生徒たちと向かい合い、「特攻セズ」を語り始めました。


「(軍の)トップの人が出てきて、『すべての飛行機を特攻機とする』(と言った)。つまり『パイロットはみんな死ね』と言っているんですよ。誰一人として反論するものはおりませんでした。そのとき、美濃部正は立ち上がります。『特攻ではアメリカに勝てません。バッタバッタ撃ち落とされるのみです』。当時、上官に逆らうということはどれだけ恐ろしいことか美濃部はわかっていました」


主人公は、曽於市の旧海軍岩川航空基地にあった「芙蓉部隊」を指揮した美濃部正少佐。

特攻を拒否し、敵が油断している夜間の奇襲攻撃にこだわりました。


「昼間は滑走路を隠すために牧草をまき、近くに牛を放牧する。掩体壕(飛行機を守る格納庫)に飛行機を隠す。空から見れば本当に牧場にしか見えなかった。明け方にやってくる飛行機がどこから飛んでくるのかアメリカはわからなかったそうです」


美濃部少佐について自分で調べたり、当時を知る人から聞いた話を臨場感たっぷりに伝えた竹丸さん。

生徒たちは戦争をどう受け止めたのでしょうか?

落語を聞いた生徒
「桂竹丸師匠の表情や話し方、動作で臨場感のあるすごい落語だと感じた」
「落語はすごく面白いものだと思っていたが、今回、特攻とか大切な話をしていて心に響いた」

現在、68歳の竹丸さん。

多くの特攻隊員が飛び立った鹿屋に生まれたことに縁を感じるといいます。

鹿屋市出身の落語家・桂竹丸さん(68)
「鹿屋で生まれたことが必然的にこういう流れになってきたんだろう。あと何年の命かわからないができるだけ続けていきたい」

2025年は戦後80年。当時を知る人が少なくなる中、桂竹丸さんは臨場感のある落語の力で知らない世代に戦争を語り継いでいきます。

竹丸さんは「特攻セズ」についてまだ完成していないと話していて、これからも新たな事実が分かれば取り入れていくということです。

戦後80年のこの夏は鹿屋市と曽於市でも公演をおこなうということです。

鹿児島テレビ
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