北陸中日新聞の奥田記者に解説してもらうコーナー。

石川、富山県内の自治体が設置する地方防災会議において、女性委員の割合がわずか12%にとどまっていることが北陸中日新聞のアンケートで明らかになった。災害対策の意思決定の場における女性の少なさは、能登半島地震の被災地で女性特有のニーズへの対応が後手に回った実態とも無縁ではない。

地方防災会議とは、災害対策基本法に基づいて各自治体に設置される組織で、地域防災計画の策定に参画する重要な役割を担う。警察や消防、企業や各種団体の代表者、学識者などで構成されることが多い。

国は第5次男女共同参画基本計画で、2025年までに女性の割合を30%とし、女性ゼロの会議をなくす目標を掲げている。この目標設定の背景には、東日本大震災をはじめとする過去の災害で、女性の参画が十分に確保されず、女性と男性のニーズの違いなどが配慮されなかった教訓がある。

石川県内では、野々市市が40%、小松市が32%と国の目標を達成している一方、輪島市では女性委員がゼロ。富山県内でも射水市や舟橋村で女性委員がいない状況だ。女性委員がいない理由について、これらの自治体は「特定の役職の人を割り当てている充て職に女性がいなかったため」と説明している。

羽咋市や志賀町、能登町では女性委員はわずか1人だった。石川県の防災会議では、委員70人のうち女性は13人で19%にとどまっている。さらに深刻なのは、ほとんどの自治体が今年中の30%達成は難しいと回答していることだ。


石川県と金沢市の防災会議で委員を務める県看護協会の小藤幹恵会長は「会議に女性が少ない分、より意見を言わなければと臨んでいるが、少数派のため大した意見ではないと思われてしまうのではないか」と懸念を示す。

一方、目標を達成している野々市市では、大学の講師や病院の看護副部長、通信会社支店の部長らが女性委員として参加。市の担当者は「女性管理職をトップに限らず選出してもらえるよう、文書と電話で丁寧に依頼している」と秘訣を語る。

全国的に見ると、内閣府の去年の調査では、都道府県の女性比率の平均は23%、市区町村では11%だった。
注目すべきは福井県で、今年4月の段階で女性比率は48%とほぼ半数に達している。その結果、地域防災計画の乳児用ミルクの備蓄に関する記述の修正や、生理用品の備蓄の呼びかけ強化など、女性の視点が防災計画に反映されている。

三重県鈴鹿市も女性比率41%と高い水準を達成。単なる充て職ではなく、女性の消防団員や助産師、災害ボランティアに委嘱して比率を高めた。同市の担当者は「災害時は男女問わず被災する。女性の委員がいなければ、被災者の半分の視点を失う」と指摘する。

能登半島地震の被災地では、避難所運営など多くの場面で女性が活躍していた。しかし、その声が防災計画など意思決定の場に十分反映されているとは言い難い。女性は防災や復興の重要な担い手であり、その声を現場レベルの活動に限らず、意思決定の場で反映することは地域の防災力向上につながる。

また、女性だけでなく、災害弱者になりやすい障害者や性的少数者の支援団体からも委員を登用することで、より多様な視点を防災計画に取り入れることができるだろう。防災会議の女性比率向上は、単なる数合わせではなく、誰もが安心して災害を乗り越えられる地域づくりの第一歩となる。

石川テレビ
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